かつては商業地区の中心地であった繁華街の外れ、細い路地の一番奥にその映画館はあった。車で十分も離れていない場所に出来た大型の商業施設に客を根こそぎ奪われ、日が落ちれば人の気配すら無くなるような寂れた街は、夜も更けた今、しんと静まり返っている。まるで世界に一人きりになったかのような暗い路地を進むとそこだけぽつりと灯る明かり。古びた建物は一見すればただの小さな映画館だが数多の店がシャッターを下ろす中で営業を続けられるのはそれなりに固定客がいるのか、それとも採算度外視の趣味で営業を続けているだけなのか。暇そうに欠伸をこぼす無愛想な受付からチケットを買うと聞いたことも無いようなタイトルが印字されていた。これは後者だったかと一人納得しながら、中へと入足を踏み入れる。
無人のロビーを抜けてすぐに辿り着く重い扉を開ければ、100人も入れば満席になるのだろうか、小さめのホールには両手に満たないような人数が疎らに居るだけだった。映画はまだ始まったばかりのようだが既に眠っている者、これから眠ろうとしている者、明らかに泥酔している者等、まともに映画を見ている人などろくに居ない。そんな中、唯一顔をスクリーンへと向けている姿に目を止める。最後列の一番奥から二番目、人を避けるように入口から一番遠い場所に座る彼女の顔はスクリーンの光を浴びて一際色白さを際立てていた。新たな客には目もくれず、さも映画に夢中になっていますと言わんばかりの姿に口許を緩ませながらおもむろに階段を登り最後列を目指す。空席が目立つ中、細い座席の間を通り抜けあえて女性……レイヴスの左隣に腰を下ろすアーデンを気にするような人間は誰も居ない。人の活気と共に治安を失ったこの街でこんな夜も遅くに一人でいる女性のレイヴスですら誰にも気にされていないのだから、男であるアーデンなぞ空気のようなものだろう。
埃っぽいが座り心地は悪くない椅子に身を預けて横目でレイヴスを伺うが、この距離に近づいてもまだアーデンに気付いていませんとでも言うようにスクリーンへと顔を向けていた。否、見ている風に装っているのだろう、不自然なまでにアーデンを見ようとはしないくせに、腿の上に置かれた両の手がきゅうと丸められている。化粧っけのない整った顔にプラチナブロンドの長い髪を緩く片側で括り、丈の短いジャケットとタイトスカートにパンプスをはいた姿は地味なロースクールの教師のような出で立ちだが、スカートの前面には大胆に太股の半ばまで覗かせるような深いスリットがあり、いかにも手を差し込んでくださいと言わんばかりに誘う柔らかそうな肉の合わせ目がスリットから覗いている。思わず食い入るように見つめていると、そこで始めてアーデンの存在に気付いたかのようにレイヴスが向こう側へと角度をずらせてスカートのスリットを両手で隠す。その初な生娘のような仕草に不覚にも興奮してしまった。彼女は本当に男を誘うのが巧い。
膨れ上がる欲望のままにまずは右手の甲でそっと露な膝に触れてみる。生肌に見えていたがざらついた感触はストッキングだろうか、ぴくりと震えたものの、それ以上動く気配は無い。ならばと膝の側面から尻の近くまで、柔らかく肉付きの良い太股の形を確かめるようにスカートの上から手の甲を触れるか触れないかの場所で這わせて行く。相手がレイヴスだとわかっていても、悪いことをしているような気分で不思議な緊張感があった。ゆっくりと、いかにも痴漢らしく、最初から慣れ慣れしく触るのでは無く様子を伺うような振りをして何度も手の甲を沿わせていれば次第に唇を噛み締めうつ向く小さな頭。
