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空箱

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永遠に毒を飲む覚悟

頬を撫でる暖かな温もりに、微睡んでいた意識がゆっくりと浮上する。重たい瞼を押し上げれば夜闇の中で悠然と微笑むファレナの姿。
「よく寝ていたな。疲れていたのか?」
大切な物を愛でるような手つきで頬をなぞる指先に舌打ちしそうになるのをぐっと奥歯で噛み殺し、ああ、と一つ頷く。
城に帰るなり盛大にチェカに出迎えられ、纏わりつかれ、振り回され、もう寝るから邪魔するなと言って逃げたのは夕刻頃。一緒にお昼寝する!と無邪気に隣に転がった毛玉は何処に行ったのかと視線を巡らせるが、それを遮るように上から圧し掛かって来たファレナに見下ろされて視線を捕らわれてしまう。
「チェカはもう部屋に戻って寝ている。……今度は私の番だ」
まるで断られる事を知らないような尊大な笑顔。夜闇の中でもあまりに眩しくて見ていられず瞼を閉じれば心得たとばかりに唇を塞がれて分厚い舌がレオナの口内を無遠慮に掻き混ぜる。これではまるで自ら誘ったようだと気付いても時既に遅し、我が物顔で這いまわる舌に口蓋を擽られると尻尾の付け根からぞわぞわとした予感が駆け巡る。たっぷりと時間をかけて口内を荒され、解放された頃には息が上がっているというのにファレナは満足げに唇を舐めているのが憎たらしい。
「愛しい私のレオナ。少し見ないうちにまた美しくなったな」
幼い頃ならば素直に喜べた言葉も、今のレオナには毒のようにしか感じられない。この兄が本当にレオナの事を愛おしく思っているのは事実だろう。第一王子が強大な魔法を持って生まれた第二王子を目に入れても痛くない程に可愛がっていることなど城の誰もが知っている。だからこそレオナは兄にだけは懐いていたし、兄が全てだった。
唇を重ねた後は、頬に一度、首筋に一度、それから鎖骨に痕が残る程に強く、一度。それは染み付いた習慣のようなモノで、肌の上にちくりと刺さる痛みで勝手にその先を期待してじわりと身体が熱くなるのはただの反射だ。そうなるように、躾けられていた。兄と性行為をするようになってからもう五年以上……否、挿入を伴わない行為を含めれば十年近くになるだろうか。
レオナよりも一回り大きな掌が丁寧に服を脱がせ、肌の上を這い、追いかけるように唇が舌が余す所なく濡らして行く。愛しさを抑えきれないとでも言うように全身余す所なく全てを王の支配下に置く行為に対してレオナがする事と言ったら精々王の機嫌を損なわないように鳴いてみせる事だけで、余計な事をすればその分執拗に「可愛がられる」のは身に染みてわかっている。


ただ兄を慕い、兄だけを見つめ、兄に愛される事を喜んでいるだけではいられなくなったのは、兄が婚約をするという話が出た頃だっただろうか。「他の人には内緒だよ」と言われ、密やかに兄と触れ合っていたのが世間で言う性行為だと理解はしていても、それに何の違和感も嫌悪も無くただ兄と秘密の共有をしている喜びがまだ上回っていた頃。
頭では理解していた。兄はいずれ王となり、妻を迎え、子を生す事を。だがこれが婚約者だと連れて来られた女性を見て初めて恐怖を覚えた。兄に捨てられたら自分はどうなってしまうのかと。
元々、兄を独占したいなどという気は無い。ただ兄の隣に自分の居場所があれば良かった。どれだけ外の世界が辛くても、兄の傍で息が出来ればそれで満足だった。だが妻を迎えるということは、その場所に妻が座るという事だ。両親にも言えない兄とレオナの関係とは違い、すべての民に祝福されて堂々とレオナの居場所に妻が収まるのだ。
追い出されるくらいなら自分の足で、と兄の足元から一歩踏み出すも、外の世界はレオナに優しい場所では無かった。近付けば砂にされると怯えられ、離れていれば王子という立場に甘んじて何もしないと陰口を囁かれる。魔法の練習に励めばいつか兄を暗殺する為にやっているのではないかと疑われ、勉学に励めば兄の教え方が良いのだろうと兄を称賛する為のネタに使われる。レオナが兄の庇護下で外の世界に目を閉じていた間に、世界はこんなにもレオナを忌み嫌うようになっていた。
そんな時、兄はいつもレオナの手を引いてたくましい腕の中に連れ戻しては「無理はしなくて良い」「お前は美しく聡明な、私の自慢の弟だ」「私はいつでもお前の味方だよ」と、まるで離れる事を咎めるように甘い言葉の毒を注ぎ込んだ。今まで通り兄の腕の中にいるのが一番の幸せなのだとレオナを優しく誑かした。
そうやって兄がレオナの事を可愛がっている事が気に入らない連中もいたようだった。そんなに甘やかしているから付け上がった第二王子が王位継承権を狙っているのだと事実無根の噂がバラ撒かれ、あからさまな警戒を向けられるようにもなった。

