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空箱

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夕焼けの国

ぽっかりと床の上で切り取られたオレンジ色。
昼間は生徒で賑わう校舎も、夕暮れ時となればひっそりと静まり返っていた。
明かりもつけず、レオナと、ジャミル、二人きりの教室。
暗闇の中で唯一明るいのは窓から床を射す真っ赤な夕焼けだけ。
「これが、俺の王国だ」
静かに真四角の夕焼けを見下ろすレオナが言った。
ジャミルの腕でも簡単に収まってしまいそうなほどに小さな小さな王国。
それだけが全てだとでも言うようなレオナの顔には、怒りも、悲しみももうなかった。
ただ静かで、凪いでいて、からっぽだった。
それでも、さも大切そうに切り取られた夕焼けを見下ろしているから。
ジャミルが、ぬぅっと無遠慮にオレンジ色の上へと足を乗せる。
まるで踏みつけるような行為にレオナが止める間もなく、オレンジ色の中に踏み入ったジャミルはそのまま小さくしゃがみ込む。
たったそれだけで、ジャミルの影がレオナの王国を黒く塗り潰していた。
「もうここ、俺でいっぱいですね」
そう言ってレオナを見上げて笑ったジャミルの顔が、あまりにも、レオナのすべてを奪うから。

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