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空箱

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媚薬

窓一つ無い、真っ白な壁に囲まれた四角い小さな部屋。真ん中にはキングサイズの真っ白なベッドが一つと、横に置かれた大きなテーブルの上に並べられた数えきれない程の薬瓶。
気がついた時にはレオナとジャミルは二人揃ってそのベッドの上にいた。此処に来る前に何をしていたのか、何故こんな場所にいるのかはわからないのに不思議とテーブルの上に並んでいる瓶をレオナが全て飲み干せばこの空間から出られるのだと理解していた。瓶の中身が媚薬であるということも。
明らかに他者による悪意に巻き込まれていると言うのに不安は無かった。この異常な状況にも関わらず、二人に身の危険は無いことも、カリムの心配をしなくても良いことも理解しているからかもしれない。思考を操作する魔法がかけられているのは確かだ。
だが流石に理解しているからとはいえ強要は出来ない。先輩、と控えめに呼び掛ければレオナは辺りをぐるりと観察し、それからジャミルとテーブルの上を険しい顔で見比べた後に盛大に舌打ちをこぼした。
「………どうしましょうか」
「俺が、飲めば良いんだろ」
やはり全てを理解しているらしいレオナが酷く嫌そうな顔をしながらもあっさりとテーブルへと手を伸ばすので、慌てて腕を掴んで引き留める。
「そんな、この量を飲むのは流石に無茶ですよ」
「死ぬような量じゃねえとわかってるからやれと言われてるんだろ」
酷く棘のある声ではあったが、ジャミルが両腕で抑え込んだ手を振り払われる事は無かった。苛立ってはいるものの、この理不尽を舌打ち一つで受け入れたレオナに感じた違和感。ジャミルと同じように訳のわからないまま連れられて来たのだとすれば、この男がこうも簡単に異常な状況を受け入れ、適量を遥かに越えた本数の媚薬を飲めと言われて素直に応じるとは思えない。
「……何故こうなったのかご存知なんですか?」
「……………」
腕は振り払われない。だがレオナはこちらを見ない。無言が全てを物語っていた。
「知ってるんですね」
「……テメェは巻き込まれただけだ。大人しくしてろ」
そう言われて大人しく従うのはどうにも落ち着かないが、レオナが成さねば出れないこの状況ではジャミルに出来ることは何も無い。仕方無く腕を解放すれば嫌な事はさっさと片付けるとばかりにレオナが小瓶を一本手に取り、親指で蓋を押し開けてかぱりと勢い良く飲み干す。男らしい喉仏がごくりとやけに艶かしく上下に動いた。
「……不味い……」
「……確かに凄い匂いですね」
空になった瓶からふわりと甘ったるい匂いが溢れていた。その匂いは確かに何処かで嗅いだ媚薬の匂いと似た物で、これなら全てを飲み干しても命には別状が無いだろうとジャミルも察する。だがこの量ともなればただでは済まないだろう。そこで漸く、何故巻き込まれる明確な理由もないままジャミルが此処にいるのか察する。
「……さしずめ、俺は先輩を慰める役目として呼ばれたんですかね」
「あの陰険野郎の考えなんざ知るかよ。……ああ童貞にはこんな事考えつかねえだろうから主犯はアイツか。うざってえ」
ぶつくさと文句を言いながらも片手で蓋を開けては瓶を空にしていく様は半ば自棄になっているようにも見えた。
「……あの、何か手伝える事があったら何でも言ってくださいね」
「テメェは何も関係ねぇのに巻き込まれただけだって言っただろ。変な気遣いするんじゃねえ、暇なら寝てろ」
そう言ってまた新たな瓶を煽ったレオナはジャミルを見ないまま空にした瓶を足元に投げ捨てていた。早くも二桁に達しそうな数の空き瓶が無造作に転がっている。せっかく為すべき事を見つけたと思ったのにレオナに拒否されてしまっては無理矢理手を出すわけにもいかず、見守る事しか出来ないのが歯痒い。
寝てろと言われた所でジャミルはレオナのように目蓋を閉じればすぐに眠れるタイプでも無く、仕方無く、手持ち無沙汰を誤魔化すように枕を抱えてころりと寝転がってみる。部屋には媚薬の甘い香りに満ちているというのにシーツはひんやりと冷たい。同じベッドの上にいるのに触れる事無くただ眺めているだけというのは初めての事だなと、ふと思った。


