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空箱

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おせっくす事情妄想

【木日】
積極的なのはどちらかと言えば日向。
木吉は淡泊な方で、日向は普通のDK並。
特に変なプレイに走る事も無く、安定して愛を育むようなおせっくす。
相手が気持ち良いと自分も気持ち良い派。
良くも悪くも普通。
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家の人が出払った日に、泊りの誘いなんてされたら健全な男子高校生としてソレを予想しない方が不自然だ。
日向と木吉、いつも通りにしているつもりでも何処となくふわふわとした空気が漂っている。
買ってきた弁当を食べて、軽く片付けをして。
風呂入る?なんて簡単な問いかけさえ、まるで何かを期待しているかのような卑猥さが感じられて照れが混じる。
まだ一緒に風呂に入るなんて恥ずかしくて言いだせ無くて、二人共ちらちらと物言いたげな視線を送りながらも黙って一人ずつ風呂に入る。
木吉が先に、日向が後に。
それはなんとなくそういう事をする時に決まって来た暗黙の了解って奴で、それくらい回数は重ねているのに、いざ事に及ぶまでの何とも言えない気恥ずかしさと緊張感が抜けない。
先に風呂から上がった木吉はスウェットだけを履いてベッドの上、無駄にシーツを綺麗に張り直してみたりする。
ゴムやローションはちゃんとすぐ取れる場所に用意したし、きっと今頃日向は一人風呂で前準備をしている筈だ。
その光景を想像しただけでも期待に勃ち上がりそうな股間を押さえつけてベッドに転がる。
早く出てきてこの欲をぶつけたい。けれどまだ出てきて欲しく無い緊張でどうにかなりそうだから。
ごろごろと無駄にシーツの上を転がっていればぺたぺたと静かな足音が聞こえる。
緊張した顔の日向が扉を開けるまで、あと少し――
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【火日】
はらぺこな虎と、ほだされがちな飼い主。
お腹を空かせた火神がついつい日向に食らい付いてなし崩しなパターンが多い。
けど絶対に乱暴にはしないし、本気で日向が嫌がるようならちゃんと我慢も出来る。
食べていいってお許しもらったら日向がとろっとろになるまで全身隈なく愛してくれます火神くんまじ紳士。
日向も愛ゆえの事とわかっているからあんまり強くは拒否れない。
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がぶり。
不意に項を齧られてびくりと日向の肩が跳ねる。
痛くは無い、けれどくすぐったいでは収まらないような微妙な力加減でがじがじと齧られる。
「おい火神何してやがる」
背後から腹に回された腕はがっちりと日向を捕らえて離す気配が無い。
肘で腹を押しても余り効果は無く、逆にこれでもかと言わんばかりに抱き締める力が強くなる。
「腹減った……です」
「今食ったばかりだろーが、足りなかったら何か作ればいーだろ」
「違ェです。…主将が食べてぇ」
きっと淡く歯型が残っただろう皮膚の上を熱い舌がべろりと這えば、ふわりと日向の体温が上がる。
それを火神に知られたく無くて、強引に身を捩って逃れても結局腕の中に囚われて、今度は正面から抱き合う姿勢になった。
「主将…」
こつりとおでこを合わせて間近の瞳が日向に訴えかけてくる。
熱を孕んで居るのに何処か大型犬を連想させるような表情に、日向は弱い。
まるで垂れた耳まで見えてくるような顔に、まるでこちらが悪い事をしているような気になってしまう。
「…洗い物終わらせちまうから、少し待ってろ。」
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【青今】
俺様暴君と腹黒策士のぶつかり合い。
青峰ににいいようにされているように見えて、掌で転がしてるのは今吉。
DT青峰と、男女共に経験あるビッチ今吉だと個人的に萌える。
青峰のベッド上でのテクは全て俺が仕込みましたドヤァな今吉さんまじビッチ。
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「今吉サン、…」
いつもならば考えられないような、躊躇いを含んだ声が今吉を呼ぶ。
同時に伸ばされた手は今吉の肩を強く掴むのに、其処から押し倒すでも引き寄せるでも無くて、まだ戸惑っているのが丸わかりだ。
「どした?」
暴君の、未だ幼い部分が垣間見えるようで思わず口角が釣り上がりそうになるのを堪えて今吉はそっけなく問い返す。
色気も何も纏わない問い返しに、青峰が少し不機嫌に眉を潜めるのが予想通りでたまらない。
「眠なったん?せやったら先に寝てええで?」
じわじわと服越しでも分かる掌の熱さに知らぬ振りをしてベッドを顎で指してやれば流石の青峰も意を決したらしい、ぐっと肩を押して圧し掛かる体重、それと共に塞がれる唇。
そこまでしても尚、ぎこちなく伸ばされる舌には遠慮が見えてそっと手助けするように今吉から舌を絡め取ってやる。
遠慮か、緊張にか、変に腕で体重を支えたまま空に浮いた身体を両腕でそっと抱きしめるようにして引き寄せてやっと、絡まる舌の動きに隠しきれない劣情が宿る。
いずれ、キスもちゃんと教えたらんとな、と思いながら今吉は服の下へと忍びこんだ腕の熱さに身を任せた。
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【諏佐今】
お人よしな苦労人と、それを弄るのが趣味な変態。
精神的にどえすで肉体的にどえむな今吉さんによる諏佐を使ったおなぬーに近い。
それでも愛はある多分。
たまに今吉の面倒臭さにキレると諏佐がどえすにシフトチェンジするから止められない、止まらない。
諏佐に乱雑に犯されるなんてこの業界ではご褒美です^^^^^^^^
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「諏佐ぁ、」
甘ったるく媚びるような声で今吉が呼ぶ時、決まって碌な事が無い。
それを知っている諏佐は、何だ、と問い返してやりながらも課題に走らせるペンから目を離さない。
けれど今吉とてそれくらいで諦めるような性質では無い。
諏佐に聞く気が無いと分かればするりと腕を絡めて纏わりつく体温は悪い物では無い。
が、タイミングが悪い。
そろそろ日付も変わろうかという頃、明日提出期限の課題を片付ける諏佐には今吉にかまっている暇等無い。
はいはいと適当に髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜるついでに適当に押し退けたのが、不味かった。
押しのける腕を避けてぴたりと抱きついた今吉の腕が諏佐の股間を明らかな意図を持って撫でる。
媚びて窺うだけだった今吉が強引に事を進めようとし始めたのだ。
動かすペン先には影響が無いように、だが大胆に絡み付く掌は諏佐の熱を煽り、唇が其処彼処を這う。
正直に言えば、鬱陶しい。
まだ終わりが見えない課題と闘う諏佐に取って、横で勝手に発情している今吉は邪魔でしか無い。
けれど此処で変に押し退けた所で、すっかりやる気になっている今吉は中々離れる事は無いだろう。
「…面倒臭ェ…」
ならば、さっさと今吉に満足頂いてお帰り頂くのが一番早いのだと諦めの境地で今吉を乱雑に床へと引き摺り倒せば、痛みに一瞬、噎せながらも期待に満ちた眼差しが諏佐を見上げる。
全て、今吉の思い通りなのだと思うと釈然としない物はあるが、ため息一つでそれを追い払い、諏佐は今吉へと覆い被さった。
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【紫氷】
お菓子の妖精の皮を被った普通のDTDKと、妖精を性的な目で見る事に罪悪感を覚える妖精信者。
年上の綺麗なお姉様と僕、な紫原と、子供だとばかり思っていた年下の男の子が急にかっこよく見えて困っちゃう氷室。
紫原にやりたいってお願いされると断りきれない氷室なので案外変なプレイも経験済。
縛ったりとか、野外とか、異物挿入とか。
むっくんの好奇心のままにおせっくすの幅が広がるよ!!!
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「ねー室ちん、これ見てー」
無邪気な顔で紫原の差し出したそれに氷室は思わず言葉に詰まった。
明らかに男性器を模した形状、ぷにぷにと柔らかそうな表面、それから根元から伸びるコードに四角い箱。
どう見ても大人の玩具です、本当にありがとうございます。
荒れ狂う内面をなんとか笑顔の奥に押し留めて、差し出されたそれを見ないように紫原を見上げる。
「どうしたんだい、コレ。余り、簡単に手に入る物とも思えないんだけれど。」
「えっとねー、赤ちんがねー、室ちんに使ったらいいって送って来てくれたー」
間延びした幼い喋り口は可愛いが、言っている内容は氷室に衝撃しか与えない。
大人の玩具を送りつける高一男子って何だ。
使ったらいいって、それはつまり赤ちんとやらは紫原と氷室のあれそれを知っているという事か。
むしろその見知らぬ相手がこれを使えと言っているのか。
突っ込みどころが多すぎて固まった氷室にかまわず紫原はソレを手にしたままぎゅうと氷室を抱きしめる。
氷室とて日本人にしては身長の高い方だが紫原の腕に包まれてしまえばすっぽりと収まってしまう。
子供が抱きつくような遠慮のない強さで、だが耳元にちゅ、とリップノイズを落とすなんて姑息な大人の手を使って氷室を陥落させようとする紫原の要求はもはや言われなくても分かっている。
わかっているのだが。
「ね、これ、今日使ってみていい?」
断りたいと理性が訴えていても、じっと見つめる紫原の瞳に抗えるわけが無い。
明日の朝練出れるかな、と氷室はぼんやり思いながら紫原を抱きしめ返した。