兄の事は好きだった。兄はいつでもレオナの世界で、兄無しでは息が出来なかった。
その妻となる者だって、別に嫌いな訳じゃない。優しく聡明な彼女は兄の良い支えになるだろう。
自分が王になれない事だって、それほど拘りがあったわけじゃない。父を見ていれば誰もがなりたがるような楽しいモノでは無い事なんて子供だってわかる。

兄が嫌いだった。無知なレオナに甘い甘い毒だけ飲ませて外の世界を隠した。気紛れに外へと手を伸ばそうとすれば優しく、だが有無を言わせぬ愛でがんじがらめに縛り付けて兄の腕の中に閉じ込めるから。
その妻になるものが憎かった。女であるというだけで兄の子を孕む事が出来るから。兄とレオナでは何も産まれないというのに。
産まれた順番が逆だったなら、レオナは兄に捕らわれる事は無かった。万が一、「正当な評価」の上でファレナの方が王にふさわしいというのなら喜んで王位を譲っただろう。レオナには兄よりも賢く魔法に長けている自信はあるが、兄のように誰も彼も虜にするような求心力が無いのはわかっている。



レオナ、と呼ばれて意識が戻る。涙の膜の向こうでファレナが微笑んでいた。
「あにき……?……ッッぁああ、……」
ずん、と中に埋まったままだった物で腹の奥底まで突き上げられて頭の中が真っ白になり、気持ち良い事しかわからなくなってしまう。もう何度も果てて疲れ果てている筈なのに、あの大きな先端で奥を捏ねまわされるとどろどろに蕩けた身体が勝手に高みを目指そうとしてしまう。
「ぃやだ、兄貴……ッまだ、待ッ……」
「お前が起きるまで待ってやっただろう」
「無理……ッ、少し休ませろ……ッっ」
「っはは、可愛いな、レオナ」
ぐいと膝の裏を持ち上げられ、肩に膝が付きそうな程に苦しい体勢に折り曲げられて容赦なく上から体重をかけてぶち込まれるともうそれだけで駄目だった。レオナの身体の事をレオナ以上に知り尽くしたファレナが弱い場所ばかりを的確に貫く所為で簡単に高みに引き上げられた身体が戻ってこれなくなっている。気持ちが良過ぎて辛いのに、ファレナが動くことを止めない所為で終わりが見えない絶望感。溢れる程に中で出されたものがぐじゅぶじゅと醜い水音を立てる中に耳障りな自分の言葉にならない悲鳴がリズミカルに響いて気持ち悪い、気持ち良い、辛い、苦しい、気持ち良い。
「や……ッらぁ、っも、ッぁあ、ッあ、ふぁ」
「っは、出すぞ……ッ」
ぐ、っと腹が破けるのではないかと思う程に奥に突き立てられ、眼が眩む程の快感にまた意識が飛びそうになる中で見上げたファレナの顔は、普段の眩いばかりの笑顔からはかけ離れた獰猛な顔をしていた。眉を寄せ、奥歯を噛み締めて快感を受け止める雄の顔。きっと民が見たら恐怖に怯えてしまいそうな、欲に濡れた目。妻はファレナのこんな顔を知っているのだろうか。いや、きっと知らないだろう。彼女の前のファレナは「良き夫」だったから。
散々荒された場所から力を失ったものがずるりと引き抜かれると、閉じ切れなくなってしまった場所が自分でもわかるくらいにヒクついていた。注がれた物を飲み込み切れずに溢れさせながら寂しいと、足りないと、もっと何もわからなくなるくらいに滅茶苦茶に壊して欲しいと訴えていた。
それを見てはぐるるると喉を鳴らして嬉しそうに笑う兄をかつてのようにただ盲目的に慕う事はもう、無い。だが長年兄に捕らわれていた身体はぽかりと口を開けた場所に指を差し込まれ、まるで精液を粘膜に刷り込むように掻き混ぜられるだけで言いようのない期待で震える。此処を満たされたまま眠りたいという欲を言葉にする代わりに、兄へと向かって両腕を伸ばせば、満足げな瞳に欲情をにじませて再びレオナに覆い被さり荒々しく唇を塞がれる。

