忍者ブログ

空箱

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

こんなはずじゃなかった

ジャミルの手を握り「今晩、良いか?」と聞く。
少しだけ考えた後「では22時に」とジャミルが時間を指定する。
誘う時はいつもそれだけで済んだ。ジャミルが指定する時間はまちまちだったが、断られた事は一度も無い。
後は寝室で待っていれば、時間になると風呂上がりのジャミルがやってきて、身を委ねるだけで気持ちよくしてくれる。
ジャミルはこの行為を「処理」だと言う。ヤりたい盛りのカリムが性欲を持て余して余計な子種をばら撒かないように、病気をもらって来ないように、変な相手に引っかからないように定期的に処理をするのだと。だからジャミルはいつでも積極的にカリムに奉仕してくれたし、カリムのしたいようにさせてくれた。カリムが望めばただ寝転がっているだけでもジャミルが口と手で丁寧にカリムを昂らせ、自ら上に跨り腰を振って高みまで連れていってくれた。縛ってみたいと言えば簡単に両手を差し出されたし、玩具を使ってみたいと言えば次の日には望んだ物が用意されていた。
それが嫌だとまでは言わないが、味気ないと思うのも事実だ。
今もカリムの股間に顔を埋めてさも美味しいキャンディを味わうかのようにカリムの物を舐めしゃぶっているジャミルの一房垂れ落ちた髪を指先で掬いあげ、耳にかけてやればふわりと淫蕩に微笑まれて思わず腰が重くなる。だが身体とは裏腹に、的確に男を煽る振舞いをこなすジャミルに違和感を覚えてしまう。まるで、入学前に女を知って置けと親から宛がわれた娼婦のような姿。
ちゅう、と先端に吸い付かれて思わず肩を跳ねさせたカリムに笑いながらのし上がったジャミルに、押し倒されるままに仰向けに寝転がされ跨られる。片手をカリムの腹につき、片手でカリムのものを支えて尻に宛がう姿に否応なく期待で息が上がる。早く中に埋まりたくて細い腰を両手でつかめば宥めるように額に口付けを落とされた。
「ゆっくり、な?」
この両手に思い切り力をかけて思い切り奥まで突き上げてやりたい欲を見透かしたかのように濡れた声が囁く。だがジャミルが自らカリムを受け入れる姿も好きだった。乾いた唇を真っ赤な舌で舐めて濡らし、それからゆっくりと腰を下ろして行くにつれ、先端が暖かな粘膜にめり込んで行く。触れても居ないのに柔らかく蕩けた粘膜が絡みついて気持ち良い。くびれた所まで飲み込んだ所で具合を確かめるように腰を揺らされて思わず変な声が上がってしまったカリムをジャミルが笑う。その余裕ぶった姿が悔しくて、ぐっと両手でジャミルの腰を引きずり落としてやった。
「ッッぁ――」
甘く張りつめた声がジャミルから上がり、一気に根本まで包み込んだ粘膜がぎゅうぎゅうとカリムを締め付け、思わず出そうになって必死に耐える。
「っは、……ゆっくりって言っただろう……」
ふうふうと息を吐きながら上目遣いに睨む姿すら、艶っぽいと思うのに同時に何か、壁のようなものを感じてしまう。
「ジャミルだって気持ち良かっただろ?」
「俺のことはいいから」
あくまでこれは「カリムの性欲の処理」なのだと言外に振り払われて閉口する。恋人のように振舞いたいという訳ではない。でもせめて、共に気持ち良くなるためのセックスがしたかった。カリムが発散出来ればそれで終わりなのではなく、カリムも、ジャミルも、同じくらい気持ちよくなって満足出来る事がしたかった。従者としての仕事の一環ではなく、ジャミルにも存分に楽しんでもらいたかった。だがジャミルの腹の下でしっかりと硬くなり動くたびに揺れる物に手を伸ばそうものなら「お前はそんなことをしなくていい」「余計な事をするなら止めるぞ」「目を閉じて、好みの女の事でも考えながら自分がイく事だけを考えろ」と言われて、キスだってよっぽどの事が無ければしてくれない。ジャミルにとって、この行為はあくまで「カリムの性欲処理」でしか無いのだと、言葉で態度で突きつけられていた。
カリムは二人で楽しみたかった。
カリムがただ奉仕されるだけではなく、カリムの手でジャミルが鳴く姿を見てみたかった。
真正面からねだるのはもう既に散々やって惨敗し続けている。
ならば、策を練らなければならない。