そ知らぬ顔でスクリーンへと視線を戻し、映画を見ている振りをしながら何度触れても彼女が動かないのを確認した上で、今度は掌で膝の内側へと触れゆっくりと足の合間へと手を差し込んだ。咄嗟に拒むように挟み込まれた掌が柔らかな内腿の感触に包まれて心地よい。味わうようにやわやわと指先で肉を揉み込み、ストッキングの感触を楽しむように爪先に引っ掻けながら肌をなぞると拒絶以外の緊張に内腿が震えるのがよくわかる。さりさりと爪先だけで宥めるように薄い皮膚をくすぐっていると次第にスカートを押さえる手が緩み、アーデンの手を挟む力が弱る。少しずつ円を描くように爪先を沿わせる場所を広げて行くと徐々に膝が開かれ、スリットが広がって行く。常ならば簡単に開かれるその場所を掌の感触だけで開かせるのは思いの外、アーデンの征服欲を擽った。動ける場所が広がり、膝の内側から足の付け根までを焦らすように時間をかけて爪先を滑らせていけばついにスリットが広がる限界を越え、ずり上がるしかなくなったスカート。付け根に近付くほどしっとりと湿った感触になる内腿を丹念に上下に撫でる度に開かれ、露になっていく白い肌が暗い中で眩しい。そうして時間をかけて足の付け根のぎりぎりまで露になって行く様は下手なストリップよりもよっぽどアーデンの下肢に響いた。肩を大きく上下させ、吐息を震わせながらも恥じらうように顔を背けられていれば尚更。「触られるの、気持ち良い?」
そっと顔を寄せて耳元で囁けばぴくりと震えた後に小さく縦に頭が動く。誘うように開かれた場所にはまだ触れず、内腿を撫でて焦らす。
「俺も、気持ち良くして欲しいなあ」
ただスカートの上におかれるだけになった彼女の左手をアーデンの股間へと導き、布を押し上げる場所へと押し付ける。そこは既に固さを帯びていた。なすがままに股間の上に置かれた細い指先が布越しにそっと触れ、恐る恐るといった様子で固い布の皺の山越しにゆっくりと形をたどるもどかしさに、込み上げた熱を吐息に乗せて耳元へと吹き掛ける。
「おちんちん、好き?」
聞けば、先ほどよりもはっきりと頷いた。良い子、とご褒美代わりに髪の合間から除く耳朶にキスを一つ落とし、ウエストボタン一つだけを外したスラックスの下へとレイヴスの手を押し込むと、意味を察した指先が下着の下へと潜り込んでまだ柔らかさのあるアーデンの物に触れては躊躇うように引っ込める。いかにも不慣を装うたどたどしい動きに思わず喉が鳴った。布の上からレイヴスの手を自ら押し付けるようにして捏ね、彼女の手ごと掴んで上下に擦る。数回繰り返せば漸く自発的に細い指先がアーデンを包み込みゆっくりと扱き始めた。
普段よりもよっぽど焦れったいその感触を楽しみながら、漸く彼女の開かれた足の最奥へと指先を辿らせると、そこには想像していた下着の感触はなく、ストッキングの存在すら忘れてしまいそうになるくらいに蜜を溢れさせている場所が露になっていた。ぷっくりと膨れ上がった突起から滴るほどに蜜を溢れさせた肉の合間へと指を辿らせればひくつく入り口から伸びる一本の紐。5cm程の長さの円になったその紐はもう一つの穴からも生えている。以前にも使った事のあるそれが何かなど、聞かなくてもわかる。アーデンはそんな事を命じた覚えは無い。ただ、たまには外で遊ぼうと場所と時間を伝えただけだ。それだけでレイヴスは自ら玩具を咥え込み、少しずり上がれば下着をつけていないことがバレてしまいそうなスカートを履いて治安の悪い夜の街を歩いて来たのだろうか。その危うさと卑猥さにくらくらする。