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火日が従弟 3

黒子がそれを知ったのは本当にただの偶然だった。
梅雨が明けて一気に気温を上げた初夏の夜、部活を終えた黒子はいつものようにマジバで火神と数分振りの再会を果たした。
毎度毎度、黒子が座る席にやってくる火神は一瞬驚いたように身を強張らせるも、またか、と言った態ですっかり驚かなくなってきた。
そのまま、向かいに腰を下ろした火神はトレーに山盛りになったハンバーガーを、黒子は両掌で包み込めるサイズのバニラシェイクを黙々と腹に収めながら時折、思い出したように取りとめも無い話をする。
すっかり定番となったその光景に割り込んだのはやけにリズミカルに弾む男性ボーカルの着メロ。
到底日本語とは思えない歌声はきっと洋楽なのだろう、黒子が火神へと視線を向ければあちらも黒子の事を窺うように見ていたので、どうぞ、と言う代わりに一つ頷いて見せた。
無言の肯定を正しく受け取った火神はただ一言、悪ぃ、とだけ告げて腹式呼吸の効いた歌声を止めて電話へと出た。
「もしもし?……うん、え?……いや、まだマジバだけど。」
一度了承を得たから口元を隠す訳でも、声を潜めるでも無く。
背凭れにどっかりと体重を預けて普通に喋っているかのような声で話す火神のそれはアメリカ帰りだからなのか、それとも元々の素質なのか判断しかねるが此処まで堂々と喋られては電話の内容に聞き耳を立てないように、なんて気遣うのも馬鹿らしくなって、黒子はこの時間特有の学生達でさざめく店内の騒音に紛れない火神の声に耳を傾ける。
「一緒に晩飯の材料買って帰ればいーかなって思って待ってたんだけど」
「…別にいーよ、一緒に買い物ってしてみたかっただけだし。」
「うっせーよ。…つか、そもそも直接ウチに来ちまえばよかったのに。どうせ必要なモンは殆ど置いてあんだろ?」
何だろう、この、不思議な会話は。
まるでお泊まりデートに浮かれている男の会話でも盗み聞いているような気分にさせられて思わず黒子は火神を見詰める。
火神は普段から笑わない、という訳ではないがそんな無邪気に笑顔振りまくようなキャラじゃなかった筈だ。
電話相手を想っているのか窓の外へと向けられた眼差しは普段の眼付の悪さの真逆を行くような柔らかさで知らない人でも見ているような気分にさせられる。
「え、服なんて俺の着てれば…ッッ悪ぃ、悪かったってば、…ッ」
エロ親父か。
思わず口に出しそうになった言葉を寸での所で抑え込む。
電波の向こう側で相手が怒っているのか肩を竦めながらも火神は何処か楽しそうだ。
ほんの僅かに漏れ聞こえる電子音塗れの通話相手の声が誰のモノかなんて判別付く訳が無いが自然と先程よりも興味を持って会話に耳をそばたててしまう。
「ん、わかった。じゃあまた後でな」
けれど無情にも会話はそこで途切れてしまった。
まるで仄めかされるだけ仄めかして置いて回収されきれなかった伏線のようで気持ちが悪い。
だが物語は此処で終わりでは無い、眼の前には当事者という語り部がまだ存在するのだから。
満足げに携帯をポケットへと仕舞っていた火神が黒子を見た途端にびくっとその幅の広い肩を震わせた事なんて些細な蛇足だ。
「おま…っ…なんだよ、顔怖ェぞ」
「火神くん、今日はお泊まりデートですか」
「デー…いや、そういうんじゃねぇよ」
「じゃあなんですか、恋人でも無い人をほいほい連れ込んでしまうような節操無しだったんですか君は」
「連れ込…っだから違ェって言ってんだろ!!」
怒鳴りながら真っ赤になるなんて何を想像したんですか火神くん。
そのまましおしおと萎れてごつんと勢いよくテーブルに突っ伏してしまった火神はうー、だか、あー、だか言葉にならない声で唸っている。
少し様子を見ようと黒子はシェイクを啜るが、ずず、と音を立てたストローはあっさりと重たいバニラシェイクの抵抗を無くして空になってしまった。
諦めて軽いカップをテーブルに置くとなんとは無しに火神を眺める。
火神は外見だけならばそれなりにモテる容姿をしているように思えるのだが、いかんせん本人がバスケ以外に無頓着過ぎる。
話してみれば決して悪い人では無いと分かるのだが、そもそも火神は自分からバスケ部以外に話に行く事が余り無い。
男子ならともかく、女子からしてみれば高身長で無愛想な男なんぞ威圧感以外の何物でも無いだろう。
一部の男慣れした女子や、見た目をモノともしない女子以外は喋っている姿すら余り見かけない。
男子とならばそれなりにクラス内でも交友関係を持っているようだが。
そんな火神が家に連れ込むような相手とは。
クラスメイト以外となれば黒子にもお手上げだが、クラスの中ですら話しかけらる女子が少ない現状、それは無いだろう。
だとするとクラスメイトの中の誰か、という事になるがそれはそれで腑に落ちない。
隠しごとが得意な方には見えないから学校の中では隠しているなんて器用な事は出来ないだろうし、火神と喋る事が出来る女子の中にそれっぽい人は居ない。
これは随分と推理しがいのある謎だと俄然やる気を出した黒子の前で少し落ち着いた様子の火神がのっそりと顔を上げる。
顔の赤みは収まったようだが額だけ丸くくっきりテーブルの跡がついていた。
「…主将だよ、泊りに来んの。女とかじゃなくて」
「え、主将が恋人だったんですか?」
「違ェよ!いい加減恋人から離れろよ!そうじゃなくて……従兄弟なんだよ、主将。」
「……はい?」
不貞腐れたように視線を逸らしながら重い唇から紡がれた言葉は予想だにしない関係だった。
今まで知っている限りの火神の知人と繋げたり離したりしていたピンク色の線が全て吹っ飛んで日向と火神の間に一本の線が引かれる。
この場合、何色の線にすればいいのだろうかとかどうでもいい事が過ぎった。
「口止めされてた訳じゃねぇんだけど…別に言う機会も無かったから…」
言い訳のようにもそもそと喋りながら火神が放置されていたハンバーガーへと再び手を伸ばす。
包装を向いて一口、二口、三口で殆ど食べきってしまう姿は常よりも急いでいるのかすっかり向かい合って食べる事が当たり前となった黒子ですら驚いた。
いや、その前の言葉の方がよっぽど驚いてはいるが。
「でも…入部した時、初対面のような雰囲気だったじゃないですか。そもそも今でもそんな旧知の中だったとは思えないんですけれど」
「あー、あんときはまだ、お互い気付いて無くて。一緒に遊んでたのって俺がアメリカ行く前だったし、帰って来たって連絡してなかったし。」
「元々はそれ程仲が良いって訳でも無かったという事でしょうか」
「いや、そういう訳でもねーんだけど。順くんが、学校では他の一年も居るからけじめつかねーだろって、…あ。」
当たり前のように出て来た「じゅんくん」と言う単語に驚き、それから込み上げて爆発しそうなモノを必死で抑え込んで視線を逸らす。
火神も気付いたようで、明らかに「やっちまった」という顔をしてから見る見るうちに真っ赤に染まる顔が余計にそれを増長させる。
「てっめぇ、笑ってんじゃねぇよ!つーか忘れろ、バレたら主将にぶっ殺される!!」
必死に堪えていたものが、ばこっと頭を叩かれた衝撃でぶはっと外に飛び出る。
一度飛び出た物は箍が外れたように溢れ出て、今度は笑い過ぎて声が出ない。
攣ってしまいそうな頬と腹筋を抱えて蹲るしか無い黒子の後頭部がもう一度叩かれてから、がたりと椅子が引かれる音がするがとてもじゃないが顔を上げる余裕なぞない。
「ちくしょ…黒子、本当に言うなよ、ソレ奢ってやるから!!」
そう言い捨てて去って行く火神は、そうか、日向と待ち合わせがあるのかと納得する。
暫くして一人ひっそりと笑いの波を納め、漸く顔を上げた黒子の前には火神が食べていたハンバーガーの乗ったトレーどころか空になったシェイクのカップすら無くなっていて片付けまでもやってくれたらしい。
一頻り笑ってすっかり痛む頬をさすりながら黒子は落ち着く為に深呼吸を一つ。
彼らの関係が本当にただの従兄弟なのかはよく分からないが、それはおいおい火神を問い詰めれば良い事だろう。
人間観察が趣味の黒子にとって、これ以上無い観察対象を教えてくれた火神に多大なる感謝をすると同時にこれから黒子の密かな楽しみの対象となる事を心の中で謝罪する。
心の底から悪いと思っている訳ではないけれど。
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おまけ
「もしもし?」
「よぉ。今学校出た。お前今何処?」
「うん、え?……いや、まだマジバだけど。」
「なんでマジバなんか寄ってんだよ、夕飯はどうなるんだ夕飯は」
「一緒に晩飯の材料買って帰ればいーかなって思って待ってたんだけど」
「一緒に行った所で俺、何の役にも立たないぞ。」
「…別にいーよ、一緒に買い物ってしてみたかっただけだし。」
「大我の甘ったれは相変わらずか。」
「うっせーよ。…つか、そもそも直接ウチに来ちまえばよかったのに。どうせ必要なモンは殆ど置いてあんだろ?」
「長袖の着替えしか置いてねーだろ、流石に暑いから違うの持ってく」
「え、服なんて俺の着てれば…」
「てめぇの服なんざ全部ぶっかぶかだろうが!!勝手にでかくなりやがって馬鹿にしてんのか!?ぁあ!?絞めんぞ!」
「ッッ悪ぃ、悪かったってば、…ッ」
「まあいい、とりあえずもう少しで電車乗るから…家帰って荷物持って…一時間後くらいに駅で待ち合わせにするか」
「ん、わかった。じゃあまた後でな」 