嫌いになりたかった。
もうお前なんか要らないと切り捨ててやりたかった。
離れようとしたレオナを引き留める腕を、何馬鹿な事を言っているんだと振り払ってやりたかった。
妻が居る身で、血の繋がった弟に執着するなんて異常だと罵ってやりたかった。

そのどれもが出来ないまま、レオナは兄の背を抱き締めた。

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2

1
サバナクロー寮、マジフト大会対策ミーティング。
本年度の作戦に従い、準備を進める……要は誰を出場不能にしてやるかの話し合いだ。主力選手ばかりを狙えば不審に思われるだろう、だが雑魚ばかりを潰したって何の意味も無い。あくまで事故だと言い張れる犠牲者の数はそう多くないだろう、少ないチャンスで誰を潰すのか、慎重に決定する必要があった。
「次はスカラビアのジャミルを狙うのはどーっすか!」
不意に上がった名前にラギーは思わず身を強張らせた。確かに次に狙う相手としては悪く無い。単独で特別強い選手というわけでは無いが、彼のアシスト能力は中々に脅威だ。こちらの策を見透かしたように妨害し、味方のミスは素早くフォローして隙を作らせない、地味だが厄介な事この上無い。
だがそれとこれとはまた別の問題で……というより誰だジャミルの名前を出した馬鹿は。この寮にいて未だにうちの王様が時々纏う匂いの主を知らない奴がいたのか。いや実際にはっきりと二人がそういう仲であるとわかる現場を見た事のある者は一人も居ないわけだし、匂いの主だって本人と面識がある者だけが察しただけであって、この広い学園内、彼と一度も接触した事無い者もたくさんいるだろう。積極的に話題に出すような内容でも無かったから噂になるような事も無い。だからこそ、殆どの者が此処で彼の名前を出す事すら出来なかったというのに、どう反応した物かと空気が凍り付く。
「いいんじゃねえの」
「うわびっくりした起きてたんスかレオナさん」
固まった空気に割って入って来たのは今まで寝ていたとばかり思われていた王様本人だった。くあと大きな口を開けて欠伸をしている所からしてたった今まで寝ていたのかもしれない。
「他に適当な奴もいねえなら、ソイツでいいだろ。バレねえようにやれよ、じゃあ解散」
決定したからもう用無しとばかりにのっそり立ち上がり、ばりばりと頭を掻きながら自室へと引き上げる背中を残った者全員で呆然と見送ってしまい、それから慌ててレオナを追いかける。
「え、ちょっと……本当にいいんスか、ジャミルくんで」
「はあ?……何だ、不服なのかよ」
「いや、そうじゃなくて……怪我させていいんです?」
「今更何言ってやがる、散々やって来ただろ」
「そうじゃなくてえ……ええっとぉぉぉ……」
「何うだうだしてんのか知らねぇが、しくじるなよ」
辿り着いた寮長部屋の扉を開けると、じゃあな、と一言残して無残にも扉は締められてしまう。表立ってジャミルを庇うような事をしないだろうとは思っていたが、此処まであっさりとジャミルを傷つける事を推し進めてくるとも思わなかった。もしかしたらレオナとジャミルはそういう関係では無かったのだろうか。朝、レオナを起こしに行った時にジャミルの香りがするのは気のせいだったのだろうか。まあ実際、うちの寮でジャミルの姿を見たことは無いわけだし……だがレオナから時折ジャミルの匂いがするのはラギー以外の者も知っている事実だ。
考えてもわからないものはわからない。レオナが良いと言ったのだ、やるしか無い。
溜息一つで腹を括り、具体的な策を立てるべく踵を返した。