「ねぇ、これなあに?」
わかっていながらあえて問い、中に入っているものを探るように中心を通るストッキングの縫い目ごと指を押し込むとびくんと肩が跳ね、ぁ、と密やかな喘ぎが耳に触れる。そのままぐいぐいと浅い場所を擦ってやると耐えきれないように掌で口許を覆い必死に声を堪える姿に体温が上がる。
「こんな姿、誰かにバレたら逮捕されちゃうかな。それとも君を犯してくれるかな」
上がる息に細い肩が大きく上下している。知らない男達に手酷く犯される想像でもしたのか、きゅっと眉を寄せながらはしたなく入り口が収縮する。それでも彼女の左手がアーデンのものを絶えず撫で擦っているのが健気と言うべきか、淫乱と呼ぶべきか。
「この辺りはガラの悪いのが多いから、きっと酷い事たくさんされるんだろうね」
入り口からより深くまで指を突き入れながら囁く。口元を掌で覆いながら振られる頭は拒絶しようとしているのか、それとも込み上げるものを耐えようとしているのか。薄い布地に阻まれて爪先だけがくぷぬぷと音を立てて出入りを繰り返していた。次第に収縮するように戦慄く縁を、二本の指で幾度も擦り立ててやれば不意にぷつりと指先に弾ける感触。それと同時に阻むものがなくなった指先がぬるりと奥深くまで飲み込まれる。勢いで、途中で指先にこつりと当たった物をぐっと更に奥へと押し込んでやれば、痙攣するように絡み付く粘膜がアーデンの指をきゅうきゅうと締め付けてレイヴスが達したのを知る。
「~~~っっっ!!!」
声も出せずに固く身を強張らせて震える中を尚も追い立てるように折り曲げた指で擦りあげれば暖かい液体が勢い良く飛び出てアーデンの袖までをも濡らした。
「あーあ、潮まで吹いて…」
痙攣が落ち着くのを待ってから指を引き抜くと手首まで滴る程に濡れていた。独特な匂いが纏わりつくように漂っている。くったりと体を弛緩させてただ荒い息を吐くので精一杯なレイヴスの口許へと濡れた手を差し出し、心得たように差し出された舌の上を滑らせて唇に指を捩じ込む。
「美味しい?自分の味」
アーデンの指も二本も咥えれば一杯になってしまう小さな口内を唾液をかき混ぜるように荒し、しっかりと味を擦り付けてから引き抜く。まとわりついた物まで全て啜りあげて飲み下す従順な姿に股間が疼いた。
「自分だけ気持ち良くなってずるいよね?」
呼吸が整うのを待ってから頭を引き寄せると、そこで漸く、今日初めて視線が合う。すっかりと蕩けた瞳がアーデンを見たあと、ゆっくりと下肢へと滑り落ちた。ただ彼女に握られるだけになっていたモノは熱く脈打つ程に硬さを増している。促すように前を寛げ、下着をずらしてそそり立つ物を露にしてやればゆるりとレイヴスが身を乗り出して唇を寄せていく。初心な女の仮面は剥がれかかっていた。殆ど横に寝そべるような形で先端へと口付けを落とす髪をそっと撫でてやりながら、右手はすっかりずり上がってしまったスカートをウエストに蟠らせ露になった尻を撫でる。指が埋まる程に柔らかい肉を揉みながら、レイヴスが唇と掌で奉仕する心地よさに深い息を吐く。
スクリーンへと視線を戻せば戦争ものなのだろうか、軍人らしき男達が小難しい話を繰り広げている所だった。改めて客席を見渡してもこちらに気付いた人も居ない。座席の影では美しくいやらしい身体をしたレイヴスが尻をまさぐられながら男の性器を夢中で舐めしゃぶっているというのに、映画館は深夜の廃れた空気のままだった。