------


夕食は終わった。後片付けも済んだ。洗濯物は既に片付けた筈だし明日の朝食と弁当の仕込みも済んでいる。課題は明日提出の物が無いから目を瞑る事にする。授業の合間にでもこなせばよいだろう。
頭の中でそこまで確認してからようやくソファへと腰を下ろす。カリムお気に入りの柔らかなクッションがジャミルの体重を受け止めて柔らかく沈み、気を抜けばそのまま溶けて眠ってしまいそうだった。カリムの世話だけなら慣れたものだが、自身の学業と同時にこなすとなるとそれなりに一日の終わりには疲労が溜まっている。自分自身の時間を楽しむ前に、少しだけ休息が欲しかった。
「ジャミル!」
今までどこにいたのやら、見計らったかのように現れたカリムの声に落ちそうになった瞼を持ち上げる。何がそんなに楽しいのか、駆け寄る笑顔の眩しさに思わず眼を眇める。
「どうした、何かあったのか」
「いや、毒見して欲しくて」
そう言って差し出されたのは冷蔵庫にしまっておいた筈のチョコレート。おやつ用だから飾り立てる必要も無いだろうと味気ないステンレスの容器に並べられたそれは確かにジャミルが作った物で、ジャミルが作ったのならば毒見など要らない筈だ。意味がわからずに眉を寄せたジャミルに構わず、目の前に立ったカミルがチョコレートをずずいと差し出す。
「毒見が、必要か?」
ジャミルが毒を持ったのではないかと疑われているという事だろうか。だがそれにしてはカミルの笑顔はまるで悪戯を仕掛ける前のわくわくした気持ちを隠しきれない子供のように煌いているし、すでにこのチョコレートは二人で何度か食べている。
「そういうわけじゃなくて……いいから食べてみてくれよ、お前に食べて欲しいんだ」
わけはわからないままだが、この様子だとジャミルが従うまでずっとこのままなのだろう。溜息一つで諸々の感情は飲み込み、チョコレートを一つ摘まみ上げる。ジャミルが作った時の記憶と違わない、何の変哲もないチョコレート。口に放り込んでまずは舌で転がす。溶けだす甘みがとろりと舌に絡みつくが特別おかしな所は無い。歯を立てて柔らかくなったチョコレートを割れば溢れ出すのはリキュールを使ったガナッシュの味、だが。
「――ッんんぅ」
これは飲み込んではいけないものと判断し、吐きだすべく口を開こうとした所で、狙ったように圧し掛かってきたカリムに唇を塞がれる。
「んんぁ……ッんぅ、……っ」
逃れようにも膝の上に腰を下ろされ、ソファに押し付けるように体重をかけて確りと両手で頭を掴まれてしまっては顔をそむける事も出来ない。抗議の意思でジャミルに跨る足を遠慮なしに叩いてやってもおかまいなしで、チョコレートを舌先で掬い取ろうとするものだから慌てて取り返そうと舌を伸ばす。
「んぅ……ん、……ふ」
どろどろに溶けたチョコレートの味が口の中いっぱいに広がる。そこに混ざり込んだ異物の味も。ジャミルの記憶が確かならばこれは媚薬の類だ。これほど強烈な味がするという事は適量の三倍……いや五倍は入っているのでは無いだろうか。幼い頃より毒見役をしていたジャミルは毒に耐性がある。というよりも、毒に耐えられるように訓練されている。普通の人ならば死んでしまうような量の媚薬であっても耐えられるだろうが、カリムはそういうわけにもいかない。一欠片たりとも飲み込ませるわけにはいかないというのに、溶けたチョコレートを飲み込むまいと堪えているジャミルを揶揄うように舌先が絡みついてはちゅうと吸い上げて、うっかりそのままカリムが呑み込んでしまうのでは気が気ではない。
漸くカリムの意図を察して睨みつけてやっても、にんまりと眼を三日月型にして笑う顔に止める気が無いのだと知る。このチョコレートをジャミルが飲み込むまで解放するつもりはないのだろう。上からかぶりつかれて溶けたチョコレートと二人分の唾液で溢れそうになった口内をカリムの舌先が楽しげに舌の根を擽っていた。
最初の時点でもっと強く拒絶しておけばよかったと思っても後の祭りだ。腹を括ってごくり、ごくんと幾度かに分けて飲み下し、カリムの舌に一滴すら残さないように啜り、チョコレートの味がしなくなるまでたっぷりと舌を絡め合わせては唾液を啜って飲み込む。戯れに逃げようとする舌を追いかけ、カリムの口内にも味が無いのを確認するように舌先で粘膜を丹念になぞり、漸く大丈夫だろうと安心するころにはすっかりジャミルの息が上がっていた。
「っはは、情熱的なちゅーだな!」
「……っ誰の、せいだと……!」
「俺だな!」
悪びれもせず笑う姿にどっと疲労が増した気がする。早くも毒が効いてきたようで肌がじんわりと熱を持っている。
「……で、何がしたかったんだ。処理が必要なら言ってくれたら――」
「ジャミルにも楽しんで欲しいんだ、セックスを」
「セックスじゃない、ただの処理だ」
「じゃあセックスがしたい」
「それは、卒業してからそういう相手としてくれ」
「嫌だ。俺は、ジャミルとしたい」
こうなってしまってはもうカリムは頑なに意思を貫こうとするだろう。面倒な事になったと思いながらもぼうっとしてきた頭では上手い打開策が思い浮かばない。
「……はあ。わかった、わかったから。準備してくるから一時間待ってくれ」
とにかくまずは少しでも薬を抜かなければならない。幾ら慣れていると言えど、流石にこの量はジャミルとてただでは済まないだろう。カリムの胸を押して離れるように促すが、離れるどころかジャミルの両腕を握ったカリムが首筋に口付けを落とし、つうと舌先を滑らせるのにぞくぞくと背筋が痺れる。
「準備なら俺がするさ、ちゃんと調べたんだ」
「そ……んな事、お前はしなくていい……ッ」
「俺が、したいんだ、ジャミル」
「ッッッ~~~!!!!」
耳元に唇を押し付けて囁かれただけで、たったそれだけで駆け上がる快感に体が震える。本格的に毒が回ってしまう前にどうにか逃げ出さねばと思うのに力が入らない。せめて唇から逃れようと頭を振るも動きは緩慢で、それどころかくらりと視界がぶれて崩れ落ちる身体をカリムに抱き留められ、ソファに横たわらせられる。今すぐ押しのけて逃げ出したいというのに、ジャミルの服を脱がしては唇を押し付けているカリムはびくともしない。
「嫌だ、……っなあ、カリム……っっ」
「んん~~?」
「止め、ろ……って……」
「んっふっふ」
これほど必死に訴えているというのにカリムは喜色満面の笑みで止める気配がない。身を捩って逃げようとしてもいつの間にか脱がされた服が絡み合って思うように動けない。
「心配すんなって!ちゃんと気持ちよくしてやるから!」
心配しているのはそこじゃないと抗議する前に再び唇を塞がれ、絶望的な気持ちでジャミルは瞼を下ろした。