2
結局、サバナクロー寮あげての作戦は魔法も使えない一般人率いる面々の所為で役に立たず、それどころかレオナはオーバーブロットするわ、尻拭いでこき使われるわで散々な目にあった。全身あちこち悲鳴を上げていて、一度保健室で目が覚めたものの、自室に戻れば再びベッドに倒れ込む事しか出来なかった。
泥の様に眠った所で翌朝の目覚めは酷い物だ。全身が軋み、頭が重い。瞼を下ろせばすぐにでもまた眠れそうだったが、そういうわけにもいかない。ラギーは怪我と疲労だけで済んでいるが、オーバーブロットした癖にそのあとラギーと同じように動き回り、誰よりも皆の恨みを受け止めた我らが王様の様子を見て来なければ落ち着かない。恨みもある、失望した気持ちもある、それでも彼はラギーの憧れの王様のままだった。
「おはようございまーッス……!!!?」
痛む身体を引き摺り、なんとか押し開けた寮長部屋。そこに見えた光景にラギーは思わず絶句した。
ベッドの上に、レオナとジャミルが絡み合って寝ていた。それも裸で。部屋に染み付いたレオナの匂いに混ざり込んだ、普段の残り香とは違う濃いジャミルの匂いと共に鼻の奥に触れるのは……目の前の二人の昨夜の行為をありのままに伝える物で。
「な、な、な、なん……で……?????」
調理室にいるジャミルの手元を狂わせ、指先を赤く染めてやったことを覚えている。実際に怪我を見たわけでは無いが、包丁を扱いなれているラギーの感触で言えば筋までは傷つけていないもののそれなりに深い切り傷を負わせてやった筈だった。暫く箒を握り締めるのが困難だと思われるレベルにはやってやった筈だった。その犯人も、首謀者も、ジャミルは知っている筈だ。
なんせスカラビアと対戦した時の彼の猛攻っぷりは凄まじかった。殺す気かと言わんばかりの気迫でレオナに集中砲火を浴びせていた姿は未だに瞼の裏に恐怖と共に蘇る。弱っていたレオナが真正面から魔法を食らってしまいよろめいていたのを見た時の悪魔のような笑顔も。
昨日は確実に敵対している仲の筈だった。こんな、大事な物であるかのように両腕ばかりか脚まで絡ませて抱き締めるような仲でも、その腕にすっぽりと収まり安穏と寝ていられるような仲では無い筈だった。
「ん……んん……?」
先に目を覚ましたのはジャミルだった。とろとろと瞬いたかと思えば、ラギーを見つけて目を見開き、それから眉尻を下げて笑う。
「……おはよう。すまない、もうそんな時間だったか。すぐに出ていくから見なかったことにしてくれ」
「え、……あ、……うん……」
「ちょっと先輩、離してください。朝ですよ」
ぐいぐいと絡みつく身体を離そうとする左手に巻かれた包帯には血が滲んでいる。むにゃむにゃ言いながら抵抗していた腕からなんとか抜け出した肌にはたくさんの鬱血痕と、歯型。それ以上見ていられなくて思わずラギーはその場にしゃがみこむ。
「もー……なんなんスかアンタら……何で昨日の今日でもうヤってんスか……」
盛大に地面に溜息を吐きながらぼやくと、衣擦れの音をさせながら楽し気に笑う声が聞こえた。
「俺にもよくわからないから、忘れてくれ。それじゃ」
「そんな事言われて……も……?」
抗議しようと顔を上げた時には既に部屋の中にジャミルの姿は無かった。後に残るは寝起きの悪さで学園一を誇れる我らが王様がすやすやと眠る姿だけ。
「もおおおお……ほんとなんなんスかアンタら……」
ラギーの嘆きを聞いてくれる人は何処にも居なかった。