音を立てないようにと一応気を使っているのか、常よりも控えめに這う舌の感触がくすぐったい。先端から根本、その下の重くなった袋まで丹念に舐められて自然と昂る気持ちを落ち着けるように深呼吸を一つ。そうでもしなければ今すぐレイヴスにぶち込んでやりたいと言う欲求に支配されてしまいそうだ。気をまぎらわせようと彼女の尻から手をずらし、先ほど開けたストッキングの穴から延びた紐をゆっくりと引っ張る。肌を震わせ一瞬の抵抗があった後、ぬるりと紐と繋がった頭を覗かせたのはやはり以前にも使った事のある遠隔操作の出来る玩具だった。卵ほどの大きさで柔らかい素材で出来ており、重く強い振動の割に音がしないこの玩具はレイヴスのお気に入りだったはずだ。今は稼働していないそれを軽く揺すぶるとするりと奥へと飲み込まれて行く。引き留めるように再び引き出しては尻を揺らして飲み込んで行く綱引き。きっと中は玩具を離すまいとうねっているのだろう。次第に引き戻す力が強くなり、腰が揺らめいている。強く引けばその分食い締めるように粘膜が玩具に絡み付いているのが紐越しにも伝わる。アーデンに触れる唇が疎かになり熱い吐息を溢すばかりになっているレイヴスの尻を咎めるように軽く叩くが、ぷるりと衝撃に揺れる肉と、びくびくと身を丸めながら震わせる様子に逆効果だったかと後悔する。そろそろアーデンもこの蟠った熱をどうにかしたい。
寝そべるレイヴスの両腕をそっと掴んで引き摺り上げ、そのまま足の間へと誘導すれば鈍い動作で椅子から滑り降りたレイヴスが地面に膝でにじり寄り、アーデンの目の前でぺたりと腰を下ろす。そのままそっと彼女の頭へと両手を置き換え股間へと近付けようとするがそこで初めて小さな抵抗にあった。どうしたのかと様子を伺えば自分のジャケットのポケットを探った後に差し出されたのは二つのリモコン。見覚えのあるそれは今彼女の中に埋まっている玩具のそれで、使われる事を期待する濡れた瞳がアーデンをそっと伺っていた。
「……上手に出来たらね」
嬉しげに細められる瞳に思わずため息混じりの笑いが漏れる。レイヴスがこういう行為に抵抗が無い所か好んでいることはわかっていたつもりだが、その病的なまでに求める姿にはさも常識有る人間のように彼女を心配する気持ちが込み上げる。こんな安売りするような真似をせず堅実に暮らしていたとしても彼女ならば引く手数多だろう。見目も良く、教養もある。詳しい生い立ちを聞いた事は無いが、ふとした時に現れる仕草や癖を見る限りはそれなりの家で生まれ、きちんと育てられたのでは無いだろうか。
餌をぶら下げられて喜々として先端にかぶりつく姿は最早痴漢される女の姿では無く、自ら男を漁る淫らな生き物だった。めいっぱいに小さな唇を開きゆっくりと口内へとアーデン自身が飲み込まれてゆく心地良さに息を吐く。咥え切れない部分を懸命に手で擦りながら窄めた唇で奉仕する姿にご褒美としてリモコンのスイッチを一つだけ最弱にして入れてやる。
「んんぐっ……っふ、……」
「もっと奥まで飲み込んでくれたらもう一個もスイッチ入れてあげる」
与えられた刺激に身を震わせて動きを止めたレイヴスの耳元へと囁くと、浅い場所で抜き差しされていた性器がゆっくりとさらに奥へと迎え入れられてゆく。人よりは大きいと自負するアーデンの物を根本近くまで飲み込む技術はいつ覚え込まされたのかとふと考えそうになって打ち消す。限界まで開かれた唇が息苦しさに戦慄き、咽そうになるのを堪えて痙攣する喉に包まれて気持ち良い。幾度も喉の奥深い所に先端を擦りつけられて思わず歯を食いしばる。急速に上がる体温に限界が近い事を知り、一度レイヴスを頭を上げさせるととろりと粘度の高い唾液が糸を引いていた。
