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空箱

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発情期

久しぶりに顔を合わせた彼を、引き摺るようにして攫って、走って。
仕事中だなんだと喚くのを聞かない振りで勝手知ったる彼の私宅へと連れ込んだ。
散々暴れる身体を無理矢理引き摺ってきた所為で息が、荒い。
精一杯抗った彼もそれは同じなのだろう、沈黙した空間に落ちる荒い二つの呼吸を
強引に、重ねた。
今入って来たばかりの扉に身体を押し付けるようにして貼り付けて
引き剥がそうとする手を両手で扉に縫い付けて
重ねた唇を強引に舌で割り開いて口腔内へと侵入を果たす。
呼吸を奪うように貪って、たまにがちりと歯が重なる音を立てるような稚拙な行為。
「い…ッッて…ッ」
漸く手の中に落ちて来たと思った彼は、でも未だ現実世界に留まったままだった。
縦横無尽に暖かな口腔を貪っていた舌に思い切り突き刺さった痛み。
噛まれたという事に気付いたのは痛みに顔を離した時、彼の口の端にも赤が滲んでいたから。
怒りに濡れた瞳が、無言で離せと訴えていた。
きっとこの両手が自由ならばすぐにでも刀を抜いて斬りかかりたいのだろう。
ぞわ、と。不意に背筋が粟立った。
力任せに相手の肩を掴んで扉へと向きあわさせる。
焦りすぎたのか、思い切り扉へと顔からぶつかって痛みを訴える声が聞こえた。
最早脱がしなれた隊服の、ズボンだけ下着事強引に引き摺り下ろして下肢を露にさせる。
優しくしてやりたい、と思う暇も無かった。
思考とは別に身体は淡々と目的を果たす為に動いて行く。
暴れようとする彼の身体を肩で背後から押さえつけて、中途半端にズボンが絡まった足を強引に開かせて、ぴたりと下肢を重ねた。
彼の綺麗な筋肉のついた尻肉の間に納まる布越しの熱情。
触れればもっと深くに潜りたくて自然と尻に擦り付けるように腰が揺れた。
すぐに布越しなのがもどかしくてズボンの前を広げて直接、彼の尻の狭間へと擦り付けた。
耳元に荒い息を吹きかけ、一人で盛って尻に熱を擦り付ける俺は嗚呼なんて滑稽なのだろう。
犬かよ、と小さく吐き捨てた彼の声が僅かに熱を持っていたと思うのは俺が熱くなり過ぎているからだろうか。
もう自分の熱をただ吐き出したいのか、伝えたいのか、注ぎ込みたいのか良く判らない衝動のまま、無理矢理尻肉を左右に掴んで無防備な蕾へと肉棒を突き立てる。
「―――――ッッッ」
乾いた其処は全く受け入れる気配を見せずに侵略者を拒むのを、強引に、力で捻じ伏せた。
痛むのだろうか、悲鳴にもなれなかった引き攣った声が聞こえて、でもそれにも喜悦を感じる俺は何処まで駄目人間なんだろう。
周りの皮膚を巻き込むようにして強引に奥へと突き進む息子はぎちぎちに締め付けられて痛いばかりなのに、その痛さすら心地良く感じる。
奥へと進む度に摩擦熱のような痛みが全身へと伝わり、脳まで蕩けそうだと思った。
もしかしたらとっくに蕩けているのかもしれないけれど。


漸く、全てを彼の体内に収めた頃には二人して汗まみれになっていた。
純粋な快感は全く無くて、ただ痛みだけが先走る行為に彼は最早抵抗する気力も無いようだった。
ぐったりと扉に身体を預ける姿を見て悪い事をしたなぁ、とは思うけれど、今更辞めるつもりは毛頭無い。
くそったれ、と小さく毒吐く姿に欲情してしまうんだから仕方無い。
彼が痛みに喘ぐ度に膨れ上がる情欲にまともな思考能力なんて残っていない。
ただ、彼を、喰らい尽くすまで貪りたいだけ。
ただそれだけなんだ。

お互いに痛みに慣れた頃、漸く少しだけ、腰を揺らしてみる。
引き連れるような痛みは変わらないけれど、性器を締め上げる圧迫感が少しだけ、緩んだ気がした。
それはただの生理現象で、彼自身、意識しての事じゃないのは判っているのに、この行為が許されている気分になって更に腰を揺らした。
「ッ…い、…ッッてぇよ…ッ」
辛そうな声とは裏腹に、痕が付きそうなくらいに確りと彼の腰を掴んで揺さぶれば次第に強張りが解けて馴染んで行く彼の体内。
入り口が裂けたのか、濡れた感触が結合部から玉の方まで伝ってこそばゆい。
ぐちゅずちゅとやがて聞こえ始める水音が鼓膜から精神を犯して彼しか目に入らなくなって行く。
熱い彼の内臓が引き抜く度に縋るように纏わりつき、突き入れれば悦び打ち震えて締め付ける。
求められているのが嬉しくて余計に深く、強く、彼の体内を抉り、かき回してぐちゃぐちゃにして行く。
苦痛の声しか紡がなかった彼の唇が何時の間にか熱に浮かされたような掠れた声を生み出し、抗うばかりだった両腕が扉へとすがり付いて爪を立て、気紛れに手を伸ばしてみればさっきまで無反応だった彼の性器は硬く張り詰めて涙を流していた。
「多串君って……ッは、マゾだよね…」
嘲るように耳元に吹き込んでやればびくんと身体が跳ねて痛いくらいに締め付けられた。
すっかり扉に額を預けて俯いてしまっている彼の表情が見え無いのが残念だけれど、真っ赤に色付いた耳朶が可愛らしかったので噛み付いてやる。
ぁ、なんて色っぽい声出すから益々調子付いて耳朶から首筋まで、思う存分噛んで、舐めて、口付けて痕を残した。
これは、俺のモノ。
俺の獲物。
俺の為に捧げられた生贄。
哀れな生贄は力尽くで犯されて快感を感じ、否定の言葉を紡ぎながらも俺を拒否しきれずに腰を振るのだ。
其処には真撰組副長なんていう肩書きも、俺の知らない過去なんかも関係無い。
お互いが欲し、欲されるから身体を繋いで、思う存分溶け合って、時には強引な手段や暴力なんかも混ざって一つになる。
どうせだったら、男同士でも一つになった証が出来ればいいのに、と思いながら俺は彼の体内を汚した。

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