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火日が従弟 2

日向の家に泊まる事となり、一度家に戻って明日の為の荷物を抱え辿りついた駅は、かつて度々利用していた頃と変わらず久々に訪れた火神に懐かしさを齎した。
電車に乗る前は必ず行かされていた駅構内のトイレ、長距離のお出かけの時は一人一つ、好きな物を買ってもらっていた売店、改札を出てすぐ目の前に広がる雑居ビルと商店街。
小さかった頃を断片的に思い出しては緩んでしまう口元を引き締め直しながら辺りを見渡すと相手もこちらに気付いたらしく、日向が携帯を尻ポケットにねじ込みながら片手を上げて居るのが見えた。
「っす。…全然変わって無ぇんだな。すげぇ懐かしい」
浮かれた足取りそのままに日向の元へと向かって興奮を吐き出す火神を眺める眼差しは優しいモノの、何処か既に疲弊しているような様子で首を傾げる。
「どうしたんだ…っすか?…あ、急だったからやっぱ迷惑だったとかじゃ…」
「いや、違ぇ。むしろその逆。」
迎えに来た筈の日向はそのまま家へと向かう訳でも無く柱にもたれかかったまま茫洋と改札口へと視線を向ける。
釣られて火神も改札口へと視線を向けるとちょうど新たな人の波がやってきた所で、その中に改札を抜けた途端にヒールの音を響かせて勢いよくこちらへと向かって来る妙齢の美女を見た。
「大我ちゃああああああああああん!!!!!」
ぼす、と勢いよく飛びこんできた身体を抱き留めたのは良いが、抱き合って再会を喜ぶような女性の知り合い等、火神には居ない。
アレックスにも似ているが眼の前の女性は日本人らしい黒髪だし、そもそもアレックスよりも随分と身長が低い。
どうしたモノかと助けを求めるように日向を見ると、相変わらずの何処か疲弊した眼差しのままで深いため息を吐きだした。
「おい、ちー。ちーこ。大我が困ってる」
がば、と顔を上げた女性の顔は確かに何処か見覚えがあるような気もするが白い肌の上にがっつりと化粧を施された女性の顔というのは余り馴染みが無い。
日向の助け船に離れてくれるのかと思いきや、そのままべたべたと頬や肩に手を這わせる女性の勢いは止まらない。
「やだもう、こんな大きくなっちゃって…しかもイケメンじゃない!昔から可愛かったけどこんな男らしくなるなんて…!」
そしてまた抱き締められる。
アレックスによって強制的にこういう状況に慣れてはいるがまさかアレックスのように適当にあしらう事も出来ない。
美女に抱き締められて立ち竦む大男というのは目立つ物で、改札口から溢れ出る人々が皆好奇の目を擦れ違い様に向けて来るのが居たたまれない。
「ちー、落ち着け」
「ぁ痛いっ」
日向の力を抜いた軽いチョップが美女の脳天に落ちて漸く解放されるが状況は掴めないままだ。
頭を押さえて不服そうな顔をしている美女と日向を見比べると先程よりは少し面白がっているような眼で笑う日向が口を開いた。
「まだ分かんねぇ?ちーこだよ、こいつ。千尋。」
「え、大我ちゃん私の事覚えて無いの!?やだ、昔あんなに一緒に遊んで上げたじゃない!?」
千尋と言うのは日向家の長女だ。
確か歳は10歳くらい年上だった気がするが、記憶の中の彼女はまだ中学生とか高校生で、どちらかと言うと日向に似た地味というかすっきりしたというか、とにかくこんな派手な顔立ちでは無かった。
これが化粧の効果か、と妙な納得をしながら漸く火神は強張っていた肩から力を抜いた。
「いや、覚えてるけど。…こんな綺麗になってると思わなかったから。」
「大我ちゃんったら中身までイケメン―――――ッッッ」
再び抱き付いて来た千尋に思わず火神まで遠い目をしてしまったのは仕方ない事だと思う。