おまけ


とすん、と腹の上に重みが掛かり目を覚ます。侵入者にこんなにも接近されるまで気付かなかったことに驚きつつ、見えた相貌に息を吐く。
「驚いた、本当に弱ってますねレオナ先輩」
「……お陰様でな。お前こそ、ボロボロなんじゃねえの」
「弱ってる先輩につい興奮して無茶しましたからね」
ふふ、と笑うジャミルは随分と上機嫌のようだった。子供にするようにレオナの額に、鼻先に、頬にと口付けを落としてにこにこしている。
「で?そんな状態で盛りに来たって?」
「言ったでしょう。弱ってる先輩に興奮するんだって」
ずり、と押し付けられる下肢はなるほど確かに熱を孕んでいるようだった。ゆるゆると腰を擦り付けながら包帯を巻いた手がレオナの服に手をかけて剥がして行く。
「怪我人相手に良い趣味してんな」
「先輩だって、嫌じゃないんでしょう」
だるさが軽減した訳では無い。だが言われた通り、圧し掛かる疲労感の奥底で昇華しきれない熱が未だに燻ぶっているのも確かだった。
「お前が動けよ」
「御意」
揶揄するような笑い声と共に本格的に動き始めたジャミルに、レオナは喉奥を鳴らして笑い、丁寧に肌の上を這う指先の感触に身を委ねた。



普段ならばただ与えられる物を受け止めて鳴いていれば勝手にレオナが高みへと連れて行ってくれた。だが今はジャミルが自分で動かなければレオナは何一つしてくれない。
「もっと気合い入れて腰振れよ」
「っは、……俺だって、怪我人です、よ……ッ」
ぱしんと勢いよく尻を叩かれて痺れるような快感が走る。ぎう、と強張った身体が中に咥え込んだ物の形をまざまざと感じ取れる程に食い締めて震えた。
「やりゃあ出来るじゃねえか」
「っあ、ゃ、っ……ぁっ、だめ……ッっ」
ばしんばしんと立て続けに叩かれて痛いのに気持ち良い。叩かれ続ける所が燃えるように熱い。涙さえ浮かんで来たというのに脳内を締めるのは痛みよりも真っ白に飛ぶような快感ばかりだった。普段ならば追い打ちとばかりに此処で奥深くまで穿ってくれる熱はジャミルが動かなければ何もしてくれない。
「休んでないでとっとと動け」
「っひ、ぅ……んっ……ん、」
のたのたと膝を立て、ベッドのスプリングを軋ませ身体を上下に揺さぶる。どろどろに蕩けた身体の奥をごりごりと擦られて気持ち良いのに何かが足りない。何度イったかわからないくらいなのに腹の底にぽかりと穴が開いている気がする。
自分で動く、と言ったのはジャミルだ。レオナは碌に動けないだろうと気遣ったのもある。だが弱ったレオナを組み敷きたいと思ったのも事実だ。今まさにレオナはジャミルの尻の下に敷かれているというのに思ったよりも満足感は無い。それどころか双眸に肉食獣の凶暴性を宿しながらもただ寝転がっているだけの男に腹が立ってくる。
「……は、……れおな、せんぱ……ッ」
だがなんと言えばこの焦燥が伝わるのかわからなかった。満たされているのに飢えている。何かが足りない、でも何かわからない。
「い、……ってえ!!!」
レオナの肩に噛みついたのは無意識だった。口の中に血が残る程に強く噛み締めていたのも。気付けばぐるりと視界が周り、ふさがり切らない切り傷がある左手を、骨が軋む程に握り締められた痛みで仰け反っていた。
「っひ、――ッッ」
また視界がちかちかと白む。もう痛いのか気持ち良いのかわからない。だが先程まで見下ろしていた筈のレオナが牙を剥き出しにしてジャミルを見下している事に気付くとぞわぞわとまた震えが走る。捕食者の目がジャミルをひたりと捉えている事実に言いようのない程に満たされるのを感じた。
「――そろそろ俺の番だな?」
その後のジャミルの記憶は、殆ど無い。

