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配送業アーデン×団地妻(?)レイヴス

※細かい事は気にしたら負け
 チェラム配送  
 アーデンが個人で営む零細配送業者である。ほとんど趣味でやっているような物なので利益は度外視、大手配送業者の下請けとして暇潰し程度に配送をこなしお小遣い程度の金をちまちま稼ぐだけの、あえて金を稼ぐ必要の無いアーデンのごっこ遊びのような物だ。 
 営業日も疎ら、請け負う仕事量も極々少量、そんな適当な運営のチェラム配送だが業者指定の配送依頼を送る依頼主が一つだけある。  
 ルシス団地の最上階、1001号室。  
 その「お得意様」から依頼があると聞いてうきうき集配所へと駆け付ければ荷物は片手で軽々持てるような小さな段ボール、品名には「玩具」とだけ書かれていた。 思わずにやけそうになる口元を隠しながらざっと他の近場の配送を数点請け負ってミニバンで出発する。勿論、1001号室の配送は今日の最後、それが終わればアーデンの本日の営業は全て終了だ。  

 十五時四十七分。 
 十四時から十六時までの配送依頼だったものの、途中の道路工事で迂回した為にギリギリの時間になってしまった。車をあえて駐車場に滑り込ませると弾む心を抑えるようにサイドミラーをのぞき込んで身だしなみのチェックなどしてみる。 それから本日最後の荷物を片手に車を降りてエレベーターへ。足取りがどうしても浮かれているのは仕方ない。 廊下に出てすぐ、一番手前の部屋の扉の前に立って一呼吸、それからインターホンを押すとちゃちな機械音がピンポーンと間延びして響いた。  
「――……はぃ……」  
「チェラム配送です」  
 応答に出たのは若い男の声、いつもならば鳴らしたら飛びつくような勢いですぐ応答があるというのに今日はずいぶんと間が空いたし、何より声が吐息のように掠れて覇気が無い。もしや体調不良などでこの後のお楽しみは無くなってしまうのではないかと不安が過る。たん、たん、と爪先で地面を叩きながら扉が開かれるのを待つもインターホン越しの声以降、しんと静まり返った部屋からは何の音も聞こえない。  
 ピンポーン、もう一度ボタンを押す。  
 今度は先程と同じ時間待っても応答はない、本当に体調不良が悪くて動けなくなっているのでは、と思った途端に扉の向こうから聞こえたガタンという大きな音と細い悲鳴のような男の声。  
「ちょ、奥さん!?大丈夫!?」  
 思わずドアノブを捻ればあっさりと扉は開かれた。  
 見慣れた廊下、その玄関に一歩届かない場所にへたり込んだ裾の長いシャツ一枚だけを纏った男、びくびくと絶えず肩を跳ねさせながら何かを堪えるように身を丸める姿に思わず駆け寄ろうとして、気付く。  
 羽音のように空気を震わせる音、それからふわと鼻に触れる生臭い臭い。そっと近づいて覗き込めば裾の捲れた男の尻から伸びる数本のカラフルなコードとスイッチ。 焦りが一転して高揚へと変貌する。口元がにやけるのを今度は隠しもせずに未だに震える肩へと手を伸ばす。  
「待ちきれなかったの?俺が頑張ってお仕事してる間に一人だけずるくない?」  
ずるりと這うようにして男が動く。ぺたりとアーデンの膝に手をかけてようやく上げられた顔は真っ赤に上気し潤み切った眼から一筋涙が溢れた。  
「……はやく、」  

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