早く吐き出したくて焦りながらも彼女の目の前でもう一つのリモコンのスイッチも入れてやる。がくんと身体を跳ねさせ、咄嗟にアーデンの腿に顔を押し付けるようにして耐える頭を撫でてから、そっと両手でこめかみを包んで顔を上げさせ直す。唇を噛み締めながらもアーデンを見上げる瞳からぼろりと涙が溢れていた。そのままはち切れそうな程に昂った場所へと引き寄せれば震える吐息を必死に整えてから再び口内に飲み込まれて行く。
「少し、頑張ってね」
一番奥まで飲み込まれ、勝手に拒絶しようと震える喉が収まるまで楽しんでからゆっくりとレイヴスの頭を小刻みに揺らし始める。最初は浅い所だけを、それから徐々に動きを大きくさせて喉の奥まで突き上げて行く。
「んっ、ンぐ、っっんぉ、っぉ、」
必死に喉を開こうとするレイヴスの声が微かに届く。時折咽せながらもアーデンの腿にしがみついて懸命に歯を立てぬように開かれた口内を容赦なく突き上げて行く。びくびくと震えている肩に気遣う余裕も無かった。急速に込み上げる欲望のままに最奥ばかりを狙って突き上げ続ける。
「――ッッ、」
限界まで昂り遂には溢れたものをレイヴスの口内へと吐き出す。体中の血液がその一点から放出されるような快感を奥歯を噛み締めながらレイヴスの舌を捏ねまわし、最後の一滴までを全て彼女の舌の上へと乗せた。ごほ、と咽せながらも最後までアーデンをとらえて離さなかった唇が、アーデンが落ち着くのを待った後に再び奥深くまで飲み込み、ゆっくりと根こそぎ絞り取るように吸い上げて離れて行く。口に含み切れなかった白濁が一筋、口の端から垂れていた。そっとそれを指先で救って唇へと擦り付けてやればぺろりと舐め取られ、そしてぱかりと唇が開き飲み込まずに溜め込まれた精液を見せられる。
「すごく良かったよ。……そのまま、飲み込まないでお口に入れておきな。好きでしょ、ザーメン」
褒めてと言わんばかりの頭を撫でてやれば涙で赤くなった目元が嬉しそうに細められ、こくりと頷く。まだ喉奥を突かれた余韻で小さく咽せながらも味わうように舌で掻き混ぜては唇を舐める淫猥さに、早くもまた勃ってしまいそうだった。
「――そこは冷えるね。おいで」
脇の下へと手を入れれば素直に首に腕をしがみつく身体を引き上げ、また元の椅子へと座らせる。脱げ落ちたヒールが床に転がっていた。そっとウエストを抱き寄せればすっかり初心な振りを止めたレイヴスが素直に肩へとしなだれかかる。その乱れた髪を軽く手で整えてやってから額へと口付けを一つ落とす。上半身だけ見ていれば映画館で恋人に甘えるだけの健全な姿なのに、何食わぬ顔でガムでも噛むように咀嚼されるのはアーデンの精液で、時折開かれる唇を小さな舌先がいやらしく辿っては熱い吐息を漏らす姿がたまらなかった。まだ彼女の中では玩具が二つ、細やかな振動を続けている筈だ。ふと思い出してジャケットのポケットに仕舞い込んだリモコンを操作し、一段階振動を強くしてやると、んんふ、と鼻から抜ける吐息を吐きながら腕の中でレイヴスが撓る。不意を突かれた所為か快感を逃すようにくねる身体をしっかりと抱き寄せると、更に目盛りを押し上げてやりながら右手でレイヴスの口元を覆う。
「――~~んんっっっ」
予想通り、危うく開かれ漏れそうになった声が掌の下で震えている。かくかくと腰を揺する姿は快感を逃そうとしているのか追い求めているのかわからない。アーデンの腕と腿に置かれた指先がしがみつくようにぎゅっと食い込むのが心地よい。
