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空箱

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3.友情≠愛情

フランシスの家に遊びに来たアントーニョと二人、のんびりとソファに並んで腰掛けて何でも無い会話の最中に不意に重なった視線と落ちた沈黙。それはただ何 気ない偶然だが二人にとっては一つの合図にもなった。一本の糸で繋がれたように引き寄せられる唇が静かに重なり、両腕が相手の体躯を緩やかに拘束する。柔 らかな感触を楽しむように数度啄ばんだ唇に舌を差し伸ばしてやれば薄く開いた合間から濡れた粘膜の中へと迎え入れられて相手の体内への侵入を許される。 ゆったりと、焦らすような緩慢さで硬い歯列をなぞり奥に縮こまった舌先を探り当ててやれば喉を鳴らしながら絡み付いてくる温もり。背を、癖のある後ろ髪を 撫でながらぴったりと隙間無く身体をくっつけて唾液を混ぜあう淫靡な音で空気を揺らしてやれば腕の中の身体は簡単に煽られて下肢を押し付けるように擦り付 けて来る。
浅く、深く、絡み合う舌の根がじんと熱を持ち、漏れる吐息が気だるくなった頃に漸くソファへと優しく押し倒してやれば期待が蟠る股間をぐいと押し付け、
「あ、そういやぁな、」
は、と互いに浅く息を零す合間に突然言葉を紡ぐ唇に再び触れようとしていた動きを止めてフランシスは何?と先を促すように優しく問い返す。
「あんな、この前ロヴィとヤってもーた」
どないしよう。と。覆い被さるフランシスを脚の間に挟んで腕を甘く首筋に絡ませながら突飛な告白をするこの友人に思わずフランシスの力が抜ける。別にする事はするけれど恋人同士という間柄でも無いからお互いの戦歴自慢をする事はあっても嫉妬するような事は無いのだが。
「今言うことないでしょ、ソレ。何で今なの」
「や、だってなんか急に思い出したんやもん。そういやロヴィはちゅー下手やったなぁて」
相変わらず空気を読まないアントーニョの言葉に思わずがっくりと肩へと突っ伏すようにして項垂れたフランシスの髪を暢気に撫でながら我関せずとアントーニョは話を続ける。
「けどなぁ、ほら、ロヴィは一応元子分やん。俺親分やん。あかんやん。」
「何が。」
「俺別にそういうんが目的でロヴィと居ったんちゃうし。」
長年の付き合いにはなるが、未だこの会話のテンポに着いて行けない。話が端的過ぎて全容の予想すら付かない。そもそも突込み所が多すぎる。
「…とりあえず、幾ら優しいおにーさん相手だからってこういうことしてる時に他の男の名前出さない事。これは最低限の礼儀な?わかるか?」
気力で身体を持ち上げて真上から優しく、まるで子供に言い聞かせるように諭してやれば一瞬きょとんと翡翠の瞳を瞬かせた後、ぎこちなく頷いた。ああコレは きっとまったく理解してないでただ頷いただけだ。恐らくやるなと言われた事はやらないだろうが、何故やっちゃ駄目なのか分かっていない顔だ。
「…それと、何で駄目なの。それ目的じゃなかったって言ったって、別に今は国としては対等な関係なんだし、あいつも大きくなったんだから別にいいんじゃいの?」
だが一つに拘っていたら何時まで経っても話が進まない。なるべく話がわかりやすくなるようにと問い掛けてみればアントーニョはそれは思い切りよく首を振った。
「あかんあかん、やってロヴィやで?あんな可愛かったロヴィがそんな、いやあかんよ」
フランシスの努力空しく帰って来る言葉は自己完結された否定ばかりで相談したいのか愚痴を零したいだけなのかすら判断つかない。それなのにいつしかアントーニョの脚はフランシスの下肢に絡まり指先が顎の下を優しく擽るのだ、話をしながら続けろという訴えか、これは。
「じゃあ何でヤったんだよ、拒めばいいじゃないか。」
「かっこよかったんやもん…」
「は?」
「せやからあんまりにもロヴィがかっこええし酒入ってたしかわええし…」
なんだそれはつまりただの惚気か。思わず馬鹿馬鹿しくなったフランシスはまだぶつくさと言い訳を連ねるアントーニョを無視して服を剥き始める。まともに聞 いた俺が馬鹿だった、勝手にしろとばかりに自分も服を脱いで直接肌へと触れる。じんわりと滲むように染み込むフランシスよりも高い体温。柔らかな皮膚の下 には確かな筋肉が着いた身体を確かめるように掌を這わせて行く。
「けどほら、ロヴィならかわええ女の子と幸せになれるんやろなぁ思て。ちょっと意地っ張りやけど素直なええ子やし、ああ見えても優しいトコあるし…」
次第に小さくなって行く言葉、眉根を寄せて何処か不服げな顔をして唸るアントーニョを他所にフランシスの掌は滑らかな腹筋の山を伝い落ちて下肢へと滑り込む。茂みの中にひっそりと熱を滲ませるペニスに触れるとぴくりと震える肌。
「ッ、…なんか、それはそれでおもろない…」
指先で裏筋から袋までを擽るようになぞれば面白い程に素直に身体は反応するのに未だに思考はフランシス以外の男で一杯のアントーニョの様子に不意に、気付 く。気付くというよりは、理解したというのが相応しいかもしれない。今まで博愛主義を誇るフランスすらも敵わないと思わせるような博愛精神、悪く言えば節 操無しのアントーニョが固執するただ一人の男。こうして度々身体を重ねるフランシスですらこんな執着を向けられた事が無い。それをあの男は、かつてただの 属国でしかなかったあの少年だった男は、本人の自覚なしに手に入れてる。
「なぁ、それって……」
思わず言いかけて、やめた。アントーニョに対して愛だの恋だのといった感情は持ち合わせていないが紛れも無くコレは嫉妬だ。何事にも節操無しと無執着の狭間を行き来するアントーニョの唯一を手に入れた、そのことに対しての。
「なん、言いかけて止めんといて、気になるやんか。」
「いやいや、そろそろおにーさんも構ってくれないと拗ねちゃうぞって」
意識をこちらへと引き戻してから強く、手の中の雄を擦ってやれば喉を鳴らして肩を震わせるアントーニョに満足して唇を重ねる。そのまま再び舌を差し込めば 消化不良なのか不服さを残しながらもおずおずと絡みついた舌を弄ぶ。唇を塞いだまま快楽で翻弄してしまえばアントーニョのことだ、すぐに溺れることだろう。



ロヴィーノの感情はわからないがアントーニョの感情は紛れも無くそれだろうが暫くは言ってやるつもりがフランシスに無い。幸せを願わないわけでもないが素 直に喜ぶには自尊心と悪戯心が疼いた。これから先、二人の間でいかに面白おかしく幸せにしてやるかと浮き足立つ心を宥めながら今はただ、目の前の快楽へと フランシスも共に溶けて行った。

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