※カリジャミ♀とファレレオ♀前提のレオ♀ジャミ♀未満…?
※恋人(?)いるのにパパ活してる倫理観皆無なビッチ達の話
「32、181の76」
「オッサンの気分じゃない」
「26、178の66」
「華奢過ぎだろう、次」
「20……だけどホ別ですね却下で。……ええと23、187、82」
「写真は?」
「先輩、結構好きなタイプなんじゃないですか?」
ようやくスマホから顔を上げてこちらを向いたレオナに送られてきた写真の画面を見せるも、ちらと一目見ただけでパス、と告げて再び手元のスマホへとやる気なく視線が落ちていった。なんとなくそんな気はしていたが、実際に見ればジャミルだって溜め息の一つも吐きたくなる。
「……乗り気じゃないなら、今日は大人しくお兄さんの所に帰ったら良いんじゃないですか?」
すっかり氷が溶けて味の薄まってしまったカフェラテを一口飲み、ジャミルは頬杖をついた。目の前では氷しか残っていないグラスを片手にストローを噛みながらスマホを弄るレオナがううんと肯でも否でもない唸り声を上げている。
ああ、これはもう完全に今日は無しになるやつだ。そもそも最初の指定がゴツくて余裕ある男だった時点で薄々は察していたのだ。ジャミルがSNSに書き込んだ内容に今もなお次々にメッセージが送られている様を一瞥してからスマホの画面を落とす。一度はテーブルの上に置いたが、振動が煩わしいのでソファの上へと投げ出した。
午後の珈琲チェーン店はそれなりに繁盛している。仕事途中で休憩に来たサラリーマンやジャミル達と同じ女子高生、それから良く喋るマダム達の賑やかなお喋りの音で溢れていてジャミル達の会話の内容なぞ誰も気に止めていない。だからと言って大声で吹聴して回りたい内容でも無いが、いくぶんか、ジャミルの口は緩くなっていた。
「お兄さんと喧嘩でもしたんですか」
「してない。私は悪くない」
「ああ、お兄さんが先輩を怒らせたんですね」
「だから今日泊まれる所を探してる」
きっと、レオナが弄るスマホの画面もジャミルと同じようなメッセージがたくさん届いているのだろう。やる気の無い眼差しはその全てをただ流し見しているだけだったが。
「それじゃあ、ナイトさんでしたっけ?タワマン最上階に住んでる人。ゴツくて余裕ある大人って感じだったじゃないですか。誘ってみます?」
「名前が好きじゃない」
「偽名でしょう」
「盛り上がってる時にあの名前呼ばされるの萎える」
「そこは否定しませんけど」
ジャミルがずず、と最後の一口をストローで啜ると味は薄まっているくせに混ざりきっていなかったシロップの酷い甘さが舌に残った。
「なら、ジョーンズさんは?先輩も気に入ってたでしょう?」
「ちんこが物足りない」
「お兄さんと張り合えるサイズはそうそう居ませんよ」
「別にそういう意味じゃない」
「はいはい」
ちらと不機嫌そうなエメラルドに睨まれて大人しく肩を竦めて返す。藪をつついた自覚はある。
「ならどうします?もういっそ二人でホテルでも行きますか?」
「んー……」
「しばらく先輩を一人占め出来てなかったですし。二人でイチャイチャしません?」
「うん……」
音は賛成のようだが顔は完全にノリ気ではない。煮え切らないレオナに付き合わなければいけない義理は無いが、こういう時のレオナはなんだか放っておけなくて、ジャミルは一つ息を吐き出すと再びスマホを手にしてメッセージを眺める。
レオナが求めているのは彼女の兄を思わせる何かを持つ男だろう。素直に家に帰れば求めている兄そのものが手に入るだろうに、何故わざわざ危険を伴う見知らぬ男性を求めるのかはジャミルにはわからない。わからないがジャミルとて一応恋人と呼ぶ相手がいながら一夜の相手を探している身だ。人のことはあまり言えない。
「あ……28、196の88。……友人と二人連れだそうですけど、その分、倍出してくれるって」
「写真は?」
「無いですね。……ただ、いつも女性に痛がられて挿入出来ないほど大きいから、無理そうなら断ってくれって。相当大きいんじゃないですか?」
やっと真っ直ぐにレオナがジャミルを見た。その食い付き方には思わず笑ってしまう。だって、あまりにもそのプロフィールは彼女の兄そのものだ。詳しい数字を聞いたことは無いが、以前会った時の視覚情報と概ね一致している。
「どう思う?」
「実物見てから決めても良いじゃないですか?ホテルは良くわからないから自宅に来てくれ、ですって。結構良いとこ住んでるみたいですし、不慣れなおじさんが初めてイケナイ遊びに手を出す感じっぽくて悪くはないんじゃないかって思ってます」
興味を持ったレオナへとメッセージ画面を見せてやる。テンプレートのようなプロフィールの後に続く、こういう場面では滅多に見ることの無い馬鹿丁寧で長い文章。まるで仕事相手にメッセージを送るかのような堅苦しさは、どんな男が必死に小娘相手に書いたのかジャミルも気になっている。