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1

百獣の王の褥は暖かい。
用が済んだのならさっさと帰れば良いのに、ついつい抱え込まれるがままに仮眠をとるようになってしまったのはこの暖かさが抗いがたい心地良さだからだ。
元々ジャミルの寝起きはあまり良い方では無いが、この暖かさに包まれているとたった数時間の仮眠でしか無いというのに目覚めが良い気がする。
眠気を引きずる瞼を何度か瞬かせ、室内の暗さから時間を推測する。ほんのりと白んでいるからもう少しすれば夜明けだろう、部屋に戻るにはちょうど良い時間だ。
巻き付く腕をなるべく動かさないようにゆっくりと身を起こした所でシーツの剥がれた肌にひやりと冷えた空気が触れる。普段ならば気にならないような温度である筈なのに、この暖かさに慣らされてしまった肌には随分と冷たく感じる。それでもレオナが起きないうちに抜け出さなくては、と腰を上げようとした所で巻き付いていた腕がぐっとそれを留める。
やはり起きてしまったか、と諦め半分、むしろ期待していたのも半分。この温もりから離れなくて良い言い訳を、ジャミルは自分で用意出来ない。
「寒い…」
寝起きの掠れた低音は情事の吐息を彷彿とさせる。とろりと半分以上眠気に支配された眼がジャミルを引き寄せ絡め取ろうとするのに、形ばかりの抵抗で突っぱねる。
「そろそろ寮に戻らないと」
「まだ大丈夫だろ」
「誰かに見られる前に帰りたい」
「まだ大丈夫だろ」
「朝食の支度もしないと」
「うるせえ」
ずるり、ずるり。絡みついた腕が、足が、ジャミルを暖かな褥に引き摺り戻してがぶりと唇に噛みつかれる。思わず痛みに口角を引けば、肉厚の舌が無遠慮に口内をひと舐めして出て行った。
「っは、……ちょっと、待……ッ、」
ぎゅうと抱きこまれたかと思えば背筋を降りて尻へと伸びた手がまだ閉じ切らない場所を撫でて浅く指先が潜り込む。乾きかけた指先に引っ掻けられた入口がちくちくと痛いのに名残を残した奥がきゅうと疼く。
「待て、起きろ、朝だぞ!」
しなやかな筋肉に覆われた身体はジャミルが藻掻いた程度ではびくともしない。無造作だが、気遣いが見える指先がゆっくりと奥深くへと潜り込もうとしていくのに必死に身を捩って抵抗する。さすがに今から一戦交える程の余裕はない。だが抵抗すればするほど、脚の間に膝が差し込まれ抱え込まれていただけだった筈が上から抑えつけるように圧し掛かられ、耳朶を水音を立てて舐られる。ずぷりと奥まで差し込まれた二本の指が疼きの残る場所をゆるゆると撫でるのに恐怖と期待がせりあがる。
本気で蹴飛ばせばなんとか出れるかもしれない、だがそれは最終手段だ。リミットは何時くらいに設定すればいいだろうか、最後までしたとしたら後処理の時間も必要だからそれも考慮して朝食には昨日準備しておいたあれとこれとそれと……。
必死に今後の段取りを頭で巡らせていればふと、レオナの動きが止まった事に気付く。がっちりと片腕でジャミルの身体をホールドし、指を中に埋めたまま、すぅすぅと穏やかな寝息が濡れた耳元で揺れている。
「――………っはー……」
始めたのなら最後まで責任を取れ、と文句を言いかけて口を噤む。そうじゃない、寝落ちるならば手を出すな……いやそれも違う。
ジャミルもまだ寝起きで頭が回っていないのだ、たぶん。そう結論付けて、諦める。もう少しこの温もりに浸っていたいと思ってしまったのはジャミルとて同じだ。
レオナの身体に押しつぶされて多少苦しさはあるが、その分ひたりとくっついた肌の暖かさが染み渡る。溜息一つ吐きだして、ジャミルはレオナの背に腕を回した。

