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空箱

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2

1
サバナクロー寮、マジフト大会対策ミーティング。
本年度の作戦に従い、準備を進める……要は誰を出場不能にしてやるかの話し合いだ。主力選手ばかりを狙えば不審に思われるだろう、だが雑魚ばかりを潰したって何の意味も無い。あくまで事故だと言い張れる犠牲者の数はそう多くないだろう、少ないチャンスで誰を潰すのか、慎重に決定する必要があった。
「次はスカラビアのジャミルを狙うのはどーっすか!」
不意に上がった名前にラギーは思わず身を強張らせた。確かに次に狙う相手としては悪く無い。単独で特別強い選手というわけでは無いが、彼のアシスト能力は中々に脅威だ。こちらの策を見透かしたように妨害し、味方のミスは素早くフォローして隙を作らせない、地味だが厄介な事この上無い。
だがそれとこれとはまた別の問題で……というより誰だジャミルの名前を出した馬鹿は。この寮にいて未だにうちの王様が時々纏う匂いの主を知らない奴がいたのか。いや実際にはっきりと二人がそういう仲であるとわかる現場を見た事のある者は一人も居ないわけだし、匂いの主だって本人と面識がある者だけが察しただけであって、この広い学園内、彼と一度も接触した事無い者もたくさんいるだろう。積極的に話題に出すような内容でも無かったから噂になるような事も無い。だからこそ、殆どの者が此処で彼の名前を出す事すら出来なかったというのに、どう反応した物かと空気が凍り付く。
「いいんじゃねえの」
「うわびっくりした起きてたんスかレオナさん」
固まった空気に割って入って来たのは今まで寝ていたとばかり思われていた王様本人だった。くあと大きな口を開けて欠伸をしている所からしてたった今まで寝ていたのかもしれない。
「他に適当な奴もいねえなら、ソイツでいいだろ。バレねえようにやれよ、じゃあ解散」
決定したからもう用無しとばかりにのっそり立ち上がり、ばりばりと頭を掻きながら自室へと引き上げる背中を残った者全員で呆然と見送ってしまい、それから慌ててレオナを追いかける。
「え、ちょっと……本当にいいんスか、ジャミルくんで」
「はあ?……何だ、不服なのかよ」
「いや、そうじゃなくて……怪我させていいんです?」
「今更何言ってやがる、散々やって来ただろ」
「そうじゃなくてえ……ええっとぉぉぉ……」
「何うだうだしてんのか知らねぇが、しくじるなよ」
辿り着いた寮長部屋の扉を開けると、じゃあな、と一言残して無残にも扉は締められてしまう。表立ってジャミルを庇うような事をしないだろうとは思っていたが、此処まであっさりとジャミルを傷つける事を推し進めてくるとも思わなかった。もしかしたらレオナとジャミルはそういう関係では無かったのだろうか。朝、レオナを起こしに行った時にジャミルの香りがするのは気のせいだったのだろうか。まあ実際、うちの寮でジャミルの姿を見たことは無いわけだし……だがレオナから時折ジャミルの匂いがするのはラギー以外の者も知っている事実だ。
考えてもわからないものはわからない。レオナが良いと言ったのだ、やるしか無い。
溜息一つで腹を括り、具体的な策を立てるべく踵を返した。



2
結局、サバナクロー寮あげての作戦は魔法も使えない一般人率いる面々の所為で役に立たず、それどころかレオナはオーバーブロットするわ、尻拭いでこき使われるわで散々な目にあった。全身あちこち悲鳴を上げていて、一度保健室で目が覚めたものの、自室に戻れば再びベッドに倒れ込む事しか出来なかった。
泥の様に眠った所で翌朝の目覚めは酷い物だ。全身が軋み、頭が重い。瞼を下ろせばすぐにでもまた眠れそうだったが、そういうわけにもいかない。ラギーは怪我と疲労だけで済んでいるが、オーバーブロットした癖にそのあとラギーと同じように動き回り、誰よりも皆の恨みを受け止めた我らが王様の様子を見て来なければ落ち着かない。恨みもある、失望した気持ちもある、それでも彼はラギーの憧れの王様のままだった。
「おはようございまーッス……!!!?」
痛む身体を引き摺り、なんとか押し開けた寮長部屋。そこに見えた光景にラギーは思わず絶句した。
ベッドの上に、レオナとジャミルが絡み合って寝ていた。それも裸で。部屋に染み付いたレオナの匂いに混ざり込んだ、普段の残り香とは違う濃いジャミルの匂いと共に鼻の奥に触れるのは……目の前の二人の昨夜の行為をありのままに伝える物で。
「な、な、な、なん……で……?????」
調理室にいるジャミルの手元を狂わせ、指先を赤く染めてやったことを覚えている。実際に怪我を見たわけでは無いが、包丁を扱いなれているラギーの感触で言えば筋までは傷つけていないもののそれなりに深い切り傷を負わせてやった筈だった。暫く箒を握り締めるのが困難だと思われるレベルにはやってやった筈だった。その犯人も、首謀者も、ジャミルは知っている筈だ。
なんせスカラビアと対戦した時の彼の猛攻っぷりは凄まじかった。殺す気かと言わんばかりの気迫でレオナに集中砲火を浴びせていた姿は未だに瞼の裏に恐怖と共に蘇る。弱っていたレオナが真正面から魔法を食らってしまいよろめいていたのを見た時の悪魔のような笑顔も。
昨日は確実に敵対している仲の筈だった。こんな、大事な物であるかのように両腕ばかりか脚まで絡ませて抱き締めるような仲でも、その腕にすっぽりと収まり安穏と寝ていられるような仲では無い筈だった。
「ん……んん……?」
先に目を覚ましたのはジャミルだった。とろとろと瞬いたかと思えば、ラギーを見つけて目を見開き、それから眉尻を下げて笑う。
「……おはよう。すまない、もうそんな時間だったか。すぐに出ていくから見なかったことにしてくれ」
「え、……あ、……うん……」
「ちょっと先輩、離してください。朝ですよ」
ぐいぐいと絡みつく身体を離そうとする左手に巻かれた包帯には血が滲んでいる。むにゃむにゃ言いながら抵抗していた腕からなんとか抜け出した肌にはたくさんの鬱血痕と、歯型。それ以上見ていられなくて思わずラギーはその場にしゃがみこむ。
「もー……なんなんスかアンタら……何で昨日の今日でもうヤってんスか……」
盛大に地面に溜息を吐きながらぼやくと、衣擦れの音をさせながら楽し気に笑う声が聞こえた。
「俺にもよくわからないから、忘れてくれ。それじゃ」
「そんな事言われて……も……?」
抗議しようと顔を上げた時には既に部屋の中にジャミルの姿は無かった。後に残るは寝起きの悪さで学園一を誇れる我らが王様がすやすやと眠る姿だけ。
「もおおおお……ほんとなんなんスかアンタら……」
ラギーの嘆きを聞いてくれる人は何処にも居なかった。




