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ゼノサポエム

【669】
死にたいと、思った事は無い。
誰かが私を裁く事を渇望していた。
断罪者は白い狂気に呑まれた兄でも、赤い狂気を内に秘める兄でもどちらでもよかった。
それがヒロイズムに酔い痴れた甘えだと気付いた時にはもう既に手遅れで、処分を先延ばしにし続けた代償は余りにも大きすぎた。
全て、自分で壊した。
アルベドに言われなくてもわかってた。
ルベドを守りたかったら僕を処分すべきなんだって。
僕がルベドを守るだなんておこがましいって。
だから、最後に「君たち」の為に出来る事があって嬉しかったんだ。
その為に今まで存在する事を許されてたみたいに思えたから。
でも、本当は、生まれてこなければ良かったのに。
【666】
苦しみを分かち合うだけが全てでは無い。
そう分かっていても全てが終わった今、心に残るのは虚無感だけだ。
鼓動を共に刻んだ片割れも、26年間ずっと離れずに支え合った弟も結局は自分の預かり知らぬモノを抱えて消えてしまった。
リーダーとは、何なのだろうか。
兄とは、何なのだろうか。
サクラも、アルベドも、ニグレドも、皆居なくなってしまった。
何故、自分は守られたのだろう。
そんな価値、自分ですらあると思えなくなっているのに。
アルベドはいつもぴいぴい泣き喚いて五月蠅い事この上ない。
ニグレドはモノ分かりの良い出来た弟だけれど、ふらりと姿が見えなくなったり、かと思えば一人で物思いに耽っていたりする。
俺は泣いたり一人で膝を抱えたりなんてしない。
だって兄だし、リーダーだから。
ちゃんとしなくちゃ。俺が皆を守らなきゃ。
サクラも、アルベドも、ニグレドも、一応、黄色い上の兄達も、皆俺が守ってやる。
そうやって、ずっと、ただ自分の強さを信じていられれば良かったのに。
【667】
果てない生への恐怖。
U-DOと繋がった事による快楽。
切り捨てたくとも脈打ち続ける左胸の鼓動。
胸の奥で軋む「アタタカナオモイデ」
それと同時に思い出される、何故自分だけが切り離されたのかという怒り。
色んな感情が複雑に混ざり合って自分ですら何を望むのか分からなくなっていた。
その場の感情だけで生きていた。
ユーリエフが目覚めてから、初めて、自分の本当の願いに気付いた時には遅かった。
死を乗り越えて力を持った今ならきっと救う事が出来たのに。
二人では無く、三人で生きる道があった筈なのに。
チチオヤだと言う男は僕を「失敗作」だと言う。
ルベドよりももっと兄なのだという出来損ない達は僕たちを「怪物」だと言う。
けれどルベドとニグレドだけ僕を「兄弟」だって言ってくれる。
僕たちは誰にも負けないキズナって奴で結ばれていて、ずっと仲良しなんだ。
二人が居れば寂しく無い。
ちゃんと練習してるから、二人が死んでしまってもきっと大丈夫。
だからそれまでは、ずっと一緒に居て欲しかったのに。
サクラなんて い な くなれ  ば い   い    の      に 

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