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twst

□→そんなにやらしくない
■→そこそこやらしい

【レオジャミ】

四章前までに書いたレオジャミ
■「獣の褥」まったり
■「曖昧な関係」多分、うちの基本のレオジャミ
□「曖昧な関係 その二」巻き込まれらぎぶち
■「イラマする話」嫌がらせしようとしたら平然とやり返された
■「兄レオジャミ3P」こまけぇこたあいいんだよ!
□「抱っこ」たまには甘えたい
■「夢物語」下のお前を嫁入りさせたまへ候に続く
■「物好き」なんとなく薄暗い
■「愛は要らない」甘えて甘えられて
■「あなたとワルツを」二人でソシアルダンスごっこする話

四章配信後に書いたもの
■「おめがば」特殊設定、兄レオがオチみたいになってる
□「お前を嫁入りさせたまへ候」夢物語の続き。ゆるふわはっぴー
■「てのひらひとつで」魔法の力でメスイキ
□「狩る」どちらかと言えばレオ←ジャミ
■「おうまさんごっこ」先輩の三つ編みでぺしんぺしん
□「先輩が男に抱かれて善がってる姿が見たい」会話文だけの下世話な話
□「夢見た未来」私なりの最高のハッピーエンド
□「余談」夢見た未来の余談
□「結局、メッセージを送る事は一度も無かった」先輩はぴば
□「ごっこ遊び」 続き物では無く、ごっこ遊びするレオジャミ二種
□「乙女心は複雑怪奇」後天的女体化するジャミル
□「欲しいのは」ジャミルはぴば
□「可愛いは正義」ジャミルは可愛い
□「この後、正式にお付き合いが始まった」パターンその1
□「レオナでいい」リクエスト頂いたもの
□「墓に骨を埋める」多分初恋の話
□「おしえてれおなせんぱい」ゆるふわお花畑な下ネタ
□「なれそめ」パターン2
□「香水」ジャミルが香水をつける話
□「地獄」イデアとジャミルは仲良し
□「人格入れ替わりネタ」ジャミルはいつでもレオナを抱いてみたい。※軽い暴力、鼻血有り
□「実り」レオナが育てた
□「取説」恋愛ビギナーズ
□「未知」ジャミルの未知との遭遇
□「化粧」 続き物では無く、化粧にまつわる二つの話
□「魅惑の香」獣臭いのが病み付きに
□「つよつよ」つよい(物理)
□「甘える」甘えることを覚えた従者
□「雨」雨に打たれた死体の気持ちを考える
□「わるいゆめ」※微グロ ゆめでよかった
□「砂になる人の話」※死ネタ あるかもしれない未来
□「二度寝」朝っぱらからだらだらいちゃいちゃ
□「砂糖」今日も元気にジャミルの頭が緩い下ネタ
■「黒」眼球舐めネタ
□「首」ギリギリ病んでない はず
□「ヤキモチ」当社比だいぶらぶらぶ
□「寄り道」  スパダリ彼ぴっぴによる教育
■「媚薬」  例の部屋に閉じ込められるやつ
□「兄と弟」当社比だいぶらぶらぶ
□「満月」レオナ四年、ジャミル三年
□「初恋」よくある感じのオチ
□「三億の男」闇オクに売られる推しが見たかった
□「新年」未来の話
□「おめがば」※胸糞悪い系の小ネタ
□「ごめんなさい」喧嘩した話
□「コイバナ」レオナ不在。2-Cのコイバナ
■「いちゃいちゃ」たまにはアクロバティックに
■「あんらめぇ」ジャミルが努力する話
□「バレンタイン」そのまんま
□「復習」びっくりするほどストレートに甘いやつ
□「美味しいお肉の食べ方」びっくりするほどストレートに甘いやつ
□「開花」レオナ不在。ラギーとジャミルのコイバナ?実りまであと少し
□「初めての朝帰り」まだ関係持ち始めたばかりの二人
□「ぐだぐだ」少なくとも同棲してる未来の二人
■「休日前夜」結婚した二人のいちゃいちゃ
□「夕焼けの国」ふわっとした何か
■「溶解」とろとろえっち
□「アオハル」たまにはネジ外して
□「告白」芽生えた何か
■「おしゃぶり」はじめてのおふぇら
□「年齢逆転」もしも二人の年齢が逆だったら
□「つづかない」「おめがば」のつづかない続き
■「あけおめ」そのまんま
□「バトル」戦って欲しかったけれど書く人の力が足りない
■「妊活」そこは本来入り口じゃねえんだよって言わせたかっただけの話