「気持ち良い?好きなだけイっていいからね。でもお口の中のもの、飲み込んじゃダメだよ」
耳朶に唇を押し付けて囁けば面白いようにビクビクと跳ねる。ふる、と逃げるように揺れた顔を掌で抑えつけて薄い耳朶を舐める。跳ねる身体を力尽くで抑えつけ、ぴちゃぴちゃとわざとらしく音を立てて舐めてやればそれだけでレイヴスは震えていた。手探りで左手で彼女のジャケットの前を寛げてやれば露わになるジョーゼットのシャツ。それだけであれば清楚な雰囲気であるのに、当然のように下着をつけていない所為でくっきりと尖った先端を浮き出させている。腹回りはたっぷりと布を余らせているのに乳房だけが収まりきれずにボタンホールを引っ張っていた。
「相変わらず、立派だよねえ」
重力でウエスト付近まで垂れた乳房を下から掌で持ち上げればたぷんと波打つ柔らかな感触。そのまま揺らすだけで液体のようにとろけ、アーデンの手でも余る質量は少し力を入れれば簡単に指が埋まり形を変える。柔らかく包み込まれるこの感触はアーデンの密かな楽しみだ。ころころと水風船を転がすように暫くその心地良さを堪能してから、シャツをつんと押し上げる先端を摘まんで持ち上げる。ぶるぶるとそのまま左右に揺さぶってやれば更に激しく波打つ乳房と、アーデンの肩に後頭部を押し付けるように仰け反り痙攣する身体。ふわりと濃くなる雌の匂い。
「そろそろ、匂いでバレちゃうかもね?自分でもわかるでしょ、すっごく匂うの」
ふすふすと鼻でしか呼吸出来ないレイヴスは酸素が足りなくなってきているようだった。涙を溢れさせる程に蕩けた瞳が朦朧とアーデンを見た後、客席を彷徨う。疎らに覗く起きているかもわからない後頭部はこちらに気付いているのか伺う事は出来ない、だがレイヴスは怯んだように身を竦めては締め付けた玩具に苛まされて喉を鳴らしていた。
「ほら、静かにして。バレちゃうだろ」
罰のように先端を強く指で弾けば一層強く跳ね上がった身体を抑えつけ、何度も繰り返し先端を弾き飛ばす。伝わる振動で胸の肉が揺れ、爪が食い込むほどにアーデンの腿を腕を掴む手が強く縋り付いて来る。痛みですら快感として捉えてしまう身体というのも難儀な物だと他人事のように思いながら押し潰す程に強く先を摘まんで捩じり上げれば腕の中で仰け反る身体。くぐもった悲鳴が掌の内側で弾ける。電撃でも与えられたかのように無理な姿勢で引き攣る身体を少しでも長く味わうように布越しに摘まんだ乳輪を乳房の形が変わる程に引き延ばしながら小刻みに振動を与えてやる。10秒、20秒、時折かくん、と震えながらも硬直していた身体が不意に弛緩してぐたりとアーデンに寄りかかるのを受け止めてから玩具のスイッチも切ってやり、唇を塞いでいた掌を外すと忙しない呼吸に喘ぐ口端から唾液で薄められた精液が零れ落ちていた。喉まで伝うそれを拭って唇へと塗りつけてやってからだらしなく開かれたレイヴスの下肢へと手を伸ばすと、スカートまでもがぐっしょりと濡れて肌にぴたりと張り付いていた。宥めるように内腿を撫で上げてから足の間をゆっくりと指で辿る。隠された部分に滴るものを拭うように掬っては上の方で固く膨れて剥き出しになった場所へと塗り広げると、まだ息も整わない身体がぴくんと震え、ぐいと細い指先がアーデンの腕を掴み押し退けようとする。それでも爪先で薄い皮膚をかりかりと引っ掻いてやればビクビクと全身を波打たせて強張る。イきっぱなしになってさぞ気持ち良いのかと思えば、それでもレイヴスの手は必死にアーデンの手を退けようと押している。珍しい抵抗に一度手を止めて首を傾げた。