漸く駅を出て歩き出す頃には千尋のテンションも少し落ち着いたのか、今は火神と日向の間で二人と手を繋いでご機嫌だ。
普段ならば嫌がりそうな日向も彼女には抗えない何かがあるのか、それとも諦めの境地なのか平然とした顔で手を繋いだままでいる。
思い出話や近況に花を咲かせながら歩く道のりは、大きく変わった所もたくさんあるけれどどれも懐かしさを呼び起こして火神の気持ちも繋いだ手のように暖かくなる。
思えば昔もよくこうして日向と二人、千尋に手を引かれて歩いた覚えがある。
「そういえば、コウくんとユウくんは?」
「優くんは都合がつかなくって今日は無理だって。康くんはまだ実家で暮らしてるから…どうなの?」
千尋のテンションに相槌を打つばかりで余り話に加わらなかった日向へと話を向けると帰って来たのは疲れて顰められた顔。
「すげーテンションで張りきって家で待ってる。お前ら皆テンション高すぎんだよ」
もうやだ。
そうぼやいてぐったりと俯く日向に千尋が仕方ないじゃなーいと掌のみならず腕まで絡めて擦り寄っている光景は主将としての日向では余り想像つかない状況だが、順くんならわかる。
日向家は一女三男の四人兄弟で、その中でも日向は上の三人とは歳の離れた末っ子として他の兄弟達から可愛がられていた。
火神が日向家に居る時は火神すらも同じように可愛がられていて、幼少の頃だったからただ純粋に嬉しいと思えたが、今同じ扱いをされたら正直ちょっと困る。
だが千尋のテンションといい、ぐったりと疲れ切った日向といい、きっと今も他の三人の日向に対する愛情表現は変わらず続いているのだろう。
火神は心の中でゴシューショウサマ、と最近覚えたばかりの言葉を呟いた。


日向家に着くと懐かしさと言うよりは喧しいくらいの騒ぎに出迎えられた。
千尋自身、既に家を出ていて一人暮らしをしている為に帰ってくるのは久々の事らしい。
長男である優太に日向と纏めて思い切り抱き締められて既視感を覚えたり、そのまま何故か日向と火神を巡って千尋と優太の間で喧嘩にもならないじゃれ合いが発生したり、いい加減面倒臭くなった日向がキレて怒鳴るも結局千尋と優太に挟まれてもみくちゃに可愛がられていたり。
ずっと一人の家に帰る事が当たり前だった火神にとっては騒がしくも懐かしい、もう一つの「家」が昔と変わらず其処にあった。
何より、兄弟達は子供から大人へと成長して顔つきが変わってしまったが、おじさんとおばさんは歳を重ねて老けたとは思うが印象自体は殆ど変わらない。
「日本に帰って来るのなら早く連絡してくれれば良かったのにねえ、どうせ千尋も康太も出て行って部屋が空いてるんだから、うちに住めば良いじゃない。」
穏やかに笑いながらそう誘ってくれるおばさんの言葉は嬉しいと思う。
小さい頃ならば一も二も無く頷いていただろうけれど、今の火神には其処まで甘えられないという遠慮とか、プライドとか、男の意地というモノがある。
そこは丁重にお断りして、でもいつでも遊びにいらっしゃいという言葉には抗いきれずに頷いた。


騒々しい夕飯を終え、風呂も借りて日向の部屋へと戻ると部屋主は既にベッドの上で寝転がって雑誌を読んで居る所だった。
おかえりー、と気だるい声がかけられるだけで文字を追うのに夢中になってしまった眼はこちらをちらりとも見ない。
ベッドの傍には火神が風呂に入って居る間に用意してくれたのだろう、布団が敷かれてあり、なんとなく其処に腰を下ろしてみるがなんだか落ち着かない。
「なんか、悪ぃな、騒がしくて。大我を呼ぶって言ったらお袋があいつらに連絡したらしくて」
「え、それじゃあちーちゃんはわざわざ来てくれたのか?」
「心配すんな、ちーはお前の為じゃなくて自分が会いたくて来ただけだから」
出会い頭からの歓迎ぶりからしてそうなのだとは思うが、改めて日向の口から言われると何とも言えずにくすぐったい。
緩んでしまう顔を見られたくなくてベッドの端にぼすんと顔を埋める。
日向家の人々はこんなにも変わらず火神を受け入れてくれる、可愛がってくれる。
日本に帰って来たのだと、漸く実感した気がした。
「お前、今絶対にやけてんだろ。」
伏せた頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜられる。
どうしようも無く照れると笑ってしまう癖の事を言っているのだろう、順くんはやっぱり火神の事をよく知っている。
益々口角が緩んでしまうのを止められなくて、照れるとも嬉しいとも付かないこの胸を熱くする感情を言葉に出来なくて、顔を上げるとそのままベッドの上に乗り上がり日向の背を抱き締める。
うつ伏せになった日向の上に圧し掛かるような形になってしまうが、ぐえ、と一瞬潰れた声を上げただけで日向は何も文句を言わなかった。
「いきなりなんだよ。」
「今日、康くんとちーちゃんはハグしたけど、順くんはまだだったなって思って」
「相変わらず甘えただな。もうそんな事言って許されるガタイでも歳でもねーぞ」
からかうような笑みを含んで聞こえた言葉は少し棘があるが逃げるでもなく、火神の体重を受け止めてくれる日向の肩に顔を埋めて深呼吸をする。
ちーちゃんも、コウくんも、ユウくんも、おじさんもおばさんも。
皆大事な人で、家族とも呼べるような人だけれど順くんはそれとも違う、幼い心に刷り込まれた絶対的な存在だ。
「順くん…」
呼ぶでも無く零れてしまった声を拾って日向が、おい、と指の関節で頭を小突く。
「学校ではその呼び方止めろよ。恥ずかしい。後、敬語も忘れんな」
「ん、ちゃんと主将って呼ぶ…っす」
「よろしい。」
そう言った日向の顔は見れなかったけれど、きっと満足そうな笑みを浮かべているに違いない。
ぽかぽかと暖かな日向の温もりと安心感を抱きしめながら気付けば火神はそのまま眠りの中へと落ちていった。