現パロ
■「夢の国」某ランドに行く二人。
□「アイスクリーム」ゆるふわいちゃはぴ
■「ピザ」だらだらいちゃいちゃ
□「デリバリー」ゆるふわいちゃはぴ
□「よわよわ」弱ってる先輩はKAWAII

□「海」ナチュラルにじゃみが産んだ子供が二人いる

□「共犯者」ファレレオ♀とカリジャミ♀前提のレオ♀ジャミ♀のような何か

□「二次会」カリ←ジャミで兄←レオ前提のセフレ?

特殊な組織に所属するレオジャミ 
□「牙」  ※レオモブ♀っぽい部分有


【カリジャミ】
四章前配信前に書いたもの
■「こんなはずじゃなかった」タイトルが私の感想
■「過去の話」モブジャミ、カリム父ジャミ含
■「未来の話」上の続き、プロポーズ
■「オメガバ」ほぼプロット

四章配信後に書いたもの
■「行きずりの」多分現パロ。じゃみるびっち先輩。れおなもびっち。


【フロジャミ】
□「噛み癖」フロイドにがじがじされるじゃみ
□「噛み癖2」じゃみるびっち先輩と童貞フロイド
□「部活の話」バスケしてるだけ


【モブジャミ】
■「はじめての」夜の接待
■「へたくそ」じゃみるびっち先輩が頑張るギャグ


【兄レオ】
■「永遠に毒を飲む覚悟」共依存の始まり
■「おしおき」異物挿入
■「殺せない話」殺したいから死ぬ
■「兄と弟、それから知らない人」貞操観念0のゆるふわ現パロの二人、合意のモブレオ要素有り
■「おもいでばなし」  ちったいレオナとお兄ちゃん
□「インソムニア」 卒業後に平和な関係になった二人がいちゃついてるだけ
■「父レオ/兄レオ」ちったいレオナが痛そうなので注意
■「0721の日」兄貴の目の前で兄貴の指で
□「おやすみ三秒」仲良し兄弟
□そして弟は死んだ仲良くない兄弟
■「ひみつ」チェカは見た
□「胡蝶の夢」仲良いのか悪いのかわからない
■「その、かたち」他の誰か×レオナ表現有り

【チェカレオ】
短いの。まだふわっとしてる。
□「初めて」ワンライで書いたくっつかない話

【兄レオ+チェカレオ】
■「骸を抱く」※無理矢理、痛い、鬱、死ネタ

【ラギレオ】
■「菩提樹」兄レオ前提ラギレオ♀。モブレオ要素含む。嘔吐表現有り。薄暗い。

【その他】
ツイステキャラがもしもFF14をやっていたらという設定だけ


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