「どうしたの。好きでしょ、ここ」
つんと尖った先端をぬるぬると優しく撫でても身体は快感を受け入れてひくつかせる癖に小さく首が振られる。
「こっちが良い?」
ストッキングの穴から女性器へと指を二本差し入れれば驚くほどすんなりと根本まで飲み込まれていとも簡単に玩具をノック出来てしまう。粘膜はぎゅうぎゅうと指に絡み付いて戦慄いているのに、レイヴスはまた首を振る。
「じゃあ、どうしたいの」
男の欲のままに扱われる事を好み、痛みですら快感に変えて喜んで受け入れるレイヴスが此処まではっきりと拒否するのも珍しい。終わらない快感の波に俯いて耐える姿に名残惜しみながらも指を抜いて肩を抱き寄せる。言ってごらん、と目元から溢れる涙を吸い、息が整うのを待つ。
「……こえ、でひゃぅ……」
未だに言われた通りにアーデンの精を含んだ唇からこぼれた不明瞭な言葉に、安心すると共に仄暗い支配欲を満たされるのを感じる。快楽を追い求めて好きに乱れるのでは無く、「声を出すな」「周りにバレるな」と言われたことを忠実に守り抜こうとする献身さがまるでレイヴスがアーデンだけの物にでもなったかのような優越感を与えてくれる。
「もう少し、頑張れるでしょ?」
まだ止めてあげるつもりは無いことを含み囁き、なおも首を振るレイヴスを知らぬ振りで椅子から降りる。邪魔な彼女の足首を掴んで椅子の上へと押し上げても必死に首を振るだけでそれ以上の抵抗はなかった。座面の上で膝を折り曲げた足を限界まで開かせ、飲み込んだ玩具の紐を垂らしてひくつく場所にふぅと息を吹き掛けてやる。
「んんぅ……っっっ」
「ほらちゃんと自分でお口押さえて。聞こえちゃうよ」
不安と期待に瞳を揺らしながらも言われるがまま自ら口許を手で覆うのを確認してからべろりと舌を出し、いつもそこを舐めてやる時のように動かして見せる。怯えるようにふるりとまたレイヴスの首が振られるが視線は食い入るようにアーデンの舌を見ていた。緊張に強張る内腿を背凭れに押し付けるようにぐっと強く開き、ゆっくりと顔を足の合間へと近づけて行く。吐息が触れる程の距離まで近付くだけでレイヴスの息が荒くなっていた。その姿にひそりと笑いながらぱっくりと割れた割れ目を舌先でそっとなぞりあげる。びくんと震える腿の感触を掌で楽しみながら溢れる蜜を舐めとるように幾度も舌から上へと舌先を辿る。最初に開けたストッキングの穴がすっかりと広がってしまっており、時折残った横糸が濡れた肌に食い込んでいた。
「気持ち良い?」
口の動きで言葉を伝えるとこくんと小さく頷く頭に気を良くして飛び出た玩具の紐を歯に挟むとゆっくり顔を引いてゆく。絡み付く粘膜を引きずる重みを感じながら全て引きずり出すと閉じきらない穴がレイヴスの呼吸にあわせて口をはくはくさせていた。玩具を横に置くと顔を押し付けるようにしてべったりと舌の腹で舐めあげればひくつく粘膜の脈動まで感じられるようだった。何度も舌から上へと舌を這わせて溢れる蜜を丹念に味わう。舌先が縁に引っ掛かる度に吸い付いてくるのがまるでキスをしているようだ。反射的に閉じようとする腿を力尽くで開かせじゅうと蜜を啜るようにキスをお返ししてやればびくびくと波打つ身体。柔らかな肌に手形の跡が残りそうな程に力を込めて押さえつけながら何度もキスの雨を振らせてやる。
「~~っっっ……」
唾液と蜜をたっぷりと絡めた舌で固く尖ったものを捏ね回してやればひぅ、と息を飲むような音が頭上から聞こえる。ちらと見上げれば必死に両手で口元を覆い声を押し殺しながらも眉根を寄せてアーデンを見詰める瞳とかち合う。止めてくれと訴えるように懸命に首を振っているが今更止める筈もない。