かぱかぱと勢い良く瓶を空けていた手が止まったのはそれからすぐの事だった。テーブルの上に残る瓶の数からして三分の一程消費した頃だろうか。次の瓶を掴んだものの、開けるのを躊躇うように手に力が入っていた。レオナの眼がすぅと細められ、ゆっくりと肩で息をしている。
「……先輩」
「………うるせぇ」
口を開くことすら許さないと言わんばかりに唸るような低音。押し殺した声が、レオナの身体の変化を如実に伝えていた。良くみれば肌がうっすらと汗を帯びて濡れている。情事の時のような、艶めいた横顔。それでも頑なにジャミルを見ないまま、掴んだ瓶の蓋を開けると一気に煽る。少しだけその動作が鈍くなっていた。とりつくしまも無い拒絶はレオナの余裕の無さだろうか。
一本、瓶を干す度にレオナの呼吸が荒くなり、堪えるように前屈みにテーブルへと肘をついて身を支える姿は媚薬がしっかりと効果を発揮しているのだと傍目にもわかる。レオナの、自分の不始末は自分でどうにかすると言わんばかりに一人で全て飲み干そうとする意思は尊重してやりたいが、ジャミルが巻き込まれただけの被害者だとしても、そんな状態になっても頑なに頼ろうとはしてくれないのが不満でもある。寮服の上からでもわかるほどに股間を固くしているくせに、今にも獲物に飛び付きたいとでも言うような獰猛な眼をしているくせに、この歳上の男はジャミルに弱味を見せようとしない。
「……せんぱ、」
「さわんな!!!」
ただ少し、こちらを見て欲しいだけだった。気を引こうとそっとレオナの太股に触れた手は、バシンと思いがけない程の強さで払いのけられ驚きに目を見張り固まる。
それはレオナも同じだったようで、ようやくジャミルを見た眼が驚きに見開かれていた。レオナが振り払った癖に、本意では無かったとばかりに狼狽えた瞳がさ迷い、そして深く、眉間に皺を刻みながら気を静めるような細く長い息を吐く。
「…………食い殺されたくなかったら、大人しく、してろ」
まるで苦虫でも噛み潰したかのような声が必死に言い聞かせるのを聞いてしまったらそれ以上ちょっかいをかけようと言う気にはとてもなれなかった。すみません、とつい謝罪を溢せば宥めるように乱雑に頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。熱い掌だった。


それからは、ただ何も考えずにレオナを眺めるだけに留めた。酷く苦しそうではあるが、顔の良い男が必死に溢れそうになる情欲を抑え込む姿は鑑賞に値する。レオナがこんな姿をさらす機会など早々無いだろうし、釣られてジャミルまでもが性欲を引きずり出されかけていることさえ除けばこんな贅沢な見物も無いだろう。そうでも思ってみなければ落ち着かない。
瓶の半分が空になる頃には荒い呼吸に肩を泳がせるようになったレオナは、半開きになった唇は干からびているのに口の端からは唾液なのか媚薬なのかもわからぬ液体を垂れ流し、拭う余裕も無くずっと眉間に皺を寄せていた。虚ろな眼は何処を見ているのかも定かでは無く、最初の勢いは衰え少しずつ機械的に瓶を干して行くのがやっとの様子。少し離れていてもわかる、レオナの熱気。あの熱に触れられる事をどうしても考えてしまい、ジャミルは枕をぎゅうと力一杯に抱き締めて息を吐き出すことしか出来ない。
「ジャミル」
息を潜めてただぼうっとレオナに魅入ってしまっていたジャミルを呼び戻したのは掠れたレオナの声だった。あれ程拒絶していた男から呼ばれてつい期待感に身を起こす。テーブルの上の瓶は、残り僅かになっていた。
「はい」
「俺に、お前のユニーク魔法をかけることは出来るか」
だが返ってきたのは形振り構わずやり遂げようとするレオナの意地。それが寂しくもあり、愛しいとも思う。
「先輩が受け入れてくれたら出来なくもないと、」
「やれ」
ジャミルを見る眼が追い詰められていた。深窓の令嬢でもあるまいし、むしろその欲をぶつけられることを期待すらしているのに反論を許さない勢いのレオナの態度にわけもなく口許が緩む。大事にされていると知るのは悪い気分ではない。
「どんな命令をすれば良いですか?」
「何があろうと此処にあるモン全部飲み干して、その後は薬の効果が切れるまで絶対に目覚めないように寝かし付けろ」
「……仰せのままに」
身動ぐだけでも辛そうなレオナがのっそりとジャミルに向き直る。餌を目の前にした餓えた猛獣のような顔をしているくせに、血の色が無くなるまで拳を握り締めて必死に堪えていた。今すぐ抱き締めてこの身を差し出してやりたい気持ちを押し殺し、ジャミルもレオナに向き直る。
「……絶対、成功するという保証は無いですからね」
「わかってる。はやく」
無駄口を叩く暇などないと急かすようにぐるると威嚇するような唸り声が上がる。ジャミルとてここまで来て今更レオナの意思を曲げさせるつもりは無い。ただ、ジャミルも学園内では指折りの魔法士であるという自負はあるが、レオナも普段は怠惰を極めているが実際は優れた魔法士だ。そう簡単に支配出来るとは思っていない。
部屋一杯に満ちた媚薬の香りに呼び起こされる雑念を振り払うように大きく息を吸い、吐き出す。きちんと姿勢を正して座り、真っ直ぐにレオナを見上げた。
「瞳に写るは、お前の主――」



