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無題

エピアデが出る前にしか出来ないネタのプロットのような物

黒い髪、黒い瞳の瓜二つの双子…不吉の象徴として生まれてきたアベルとカイン。街を束ねる権力者の父と、神の巫女である母の力によって生まれてすぐに葬りさられることだけは無かったが、街の人の視線は冷たかった。最初の頃こそ愛情を注いでいた両親も街に不幸が起こる度に双子のせいだと囁く街の人の声によって次第に不仲となり、二人は邪険にされるようになっていった。二人きりで肩を寄せあって生きるしか無かった幼少時代、だがそれはアベルの持つ不思議な力によって一変する。 
黒化病。肌が少しずつ黒くなり、やがて腐敗して真っ黒な膿を垂れ流しながらやがては死、もしくは異形の化け物へと変わる流行り病。原因も治療法も不明、一度患ってしまえば救う道は無く、また集落で一人でも発症してしまうと瞬く間に広まり一月と経たずに集落を滅ぼしてしまう恐ろしい病を何故かアベルだけは触れるだけで治す事が出来た。 
それを知った人々は今までの冷遇が嘘のようにアベルを救世主、神の御子と称して持て囃した。 
優しいアベルは彼らの今までの行いを許し積極的に病に侵された人々を救い、その噂は遥か遠くの地まで伝わり多くの人がアベルの下へと救いを求めて集まった。 
それに憤ったのは弟のカインだった。カインは自分勝手に兄を頼る人々が許せなかった。また、あれだけ酷い仕打ちを受けた人々を容易く許す兄も許せなかった。人々のカインに対する態度も扱いもかつての地獄のような扱いからは改善されたが、たった一人の拠り所だった兄を民に奪われたカインは一人ぼっちだった。 
かつて二人はいつも一緒だった。 
お互いされいれば後は他に何も要らなかった。 
ずっと二人きりで肩を寄せあって生きていられれば良かった。 
それなのに兄は求められるままに民へと手を差し伸べてばかりでカインを省みない。力を持たないカインにはもう何も残っていなかった。裏切りだとカインは思った。アベルへの重すぎる愛はいつしか妬みや憎しみが混ざったどす黒いものへと変わっていた。兄さえいなければ、いや兄さえ側にいれば。 

いくつもの時が過ぎた頃、アベルに異変が起きた。身体が思うように動かず、夜になると身体のあちこちから黒化病のように黒い膿が溢れ出す。日のあるうちはいつもと変わらぬ見た目だが光が痛いのだと薄暗い場所を好むようになった。 
カインはこれは今まで自分を蔑ろにした報いだと喜んだ。同時にアベルを失うかもしれない恐怖に怯えた。既に誰よりも大切な愛しい人でありながら、誰よりも憎くて殺したい人になっていた。 

すぐにでも死んでしまうか、異形へと変わってしまうかも思われたアベルはしかしそれから数年生き延びた。昼は今までと変わらず民を救いながら夜は人の目に触れないように部屋に閉じ籠る生活。カインにとって二人きりでいられる時間が増えて幸せな時間だった。 


だがある日、たまたまアベルの夜の姿が民に見られてしまってからは坂道を転がり落ちるように世間の評価は一変した。 
化け物、詐欺師、黒化病をばらまく悪魔。 
どれだけ真実を伝えても悪い噂ばかりが膨れ上がり、事実からはねじ曲げられ、気付けばアベルは人類の敵だと敵意を向けられるようになっていた。 
生まれただけで忌まわしいから殺せと言った人々が、利用価値があるとわかれば途端に掌を返す。 
そしてまた、散々崇め奉って来た癖にただの噂で簡単に殺せと敵意を向け始める。 

やがて本格的にアベル討伐の話が上がる。だが黒化病の人間に近付きたがる人間はいない。誰だって自分の身は可愛い。その中で白羽の矢が立ったのがカインだった。最愛の兄を討つ等出来ないと真っ向から戦うつもりだったカインだが、その時魔が刺してしまった。 

誰もが手を出せないアベルを殺せば英雄として民の信望を得られるかもしれない、と。

ほんの一時の気の迷いでカインはアベルを手にかけなければならなくなった。途中で過ちに気付いても遅い、今さら無理だと言えばアベルの仲間としてカインも殺されるのはわかっていた。 
そうしてアベルはカインの手によって首を落とされた。胴体から切り離された頭はただ悲しげに笑っていた。 

その後、多くの人を騙した悪魔を倒した英雄となったカインは、民を率いる王となった。なくしたものを忘れるようにソムヌスと名前を変えて。 



アベルが病に侵されている姿をたまたま見てしまったのは、アベルの身の回りの世話をしていたアーデンという赤髪の男だった。何の気無しにたまたま見たものを他の人に話してしまったところ、瞬く間に噂が広まりあらぬ事実がでっちあげられてしまい、気付けば一介の力無き男ではどうしようも出来ない所まで進んでしまっていた。 
アーデンは優しいアベルが好きだった。 
使用人にも分け隔てなく接し、アーデンが尽くした些細な事柄でも喜び、ありがとうと言ってくれるアベルが世間の言うような悪魔だとはとても思えなかった。 
自分のせいで大変なことになってしまったと泣きながら頭を下げに言った時もアベルはただ優しく気にしないでくれと微笑むだけだった。巻き込まれないうちに逃げろ、とも。 
たった一人の兄弟なのに平気で兄に手をかけようとするカインが許せなかった。だが多くの民と共にあるカインに、一介の使用人であるアーデンが敵うわけがない。泣く泣くアベルに言われるままに屋敷を去った。いつかカインに復讐してやると誓いながら。 











目が覚めると見覚えがあるような気がする質素な部屋の中にいた。頭がぼんやりとしていて何故此処に居るのかわからない。すっきりするために顔を洗おうと部屋を出て井戸へと向かい、水を汲み上げる。それを両手で掬おうと桶を覗き込むと水面に映るのは赤髪の男。使用人として最後まで身を案じてくれた男。激情家な所もあるが、普段は優しく気さくだった男。それが水面に映っている。後ろを振り返るが誰も居ない。つまり、此処に映っているのは―――

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