------

設定

【日向家】
長女:千尋27歳(通称ちー、とかちーこ、ちーちゃん)
 一人暮らししてるOL。そろそろ結婚間近の彼氏が居る。
長男:康太25歳(通称こう、こた)
 実家暮らし。脚本家かつ劇団員。たまにテレビの仕事もしてる。
二男:優太25歳(通称ゆう、ゆた)
 一人暮らししてる会社員。
三男:順平16,7歳(通称じゅん、じゅんくん)
康太と優太は一卵性双子。
千尋と優太は既に家を出て一人暮らし。
上三人もそれなりに仲良いけれど、末っ子への愛情が異常。
大我ちゃんと順くんは天使。
ちなみに火神含む兄弟間では渾名や呼び捨てが普通。
千尋の顔は日向に似た地味顔なんだけれど、地味顔だからこそ化粧で整形レベルに美女に化けるって設定があるけれど生かしきれませんでした…
多分、日向もがっつりメイクとカツラを使えば美女にはなれる。ちょっと体格がどうみても男子だけど。

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火日が従弟 1

誠凛に入学して早数ヶ月。
漸く部にも慣れて、黒子と言う相棒と共にインターハイへと向け練習に励むある日の事だった。
全体練習を終えた後の自主練習に夢中になってしまい、気付けば体育館に残っているのは主将の日向と火神だけになっていた。
もう今日は終わりにするのか、それともただの休憩中なのか、タオル片手に汗を拭きながらじっと火神を見つめる日向に気付いて動きを止める。
「…なんだですか?」
「…お前ってアメリカに行く前、一階に花屋とコンビニがあるマンションの608号室に住んでた?」
酷く突然な日向の問いに驚きながらも火神は素直に頷く。
「え、つかなんで主将がそれ知って…」
聞き返しても一人で納得した様子の日向はまじまじと火神を見上げてはこれみよがしな溜息を盛大に吐き出すだけだ。
「俺もずっと確信が持てなかったから人の事はあんま言えねぇけど…それにしても育ちすぎだろ…違いすぎてわかるわけねぇよ…」
そのままぶつくさとぼやきながら睨まれて火神は戸惑う事した出来ない。
手持ち無沙汰に手の中でボールを転がしながらかくりと首を傾げる。
「俺、なんかしたっすか?」
自主練をしながらの雑談、と言う空気でも無かったので真面目に話を聞くために日向へと近付いて見下ろすと、先程よりも深くて長い溜息が日向の口から吐き出された。
「昔はあんなにちっこくていっつも順くん順くん言って可愛かったのに…」
「うぇ……あ、えええっ?」
一瞬、意味がわからなかったものの、すぐに懐かしい記憶が呼び覚まされて思わず変な声が出た。
「え、まさか、順くん…?」
「そのまさかだよ。俺の可愛かった大我を返せ」
拗ねたようにタオルを投げ付けられて慌てて受け取る。
「いやだって順くんは俺よりでかかったし!!」
「てめぇが育ち過ぎなんだよバカヤロー、最後に会ったの何年前だと思ってやがんだ!!!」



順くん、と言うのは火神にとって従兄弟でもあり、大切な幼なじみでもあり、初恋?の相手だ。
火神の母親は物心ついた時には病気で亡くなっていた。
仕事の忙しい父親は出張も多く、その度に火神は日向家に預けられるのが通例だった。
それでなくても日向の幼稚園が長期休暇に入る時は殆ど日向家で過ごしていたように思う。
土日は父親まで日向家に泊まり込んでもはや第二の自宅と言えるくらいに日向家には世話になっていたのだ。
その中でも歳が一つだけ上の順くんとはいつも一緒で、ご飯を食べるのも、遊ぶのも、お風呂に入るのも、全部一緒だった。
この頃の一歳の差とは大きい物で、順くんは火神の知らない事を何でも知っていて、優しくて、大きくて、頼りになる大好きな人だった。
火神の父親の転勤に伴ってアメリカに行くまでは間違いなく火神の心は順くんで一杯だったハズなのだがいかんせん、二桁にも満たない年齢の頃の話だ。
淡い思い出として胸の底には残っていても、余り思い出す事も無くなっていた。
「…主将が…順くん…」
「おう…つか順くんは止めろ、なんかこっぱずかしい」
もう火神よりも大きくは無いが、照れた時に口をヘの字にして余所を向いてしまうのは確かに順くんと同じ癖だ。
なんだか無償に嬉しくなってしまって頬が緩むのを抑えきれない。
「おじさんとおばさん、元気すか」
「おー、変わんねぇよ。…大我のおじさんは?一緒に帰って来てんのか?」
「いや、本当は帰って来るはずだったのに、直前で残らなきゃいけなくなっちまって。」
「え、じゃあお前、今一人暮らし?」
主将が大我と呼ぶのがくすぐったくて素直に応えていたらダァホといきなり頭を叩かれた。
余り力は入って無いから痛くは無いが、順くんに叩かれたと思うと急に悲しくなる。
「だったらなんでさっさとうちに連絡して来ねぇんだよ、お前、今日うちに泊まりに来い」
「へ…?」
「どうせ寂しがり屋なのは治ってねぇんだろ?」
そう言ってにやりと口角を上げた顔は頼りになる順くんそのもので。
なんでもっと早く気付けなかったのだろうと思いながらゥス、とやっぱり頬が嬉しさで緩んでしまったのは仕方が無い事だと思う。

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休日(ラブホ編)

ついこの間まで半袖一枚でも暑さに溶けそうになっていたというのに、もうコートを着て居ても寒さが染みて来るような11月。
明日は久々に二人の休日が被るからと、何か希望はあるかと木吉に聞いてみれば
「たまには日向と一緒に風呂入りたい」
という、なんとも下らなくて些細な希望が帰ってきた。
それに一々恥じらったり突っ撥ねたりするような時代は随分と前に通り過ぎてしまった。
相変わらず休みが被る事が少ない二人は一緒に暮らして居ても余り同じ時間をゆっくり過ごす機会が無い。
確かに辛うじて身体を繋げたりはしているが、日向にだってそれだけでは物足りない部分もある。
「なら、久々にラブホでも行くか」



一番忙しい時期よりはマシとは言え、残業を終えてどうにか仕事場を後にしながら携帯を確認すれば時間は既に21時前。木吉は既に一度家に戻り、泊る為の荷物を持って日向の仕事が終わるのを何処かで待っている筈だ。
外の寒さに肩を竦めながら木吉へと連絡をしようと携帯へ視線を落とした日向の頭上に落ちる影。
「順平、お疲れ」
それなりに高身長に部類される日向に影を作れる相手なぞ限られている訳で。
予想通りの木吉のへらりと気の抜けた笑みとは逆に日向の眉間に皺が刻まれる。
「お前、ずっと外で待ってたのかよ」
「いや、楽しみ過ぎて待ってられなくてだな」
はは、と笑う木吉の頬を無造作に摘んでやれば予想通りにひやりと冷たい。
益々皺を深くした日向はガキか、と軽く木吉の脛に蹴りを入れながら歩き出す。
わざわざ寒い場所で待っていた木吉を心配する言葉なんて今更必要とするような間柄でも無い。
「あれ、順平、飯まだなんじゃないのか?」
「そんなもん、ホテルででも食えるだろ」
とっとと行くぞ、と足早にホテルへと向かう日向の後をついてくる木吉の顔はきっと嬉しそうに緩んでるに決まってる。
見なくてもそれくらい分かるくらいに日向と木吉の関係は長く続いている。