おまけ


とすん、と腹の上に重みが掛かり目を覚ます。侵入者にこんなにも接近されるまで気付かなかったことに驚きつつ、見えた相貌に息を吐く。
「驚いた、本当に弱ってますねレオナ先輩」
「……お陰様でな。お前こそ、ボロボロなんじゃねえの」
「弱ってる先輩につい興奮して無茶しましたからね」
ふふ、と笑うジャミルは随分と上機嫌のようだった。子供にするようにレオナの額に、鼻先に、頬にと口付けを落としてにこにこしている。
「で?そんな状態で盛りに来たって?」
「言ったでしょう。弱ってる先輩に興奮するんだって」
ずり、と押し付けられる下肢はなるほど確かに熱を孕んでいるようだった。ゆるゆると腰を擦り付けながら包帯を巻いた手がレオナの服に手をかけて剥がして行く。
「怪我人相手に良い趣味してんな」
「先輩だって、嫌じゃないんでしょう」
だるさが軽減した訳では無い。だが言われた通り、圧し掛かる疲労感の奥底で昇華しきれない熱が未だに燻ぶっているのも確かだった。
「お前が動けよ」
「御意」
揶揄するような笑い声と共に本格的に動き始めたジャミルに、レオナは喉奥を鳴らして笑い、丁寧に肌の上を這う指先の感触に身を委ねた。



普段ならばただ与えられる物を受け止めて鳴いていれば勝手にレオナが高みへと連れて行ってくれた。だが今はジャミルが自分で動かなければレオナは何一つしてくれない。
「もっと気合い入れて腰振れよ」
「っは、……俺だって、怪我人です、よ……ッ」
ぱしんと勢いよく尻を叩かれて痺れるような快感が走る。ぎう、と強張った身体が中に咥え込んだ物の形をまざまざと感じ取れる程に食い締めて震えた。
「やりゃあ出来るじゃねえか」
「っあ、ゃ、っ……ぁっ、だめ……ッっ」
ばしんばしんと立て続けに叩かれて痛いのに気持ち良い。叩かれ続ける所が燃えるように熱い。涙さえ浮かんで来たというのに脳内を締めるのは痛みよりも真っ白に飛ぶような快感ばかりだった。普段ならば追い打ちとばかりに此処で奥深くまで穿ってくれる熱はジャミルが動かなければ何もしてくれない。
「休んでないでとっとと動け」
「っひ、ぅ……んっ……ん、」
のたのたと膝を立て、ベッドのスプリングを軋ませ身体を上下に揺さぶる。どろどろに蕩けた身体の奥をごりごりと擦られて気持ち良いのに何かが足りない。何度イったかわからないくらいなのに腹の底にぽかりと穴が開いている気がする。
自分で動く、と言ったのはジャミルだ。レオナは碌に動けないだろうと気遣ったのもある。だが弱ったレオナを組み敷きたいと思ったのも事実だ。今まさにレオナはジャミルの尻の下に敷かれているというのに思ったよりも満足感は無い。それどころか双眸に肉食獣の凶暴性を宿しながらもただ寝転がっているだけの男に腹が立ってくる。
「……は、……れおな、せんぱ……ッ」
だがなんと言えばこの焦燥が伝わるのかわからなかった。満たされているのに飢えている。何かが足りない、でも何かわからない。
「い、……ってえ!!!」
レオナの肩に噛みついたのは無意識だった。口の中に血が残る程に強く噛み締めていたのも。気付けばぐるりと視界が周り、ふさがり切らない切り傷がある左手を、骨が軋む程に握り締められた痛みで仰け反っていた。
「っひ、――ッッ」
また視界がちかちかと白む。もう痛いのか気持ち良いのかわからない。だが先程まで見下ろしていた筈のレオナが牙を剥き出しにしてジャミルを見下している事に気付くとぞわぞわとまた震えが走る。捕食者の目がジャミルをひたりと捉えている事実に言いようのない程に満たされるのを感じた。
「――そろそろ俺の番だな?」
その後のジャミルの記憶は、殆ど無い。

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