一度、口内に満たされたものを飲み下し、息を吐く。それから右手の人差し指と中指をそっと穴の中へと差し込み腹側を引っ掻いてやると押さえつけるものが無くなった太股がぺたりとアーデンの頬に当たる。すっかり伝線して生肌を露出させる内腿へと口付けを一つ落としてから再び足の間へと食らいつく。真っ赤に膨れた突起をちゅうちゅうと吸い上げながら舌先で薄い皮膚を舌先で転がし、中をくすぐるように擦ってみれば既にふっくらと膨れているようだった。逃れるようにのたうつ身体を左手一本で抑えつけながらうねり絡みつく粘膜を押しのけるように幾度も指の腹で柔らかく引っ掻いてやると頬に当たる内腿が細かく痙攣しながらぎゅうとアーデンの頭を挟んで行く。それでも尚も粘着質な水音を立てるほどに激しく内壁を擦り上げて強く突起を吸い上げる。
「~~~っっっんんんんぅぅっ」
突き抜けるような細く甲高い悲鳴が上がり、激しい痙攣に硬直する身体が勢い良く潮を吹く。それを口で受け止め全て食らい尽くすようにじゅうじゅうと吸い上げればがくんとまたレイヴスの身体が跳ねてのたうつ。
潮が止まっても中々帰って来れないでいる姿を楽しみながら飲み込まずに口内に溜めた潮を舌で味わい、少し硬直が緩んだ所で立ち上がると口を塞ぐ両手を強引に外して唇を重ねる。すぐに開かれた唇に舌をねじ込み彼女自身の体液を流し込み、縮こまっている舌を絡めながら二人分の体液をかき混ぜてやった。
「ん……っっふ、……んんん」
小さな口の中には収まりきらない量が口の端から溢れ出るのも構わずに、震えながらも差し出される舌を存分に擦り合わせていれば次第にレイヴスの身体の力が抜けて行く。自分の精液の味まで味わう事になってしまったがそれは考えないようにする。最後にちゅ、と音を立てて離れてから、飲んでいいよと許可を与えればこくんこくんと数度に分けて飲み下す音がした。そのまま両腕がアーデンの首に絡み付くのを引き寄せて抱き上げると、膝の上にレイヴスをのせるようにして再び椅子に腰を下ろす。何かを成し遂げたような達成感に満ち溢れていた。
「……あ。流石にバレたみたい。あの人、こっち見てるよ」
客席を見れば、スクリーンでは無くわざわざ振り替えって様子を伺う人影が見えた。ひくんとまだ余韻を引きずる身体が震え、ぎゅうとアーデンにしがみつく。 「どうする?犯してくださいってお願いしに行く?」
揶揄するように耳元で囁いてやれば肩に押し付けられた頭が横に振られた。
「……あーでんがいい……」
ぽつりと微かに聞こえたおねだりに思わず頬が緩む。例えそれが彼女なりの処世術だろうと身に染み付いた男への媚でも構わない。ペニスがついていれば誰でも良い、とでも思っていそうなレイヴスがアーデンを選んだと言う事実が想像以上にアーデンの心を昂らせていた。
「……じゃあ、面倒な事にならないうちに逃げないとね」
歩ける?と聞いてみるがまた首を振られた。流石にここから車を置いた場所までレイヴスを抱えて運ぶのは無理だ。アーデンの腰が死ぬ。だが未だに思い出したように震える身体は自力で歩く事は困難だろう。
さてどうするかーー懐く身体を抱き締めながら一刻も早く車へと辿り着く方法を模索すべく頭を巡らせる。車に戻れたらまずはこの燻っている熱をレイヴスに埋め込むと心に決めながら。
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