此処暫く来ていなかったとはいえすっかり馴染みとなったホテルに入る。
大学生になってからは日向が一人暮らしをしていたので場所に困らない二人がそれでもホテルに来るようになったきっかけはやはり「二人で風呂に入りたい」という木吉の一言があったからだった。
風呂とトイレが別だったとはいえ、安アパートの風呂に平均身長をはるかに上回る二人が一緒に入れるような広さ等無い。そもそも、そんな広い風呂等、よっぽど家賃の高いマンションや、元の風呂をリフォームする以外に無いだろうと諦めかけていたのだが。
たまたま、友人が休日に朝から彼女と二人でラブホテルに赴き、夕方くらいまでのんびりといちゃついて過ごす事があるという話を聞いた。
風呂も大きいし、映画やゲームも出来るし、食事や飲み物だってホテルの中で注文出来ると言う。
ラブホテルと言うと、その名前からしてそういった事だけを目的にしているようでなんとなく遠ざけて居たのだが、友人の話を聞く限りではそうでもないらしい、と判断した日向は試しに一度、木吉と二人でラブホテルに行ってみた。
行ってみたら、思いのほか二人ともハマってしまったのだ。男同士でも入れる場所はネットで簡単に調べられるし、ホテルもその辺のビジネスホテルと余り変わらないような小ざっぱりとした部屋で、変に卑猥な訳でも無い。
それどころか風呂は広いしベッドも広い、平日のフリータイムならば値段も安いし、何より色んな趣向を凝らした部屋があって、非日常感がある。
以来、ただ二人でまったりしたい時には度々ラブホテルを利用するようになった。
大学を卒業し、社会人となった後も、二人が同居を始めた後もそれは続いて居たのだが此処の所は休みが被らない事が多かったのでホテルに来る事自体が久々だ。
変に新しいホテルを探すのでは無く、行き慣れたいつものホテルは帰ってきたかのような妙な安心感がある。部屋に入るなり荷物を置いてさっさと風呂に湯を溜めに行く木吉を見送り日向は広いベッドの上に身を投げ出した。
程良いクッションが心地よく疲れ切った身体を受け止めてくれる。
「順ー、すぐお湯溜まるけどその間に何か食っとくか?」
「いやいい。どうせ鉄平も何も食ってねーんだろ、風呂出てから食べようぜ」
お湯が落ちる音が響き始めた中、仄かに薫る甘い香りは入浴剤か何かを入れたのだろうか。
バスルームを見れば透明なガラスの向こうで木吉は早くも服を脱いでは外へと放り出している所で、視線に気付いた木吉が順も早く、と手招くのに思わず喉奥で笑った。
楽しみにするにも程があるだろう。
遠足が待ちきれないガキか。
そう言ってやりたいが、そんな木吉を愛しいと思ってしまうのも事実で。少しだけ軽くなった身体を起こすと日向もバスルームへと向かった。



細かな泡が絶え間なく湧きだす湯の中に大の男二人が重なるようにして浸かれる此処の風呂はやはり良い。
流石に足を延ばす事は出来ないが、膝が少し水面から出てしまうくらいで寒い思いもしない。
「あー……癒される……」
冷えた身体に染み込むお湯の熱さがたまらない。
離れて座ってみようかとも思ったのだが湯に入るなり木吉に手を囚われてしまったので日向は木吉に後ろから抱き付かれながら足の間に座っているような状況だ。
眼鏡が一気に曇って視界が真っ白に染まるが暫くもすれば治るだろうと日向は瞼を閉じて心地よさに浸った。
背凭れになった木吉の身体も暖かくてうっかりするとこのまま寝てしまいそうだ。
「眠かったら寝てもいいぞ」
「んー…」
こめかみに触れる唇が、頬を撫でる指先が気持ち良い。
だがこのまま寝てしまうのは何だか勿体ない、と、木吉に言ってやる気は無いが。
「今寝たら多分、朝まで起きないぞ、俺」
「それは流石に困るかなあ」
すぐ耳元で笑う木吉の吐息がくすぐったくて顎を上げると穏やかな眼差しとぶつかった。
すっかり木吉の肩に頭を預けた状態のまま、知らず、近づいた唇が重なる。
一度、二度、柔らかく啄むだけの口付の後にぬるりと滑り込んだがゆったりと咥内を撫でる穏やかな快感。
心の内側まで温めるような触れ合いに、不意に抱き締めてやりたくなって木吉の腕の中で向きを変えると腿の上へと乗り上がるようにして向かい合う。先程よりも低い位置に何処か期待したような眼差しが日向を見上げて居て思わず口の端が緩んだ。
「だらしねー顔」
「今、すごく幸せだからな」
へら、と笑ったその顔を罵りながらも愛しさは隠しきれずに額に、鼻先にと口付を落として行くと、強引な手に後頭部を捕らえて再び唇を重ねる事となった。
「ん、…っふ、…」
先程よりも何かを求めるような舌先が日向のそれと絡まる。
すっかり曇りが消えて透明に戻った眼鏡の向こうには弧を描いた木吉の眼がじっと日向を見つめて居て体温が少し上がった気がした。
負けじと木吉の頭を両腕でがっちりと抱き締めて舌を差し出すと木吉の笑みが一層深くなる。
味覚を感じる為の感覚器な筈なのにこうして擦り合わせるとなぜこんなにも気持ち良いのだろう。唾液の滑りを帯びた粘膜の摩擦は確かに、性的なアレを思い出すのも事実なのだが。
唇を離す頃にはうっすらと思考にもやが掛かったような、温度の低い快感が身を包む。
それと同時に少しばかり不穏な手付きで日向の背筋を辿る掌にぞわりと熱が形になってしまいそうで慌てて木吉から身を離す。
「おい、シねぇぞ。こちとら腹減ってんだ」
「俺だって減ってるよ。…けど、なあ?」
「なぁ?じゃねーよ、ローションだって無ェだろ」
「どうにかなるだろ」
「どうにか、って、…ッおい、」
背から滑り下りた木吉の大きな掌がすっかりと筋肉が落ちてしまった尻の肉を掴んでやわやわと揉みこむとそれだけで日向の食欲が遠のいてしまう気がする。
不埒な指先が肉を揉みながらもまだ固い孔の縁を擽るように撫でて行けば尚更。今なら強引に湯からあがってしまう事も出来るのに、そうする所まで辿りつけないのは日向にも食欲では無い飢えが徐々に思い出されてしまったからで。
むに、と割り開かれた尻の肉の合間に当たるジャグジーの泡が何とも言えないもどかしさすら覚える。
「それにほら、俺もう勃ってきちまったし」
そう言って泡の合間に袋の裏から孔までの間に擦りつけられた物は確かに柔らかさを残している物の熱を蓄え始めて居てじわりと目尻に熱が上る。
なあ、と。
それ以上言葉にせず、強請るように首筋に、鎖骨に、胸元にと触れる唇は熱い。
肌の上を彷徨う唇が戯れに乳首を啄んで思わず日向の肩が揺れた。
「――……は、また前みたいに茹だってその後潰れんのはゴメンだからな」
「善処するよ」
溜息一つ、妥協してやったのだと言わんばかりに吐き出しても帰って来るのは勢いよく振られる尻尾が見えそうなくらいの笑顔で、日向は心の中でもう一つため息を吐きだした。
結局、日向とて木吉に惚れているのだ。
簡単に木吉に欲情してしまうし、こんな状況で強請られたら否と言えない。
まだ腹の底に残る純粋な空腹感に蓋をして日向は自ら木吉に唇を寄せた。



