「な、なんやねんなコレぇ!!?」
アントーニョの部屋に突如として現れたソレは軟体動物のような妙な滑りを帯びて数え切れぬ程に伸びた触手の集合体のような形で部屋を埋め尽くして。うねうねと規則性も無く蠢く触手たちは太さも長さも様々なようで時折とろりと粘液を滴らせて落ちる。
「う、うぇえええ気持ち悪ぅ…」
宛ても無く彷徨う触手の一本がベッドの上に居たアントーニョの爪先へと触れて思わず身を竦める。逃げ出そうにも床の上は触手が埋め尽くしているし、それを無視して歩く勇気がアントーニョには、無い。
だがそうして身を強張らせている合間にも奔放に動き回る触手の一本が今度は頬へとべたりと触れた。それを機に宛ても無く彷徨うだけの触手が皆、ごつごつとした肉腫のような突起を幾つもつけて膨らんだ先端を向けて一斉にアントーニョへと伸びて来る。
「ひ、や、嫌やて離れぇや!!」
必死に抗おうと身を捩り殴りつけ引っぺがしても量には叶わず次第に触手に巻きつかれてゆく身体。ぬるりとした人肌の温かさが身体のそこら中を這う不快感に全身を粟立たせて震え上がった。気持ち悪い、だが不快とも言い切れない、恐怖。一度巻きつかれてしまえば離れぬようにぎゅっと固くなる触手が腕を足をバラバラに拘束されてふわりとベッドから背が浮いた。身を支えるのはいまや体を拘束する触手だけだ。
「…ちょ、もう、ホンマ離してやぁ…ッんぐぅ!?」
思わず漏れる情け無い声上げた唇に他の触手とは先端の形が違う触手が一本、ずるりと入り込む。イソギンチャクのように細く裂き割れた先端が舌に絡みつき中心に開いた孔からごぷりと放たれた粘液が口内を満たす。
「ンッ…んんんー!!!!」
逃れようにも舌を深く捕らえて奥深くまでもぐりこんだ触手は離れ無い。口内に満ちる粘液に苦しさが増すも仰向けになっていれば喉へと自然と流れ、そうして飲み込んでしまった。其の間にも身体を拘束する触手は先端についた肉腫を擦り付けるようにしながら全身の上をぬめりで満たして行く。指先の合間を通って皮膚の薄い太腿の内側を擽り両足の合間をずるりと舐め上げるようにして這う。ぞくりと、不穏な感覚が全身を突き抜ける。
「んぐ…ッん、…んんぅ…ッ」
舌先に絡みつく触手が繊細な動きで持って舌の根を擽り時折孔で引き込むように吸い付かれ甘さを含んだ吐息が鼻から漏れた。なんだか思考がぼーっとしてくる。熱が出た時のように視界が滲んで、熱い。丹念に下肢に粘液を擦り付けていた触手たちが既に半分勃ち上がりはじめていたペニスに絡みつき絶妙な力加減で擦り立てるのに思わず腰が揺れそうになる。
「ぷ、は…ッゃ、なんなん、気持ちえぇ…ッ」
漸く、唇から触手が抜け落ちるととろりと粘液が糸を引いた。思わず追いかけるように熱っぽい視線を向けてしまい、アントーニョは力無く頭を振る。そうしたところで生まれてしまった快感の灯火は打ち消せる物でも無かったが。
肌の上を丁度よい突起が幾つもついた触手が滑りを帯びて無数に這いまわる、心地良さ。すっかり勃ち上がったペニスに絡みつく触手は時折鈴口に細い触手を伸ばして入り口を細やかに擽って行く。
「っふぁ、…ッあ、…ぁかん、て…ッも…ッんぁあっ」
相手が未知の物だとか、そもそも何故こんな事になったのだとか。まともな思考が快感に塗り潰されて行く。全身を侵食する熱にびくびくと身体を震わせながら先を強請るように腰を揺らしてしまう。外側ばかりでなく疼く奥を、まだ触れられていない身体の内側をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて欲しいと人でもない相手に叫びそうになる。
それを察したかのようにゆらりと触手の海から一本、一層太い触手が頭を擡げる。小さな子供の腕ほどもありそうなそれは無数の小指の先ほどの肉腫を貼り付けて見るからに凶悪だ。それが、ゆっくりと下肢へと近付いて行く。
「っひ、や、そんな…ッぁ、おっきい…ッ無理やぁ…ッぁ」
未だかつて無い太さに走る恐怖、逃れようともがいてみても生み出される摩擦に快感が増すばかりで碌な抵抗にもならない。言葉の通じる気配も無い触手はペニスの先端から裏筋を辿るように降りて袋を通り固く膨れた筋をなぞりそうして入り口へと辿り付く。孔を覆ってまだなお余る太さにアントーニョの身体が強張った。
「――っぁああああああああっっっ!」
ゆっくりと丸みを帯びた先端が入り口を広げて行き、そうしてずん、と唐突に奥深くまで一気に突き上げる。身体の中心に太い杭を打ち込まれたような痛みにびくんとアントーニョの背が大きく撓り見開かれた双眸からは大粒の涙が零れ落ちた。だがそれと同時、力任せに凶悪な太さでもって内側を擦り上げられて突き抜ける快感に押し出されるように震えたペニスが盛大に白濁を吐き出す。
「…ッゃ、あッ…ぁあっあ、あんッ…ッ」
余韻に浸る間も痛みに慣れる間も与えられないままゆっくりと律動を始める触手にもはやアントーニョの唇からは意味をなさぬ声を上げるしかなかった。下肢全体を痺れさせるような鈍い痛みと共に力任せに押し開かれた肉壁を幾つもの肉腫がごりごりと擦り上げる快感が無い混ぜになってたまらない。
「あっあ、んぁっ…あっ、あ…ッぁん…ッ」
ずん、ずん、と一突きごとに内臓が押し上げられるような圧迫感、間断なく走る目も眩む程の快感に再び飛び散る白濁。達したことにも気付け無い程に後から後から快感が押し寄せて来る。もはやアントーニョにはまともな理性など残っておらず、ただ只管快感に支配されるしかなかった。
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