「…………行ってみるか」
暫く画面とにらめっこして考え込んでいたレオナがふぅ、と息を吐いた。それにはぁいと返事を返して、ジャミルは返信を打ち始めた。
レオナも、ジャミルも、恋人とも言える相手がいる。それでも何故こうして見知らぬ相手に身体を売るような真似をしているのかと問われたら、よくわからないと答えるしかない。二人とも小遣いに困るような家ではないし、家庭環境だって特殊な方ではあるとは思うが非行に走るほど精神を病むかと聞かれたらむしろ恵まれている方だと答えるだろう。
特別な強い感情で持って捌け口を求めているわけでもなければ、これが無ければ生きていけないと追い詰められているわけでもない。でも、なんとなく捨てることは出来ない。この行為が危険を伴うことだって理解しているし、誉められた行動では無いことだって十分わかっている。
おそらく、一番大事なのはレオナとジャミルが一緒に在ることだ。恋でも無ければ友情でも無い。ただ、相手が肉欲に身を任せて喘ぐ姿は好きだと思う。少しでも相手に気持ち良くなって欲しくて、その姿を間近で見ていたくて、共犯者で在りたくて、二人は贄となる男を探す。
この関係をなんと呼べば良いのかも、わからなかった。
たどり着いたのは土地代が高いことで有名な駅に聳え立つマンション。共用玄関のオートロックの暗証番号は事前に伝えられていて、その無用心さが逆に二人の緊張を弛めた。慣れているとは言っても、やはり見知らぬ男の家に初めて向かうのはそれなりに警戒する。行かないのが一番安全だというのはわかっているが。
何台も並んだエレベーターに乗り、期待にか、不安にか、高鳴る鼓動を宥めるようにジャミルがレオナを見上げると、吐息で笑われた後に背を抱かれ、ぎゅうと腕の中に抱き締められる。ちょうど豊満な胸に顔を埋める形になり、その柔らかさを存分に堪能するようにジャミルもレオナの背を抱いた。
「ジャミル」
「はい?」
まるで愛しい人を呼ぶかのような甘やかな低音に誘われて顔を上げれば、ちゅ、と小さな音を立てて唇を啄まれる。
「次は、新しい下着買って二人でホテルに泊まるぞ」
「先輩が選んでくれるんです?」
「金も私が出すからつべこべ文句言わずに着ろよ」
「ふりふりひらひらしたのは嫌ですよ」
「善処はする」
レオナの機嫌も治ったようで、ジャミルの尻をいたずらに揉みながら笑っていた。たまにはジャミルがレオナを一人占めしたいと然り気無く溢した望みを叶えてくれるらしい。もしかしたら、今日の罪滅ぼしなのかもしれない。それでも、適当な男を挟んで快楽に溺れるのも良いが、二人きりでレオナを堪能出来るのは素直に楽しみだった。
ほどなくして目的の階へ静かに到着したエレベーターから降り、離れ離れに数件しか並んでいない扉の一つまでやってきて足を止める。インターホンはジャミルに押させる癖に、扉を開けた相手と一番に相対するように一歩前へと出たレオナの目の前で扉が開く。
「――……は?」
「やあレオナ、待っていたぞ」
現れたのはレオナの兄であり、恋人、とは呼べないものの近しい関係にあるファレナの大きな身体。
「おっ、ジャミルも居るな!」
「えっ…………?」
そしてその背後からひょっこりと現れたのはジャミルの幼馴染みであり、恋人ではないとジャミルは否定しているものの殆どの時間を共に過ごし、身体の関係まであるカリムの呑気な笑顔。
「驚いているということは、私達の正体に気付いたから来た訳では無さそうだね。悲しいな、お前達は私達を裏切り見知らぬ男を相手にその大切な身体を明け渡そうとしていたのか」
「あ、兄貴、ええと……」
「ジャミルも物足りないなら言ってくれたら良かったのにさあ!俺、いっつもジャミルに無理させねーように必死に我慢してたんだぜ!?」
「いや、カリム……そういうわけじゃ……」
驚きと、にこやか過ぎる男二人の圧に、レオナとジャミルは逃げ出すことも出来ずに言葉を濁すことしか出来なかった。
何故二人が此処に。
そもそも何故SNSのアカウントがバレていたのか。
もっと気になるのはいつの間にファレナとカリムは知り合い、仲良くなったんだ。
様々な疑問は浮かぶが現状の打破には一切役に立たない。
「まあ、何はともあれ中へ入ると良い。話はそちらでゆっくり聞こう」
なるほどこれがカリスマ経営者の渾身の笑顔なのかと納得せざるを得ないファレナの笑顔。
今までだって、実際に家を訪ねてみれば明らかに犯罪の匂いがしたり、無事に帰れないような危険な相手という経験は何度かあった。そんな時は叩き込まれている護身術や培った知恵、あとは恵まれた運動神経を駆使して逃げることが出来た。だがこの相手は。どうするのが正しいのだろうか。
それぞれに伸ばされた男の腕に優しく、だが逃す気は一切ない強さで捕らえられるまま、レオナとジャミルは部屋へと引きずり込まれるしかなかった。
[1回]
PR