幾ら慣れているとは言え、碌な潤滑剤無しに木吉の人並み外れたペニスを飲み込むのには相当な時間と忍耐が必要だった。
少しでも楽になるように、と足元は湯に漬かったまま壁へと手を尽き、膝立ちで背後から受け入れても木吉の大きさが変わる訳では無い。
なんとか全てを日向の中へと納めた頃にはすっかり二人とも真夏の炎天下で運動したかのような汗塗れだった。
「入った、か……?」
「ん、全部入った…けど、ちょっと休憩しような」
荒い呼吸を吐き出す日向を労うように耳朶や項に触れる唇は優しい。
けれど足の間を貫く熱は確かな存在感で日向の中で脈打っていて、思わず確かめるように下腹部を撫でると薄くなった腹筋の下に木吉の形がうっすらと分かるような気がした。
「は、…こんなトコで盛んなきゃもっと楽に気持ち良くなれたっつーのに…」
「でも、好きだろ?こういうのも」
肩にやんわりと歯を立てられて日向の身が竦む。
下腹部を擦る手のうえに木吉の大きな掌が重ねられてぐ、と強く撫でられるとより一層その存在感が増したような気がする。
ぴったりと背に張り付いた木吉の身体が離れて、改めて腰を掴まれると期待に日向の身体が震える。
「動くよ」
宣言通りにゆっくりと引き抜かれると引き攣れた粘膜が一緒に引き摺られるようで内臓ごと持って行かれそうな錯覚に陥るが、そんな不快感は最初のうちだけだ。
抜けそうな程引き抜いてから、再び奥まで埋める動作を幾度か繰り返して行くと次第に木吉の形に馴染んだ其処は不快感よりも快感を呼ぶ為の性器へと変わる。
圧迫感よりも無遠慮な熱が容赦なく内側から性感帯を抉り、生みだすモノは電流のような刺激だ。
びりびりと背筋を駆け抜けるそれが生まれる頃にはすっかりと滑らかになった動きで木吉が奥深くまでを幾度も強く突き上げて日向はただ壁に爪を立てる事しか出来なくなってしまう。
「っは、…っぁ、…っ、…」
湿気の所為か、熱の所為か苦しくて閉じられない唇からは荒い呼気と飲み込む事が出来ない唾液が落ちるのを分かっていても日向にはどうする事も出来ない。木吉が動くたびに背に降ってくる汗が少しだけ冷たくて、けれどそれだけ背後の木吉も興奮しているのだと思うと冷静になどなっていられない。
汗で滑る肌を離すまいとがっちりと掴まれた腰は痛いくらいの強さで、見えない木吉の感情が籠っているようで煽られる。
「て、っぺぇ、…ッ…」
少しでもその興奮を伝えたくて腰を掴んだ掌の上に手を重ねる。
バスケに励んでいた頃よりも骨っぽくなった木吉の掌を抑えつけるようにして強く掴めばごくりと、背後で唾液を飲む音がした。
「順平…ッ、」
益々早くなる動きに次第に余計な事が考えられなくなって、日向の中を思う様突き上げる熱に縋る事だけで頭が一杯になってゆく。
殆ど触れられていないのに日向のペニスもとろりと先走りを湯の中に垂れさせながら揺さぶられるがままに揺れるばかりで溜めこんだ熱を吐き出すのを待ち構えているだけだ。
「――ッッッ、…」
ずん、と一層強く突き上げられた時、中に溢れる熱を感じながら日向も声にならない嬌声を上げながら湯の中に白濁を吐きだした。



茹だる程では無いが、一戦交えた疲労感と身体に残る熱はいかんともしがたい。
あの後頭や身体を洗ったりとなんだかんだしているうちにすっかりと戻ってきた食欲を満たすべく、ビールを片手に夕飯代りのデリバリーを二人で突く。
「やっぱ、風呂でヤるのは止めようぜ…なんかすげー眠いっつーか疲れる」
「えー?俺は風呂でするのも結構好きなんだけどな」
「熱いし滑るし碌なモンじゃねぇ気がすんだけど」
「風呂の中だといつもより順平の肌が赤くなってて凄く卑猥なんだよ」
ぶふぉ、と思わず咳込む日向を前に木吉はただにこにこと爽やかな笑顔を浮かべているが、その内容は余り褒められたモノでは無い。
「それに、湯当りするとくたぁってなるのが、またなんというか」
「うん、これから風呂でするの禁止な」
へらぁ、と幸せそうな顔の木吉だが、湯当りを起こしているという事は日向が気持ち悪くなっているのを分かった上で言っているのだろうか。
毎度そんな状態になるまで盛られてはたまらないととりあえず釘を差す。
「じゃあ、次する時はお湯の温度を下げよう」
そうか、そうすればいいのか、と一瞬納得しかけて、けれど言った傍から言葉を翻すのもなんとなく癪なので聞き流す事にする。
何本目かのビールの缶を一気に煽って空にすれば程良い酔いが事後の倦怠感と相まってこのままベッドに倒れたら本当に寝れそうだ。
けれどせっかくの休日、せっかくのホテル。どうせならもう少し木吉と接触したいという思いもある。
決して口には出さないが。
「なあ順平、そろそろこっち来いよ」
言わずとも獣の勘なのか、それとも長年の付き合いで学んだタイミングなのか。
同じく空になったビールの缶をテーブルへと置いた木吉がベッドに移動して両手を広げて待ち構えるのに日向の頬が満足げに緩んだ。
ん、と曖昧な返事を返しながら腕の中へと倒れ込んでそのまま木吉ごとベッドに沈み込む。
お互い、備え付けのローブを着ただけの格好は程良く火照った熱をすぐに染み込ませる。
「暖まって、腹一杯んなって、酒も入ったら眠くなってきた…」
「風呂の中でも言ってたな。一時間くらい仮眠したらどうだ?」
緩やかに木吉の腕に抱きしめられながら頭を撫でられると、益々眠気が強くなってきて思わず大きな欠伸が零れ落ちる。まだ日付が変わる前で、少しくらい仮眠しても時間はまだまだある。
どうせチェックアウトは昼前なのだ、焦る事は無いだろう。
「それじゃあ、少しだけ寝る。30分経ったら起こしてくれ」
「わかった」
そっと木吉が身体の位置を入れ替えると日向が木吉を見上げる形になる。
既に重くなり始めた瞼を瞬かせながら日向は一度、木吉の頭を引き寄せると触れるだけのキスを残してすぐに眠りの中へと落ちて行った。
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再び眼を覚ました時、木吉は日向の横に身体を横たえたまま大きなモニターに映し出されたAVを眺めている所だった。
起こせ、と言った筈なのだが、時計を確認して見れば一時間以上経っていて日向は眉を潜める。
「30分経ったら起こせっつったよな…」
「ん?…ああ、起きたのか。おはよう順平」
少しばかりの怒りを滲ませたくらいでは木吉は揺るがない。
それどころか抱き締められて口の端にキスまでされて怒っている方が馬鹿らしくなってくる。
まあいいかと日向は溜息一つで諦める事にした。
「つーか…何見てんだ」
「そういえば余りAVって見た事無かったなあ、と思って」
モニターの中で高い声を上げて喘いでいる女優は柔らかそうな乳房を揺らして男優に思うがまま揺さぶられていて、高校生くらいの時ならば間違い無くオカズとして有り難く利用させて頂くような美人なのだが。確かに日向も木吉と付き合ってからAVのような明確なオカズを使用した事は余り無い。
「そういえば鉄って一人でヌく時どうしてるんだ?」
「え?…基本的には日向を思い浮かべたりしてるけど」
少し予測はしていたが、実際に言われるとなんとなく居た堪れない。
だが少し嬉しいと思う気持ちもある。
勿論顔には微塵たりとも出したりしないが。
「順も似たような物だろ…あ、そうだ、アレ持って来たんだ」
不意に閃いたような木吉がベッドから起き上がって鞄の元へと向かう。
ぼんやりとそれを眺めていた日向は、だが帰ってきた木吉が手にしていた物にがばりと跳ね起きた。
「おま、おまっ何でソレ…!!」
「いやあ、この前部屋の片づけしてたらうっかり見つけちまって」
へら、と笑う木吉が差し出すそれは形状はただの男性器を模したディルドなのだが底に吸盤が付いていて床や壁に貼りつける事が出来るタイプの物だ。
時折、木吉が居ない時にこっそりお世話になっていたりするのだが木吉にその事実を伝えた事は無い。
むしろ墓まで隠し持って行きたい事実だったというのに。
「最初はローションの減りが早いなあ、って思ってたんだ。前に使った後よりも随分減ってる事が多いな、と。俺は一人でする時使わないし、そうしたら日向が使ってるのかな、と思ってちょっと家探ししてみたら」
「お前それうっかり見つけたんじゃなくて確信犯じゃねぇか!!」
思わず全力で木吉の頭を叩いてしまったが、日々部活に励んでいた時よりも随分と威力は衰えて居た。むしろ叩いた掌が痛い。
「だって、見たいじゃないか。日向がコレ使って一人でシてるトコ」
殴られてもなんのその、きらきらと輝かんばかりの笑顔に見えるのは惚れているからなのか、いやこれに惚れていると余り思いたくない。
なあ、と。
ベッドに乗り上げた木吉がそっと日向の手にディルドを握らせる。
その強請るような声は日向にとって余りに分が悪い。
「これ、使ってるトコ見せてくれよ」
耳元を擽る低音にぞわりと背筋が粟立ってしまうのを日向は舌打ち一つで受け入れた。