------


少しばかり強引に事を進めてしまったとは思うが、仕方ない。こうでもしなければ言葉巧みにジャミルに逃げられてしまうのだから。
すっかり媚薬の回ったジャミルはふにゃふにゃと力の入らない抵抗をしながら「嫌だ」「止めよう」とまるで縋るように必死に訴えて来ていて、その見慣れない姿を可愛らしいと思う。
褐色の肌は既にジャミルが何度も吐きだしたもので白く濡れていた。腹の上で塗り広げるように撫でてやるだけでびくびくと震えて悲鳴を上げる姿は普段のなんでも一人でこなしてしまうジャミルよりもよっぽど愛しい。
「すっげえ、もうこっちまでぐしょぐしょ……」
出しても萎えず震えているジャミルの物から垂れ落ちるものを追いかけるように指先を伝わせ、辿り着いた普段ジャミルが自分で準備をしてカリムには触れさせてくれない場所、縦に割れた不思議な形のそこに白濁のぬめりを借りて指を押し込めばいとも簡単にするりと飲み込まれきゅうと吸い付かれる。
「っふぁ、……ッやだぁ……ッ」
指で感じるジャミルの中は熱く、嫌だというばかりには歓迎するように絡みついて離れない。確かめるようにぐにぐにと指を動かしてみるが気持ちよさそうな鳴き声を上げて身体を撓らせるばかりだったので、もう一本、二本と少しずつ馴染むのを待ってから指を増やして行く。
「っゃだ、あっ、あ……あ、も、イきたくな…ッっ」
想定していたよりもすんなりと馴染んでしまった中の様子に夢中になっているうちに気付けばジャミルは涙混じりの悲鳴を上げていた。少し中を揺さぶったり強くこすってやるだけで簡単に戦慄き仰け反る姿にカリムも痛いくらいに昂っている。早く指先で散々味わったジャミルの中に入って自分も気持ちよくなりたい。
「ごめんな、遊び過ぎた。けどもうちょっと頑張ってくれ」
「んん、……ッ」
指を引き抜くだけでジャミルの物が跳ねたが、もう何も出てこなかった。疲れ果てたかのように茫洋と虚空を彷徨う眼が涙に濡れていたのを舐め取り、目尻にキスを一つ送って抱き締めると珍しくジャミルの手が弱弱しくカリムの背へと回された。普段ならばこんな縋るような仕草はしないというのに。嬉しくなってジャミルの腰を抱え、柔らかく蕩けた穴へと自身を押し込む。
「入れるぞ」
「ん、――」
さほど抵抗なく、むしろ自ら誘い込むような粘膜の蠢きに引き寄せられてずぶずぶとジャミルの中に沈み込む。
「ぁ、あ……ッ●●様……――ッッ」
期待に胸を高鳴らせてぐ、っと強くジャミルの腰を掴んだ時に聞こえた名前に思わずカリムの動きが止まる。
普段、ある程度ならカリムの我儘を聞いてくれるジャミルが此処までずっと嫌がるのには何かしら理由があるのだとは思っていた。ジャミルにとっては重要かもしれずとも、カリムから見れば大したことのない理由だとも。
「っはやく、――っジャミルに、ください……ん、あ、あっ」
ジャミルの長い脚がカリムの腰に絡みつく。まるでもっと奥深くまでと強請るように身を捩り、懸命に腰を振っては一人で鳴いていた。動きを止めたカリムに甘えるように抱き着いた首筋に懐きながらもその双眸はカリムを見ていなかった。
「●●様、……」
媚びる声音は胸焼けしそうな程に甘い。こんな声が出せるなんて知らなかった。この声で名前を呼ばれたらすぐにでも達してしまいそうな程に蠱惑的な声。
そんな甘い声で、何故、ジャミルは父の名を呼ぶのだろうか。

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]