一人だけ見せ物にされるのは嫌だと言えば、あっさりと木吉は日向をオカズにして一人でして見せるから、と返されてしまってはもう文句のつけようも無い。ベッドの上に木吉が、眼の前の床に日向が腰を下ろして向かい合う姿は中々に間が抜けていると思うが黙ってフローリングの上に吸盤を押しつける。
正直、木吉が日向に興奮している姿を見るのは好きだ。
いつもへらへらと笑っているだけの瞳が熱に潤み、真っ直ぐに日向を射る瞬間がたまらない。
思い出すだけでもちりちりと下腹部に生まれそうになった熱を吐息で逃してディルドの上へとローションを垂らして濡らして行く。
少したっぷり目に使うくらいがちょうどいい。
確認するように掌を使って温度の無い玩具にローションを塗しながらちらりと木吉を見やると食い入るように見つめる眼差しが日向を見ていた。
「お前、見過ぎ」
「だから、見たいんだって。気にせず続けてくれ」
「いや気になるだろうがよ。…っつーかお前もぼさっとしてんなとっとと俺のオカズになりやがれ」
言われて初めて意識したのだろうか、木吉の眼に熱が宿るのを確認してからそっと足の合間へとローションを纏った指を運ぶ。
ひと眠りしたとはいえ、つい先程まで木吉を受け入れていた其処は滑りを借りてあっさりと日向の指を飲み込む。
一応、中にもローションを塗り広げるように一度指でぐるりと掻き混ぜた後、膝立ちになってディルドの上へと腰を落として行くと纏わりついた粘液がくぷぷと小さな音を立てた。
眼の前では漸くやる気を出したのか、あぐらを掻いてローブの裾を乱した木吉がまだ柔らかな性器を掌でゆっくりと撫でている所だった。
「なんだかいつも想像でしかなかったのに、眼の前に居るって不思議な感覚だな」
言葉はいつものような雑談じみているが、その奥にちらつく木吉の情が押し殺したような低音となって心地よい。
ゆっくりと床に尻が付くまで腰を落として日向は細く息を吐きだした。
まだ身を焦がすような熱は遠い。
けれど既に下腹部には小さな種火が生まれつつある。
床に手をついてゆっくりと腰を前後に動かせば木吉程の強さは無くてもじんわりとした気持ちよさが身体の芯を伝わって行く。
風が吹けば消えてしまいそうな種火を温めるように瞼を伏せてまだ冷たさを感じる玩具が生み出す感覚を追いかけると動く度にぐぷぬぷと音を立てるローションが鼓膜を震わせた。
「順平、見えないから裾、避けてくれ」
言われるがままに床に落ちて全てを隠していたローブの裾をまくり上げて背へと退ければ熱を持ち勃ちあがりかけた其処が丸見えだ。
強く、見つめる木吉の視線を感じてざわざわと肌がざわめく。
滲むように身体の奥から熱が溢れて指先にまで滲むのを感じた。
「は、何、お前もうそんなんなってんの?」
うっすらと眼を開けば眼の前には既に固く反り返った木吉が眼に入り思わず鼻で笑う。
けれど自分の姿でそうなっているのかと思うと玩具を咥え込んだ其処がきゅ、と意識の外で収縮する。
仕方ないだろ、と口元だけで笑って見せる木吉が視線を落とす、その恥じらいとも言えない仕草がまたなんとも言えずに日向を煽る。じんわりと汗が滲む体温に浅く息を吐き出してから、日向は膝立ちだった姿勢から体育座りのようにして足を開くという見せつけるような姿勢へと変えた。
えろ、と木吉が唾を飲み込んで呟くのが心地よい。
腰を突き出すようにゆるゆると前後に身体を動かせば玩具を咥え込んで広がった孔が木吉にも丸見えになっている筈で、羞恥心が無いわけでは無いのだがそれもまたスパイスとなる。
「順平、いつもそんな格好でしてんの…」
「まあ、な。こうすると、此処、すげー擦られて気持ちいい」
此処、と下腹部の上を掌で撫でて見せる。
木吉程の大きさが無いそれは存在が分かる程では無いが木吉にはそれだけでも十分な刺激になったようだ。
押し殺したような呼吸が荒い。無意識なのだろうか、木吉の少し早くなった手が竿を擦りあげながら時折親指で薄い先端の皮膚を撫でているのを見ていると、まるで自分がそうされた時の事を思い出してふるりと腹の上で性器が震えた。
互いに向かい合っているだけで一度も触れていないというのに、ただ眼の前に居るというだけで身体の奥が疼く。
燃えるような飢えを宿した眼が貫くように真っ直ぐ日向を射るだけで焦げてしまいそうだ。
眼の前で先走りを溢れさせた木吉の性器がとてつもなく美味しそうな物に見えて、けれど触れる事は躊躇われるこの距離感。
もしかしたら日向も木吉と同じような眼で木吉を見つめているのかもしれない。
「順、俺、もうそろそろヤバい…ッ」
「…ッん、…俺も…っ」
ぬちぐちとお互いの生み出す水音すら熱を煽る材料となって、その合間に零れる吐息が熱い。
食い入るように互いを見つめるまま快感を追いかけて自然と腰を引いては突き出す速度が速くなる。
自分の思うまま、良い場所だけを選んで押し付け続ければやがて小波だった快感が大きな波となって全身が戦慄く。
眼の前では木吉も奥歯を噛み締めるようにして快感を追いかけて居て、日向は耐える事無く大きな荒波に促されるままに込み上げた物を吐きだした。

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