獣のような荒い呼吸に支配されながらも、瞳に虚ろな赤い光を宿したレオナが最初の頃のような怒涛の勢いで機械的に媚薬を全て飲み干した、という所で一面真っ白だった景色が一変し、気付けば見慣れたレオナの部屋のベッドの上に二人は居た。ふと眼に入った時計が示すのはジャミルがこの部屋に来た時と同じ時刻。いつもの逢瀬の日、約束通りの時間にレオナの部屋を訪ね、ベッドに乗り上がった所であの真っ白な部屋に連れ込まれたのだと思い出す。
匂いも、温度も、通い慣れたレオナの部屋。あの部屋で過ごした時間も無かったことにされているのであればまるで夢を見ていたようだ。
落ち着ける場所に戻って来た事で思わずほっと息を吐きだし、つい気を緩めたのがいけなかった。ジャミルとレオナを繋ぐ魔法の糸のような物がふつりと切れる感覚。それはレオナへの暗示が切れたという事。慌ててレオナへと視線を戻すが、とうに寝ていると思っていた筈なのに横になってなどおらず、それどころか飢えた獣染みた形相で青みの増したエメラルドがジャミルを真っ直ぐに捉えていた。
咄嗟に逃げようとするも獣の瞬発力には敵わず、弾丸のように飛び掛かるレオナに成す術なく捕らえられ、がぶりと布越しの肩に犬歯が食い込む。
「痛っっ……た……!?」
だが、それだけだった。噛み千切られるかと思うような勢いが不意に止まり、ふすふすと歯の間から抑えきれない息を漏らし燃えるような熱い身体がジャミルをがっちりと腕の中に閉じ込めながらも、寸での所で耐えていた。ジャミルの太腿に遠慮なく硬く昂った物が擦り付けられているのに、首に顔を埋めたままそれ以上の事はしないように、決してジャミルを傷つけないようにとギリギリの理性で踏み止まっているかのようだった。
「……レオナ先輩」
呼びかけても返事は無かったが、抗議するように少しだけ肩に食い込む歯が深くなった。せめて抱き締めてやりたくても苦しい程に巻き付いたレオナの両腕がそれを許さない。あれだけの量の媚薬を飲んだのだからよっぽど辛いのだろう、未だに欠片でも理性が残っている方が不思議なくらいだ。そうまでして貫き通したレオナの意地を尊重してやるべきなのだとはわかっている。レオナは決して解放を望んでいない。それでも、こんな熱い身体に包まれてしまってはもうただ目の前で見ている事しか出来ずにいるのは耐え難い。
「……先輩、ごめんなさい」
そっと、ままならない手を下肢へと伸ばし、レオナの硬く熱を持った場所を探る。既に気付かぬ間に達していたのか布越しに触れるだけでぬちりと水音が立ちそうな程に中が濡れていた。
「ぐ、ぅ――っ」
びくびくとジャミルに絡み付く身体が震えて、痛いくらいに抱き締められる。ぐり、と頭と言わず身体と言わず全身でジャミルに擦り付く様はこんな状況だと言うのに幼子のようにも見えた。
「先輩が、俺の為に頑張ってくれてたのもわかってるんです。だから、これは俺の我儘です」
目の前でへたりと伏せられた獣の耳に唇を寄せて食む。薄い縁の感触を味わうように舌を這わせればひくんとレオナの肩が跳ねた。逃れようとするのを許さぬよう追いかけ、柔らかな産毛を濡らし、そっと熱の籠った息を吹き込む。
「俺、先輩に抱かれたいです」


ジャミルの身体を明け渡す事でレオナの苦しみが楽になれば良いと思っていた。普段、焦れったい程に丁寧にジャミルを抱く男であっても、半分理性を失いかけているような今の状況で同じようにジャミルも快感を得る事は無理だと思っていた。気を付けるべきはレオナの無茶で怪我をしないことだが、そもそもそういう行為をする為にこの部屋を訪ねているのだし、その為に準備だってして来てある。正気では無いレオナの体力にどこまで付いていけるかはわからないが、心を無にして時間が過ぎ去るのを待つための心得はそれなりにある。レオナの助けになるのならば多少の苦痛は目を瞑ろうと覚悟を持って誘ったつもりだった。
それなのに、肉に熱を埋められればそれで良いとばかりに尻だけを露出させ、乱れた寮服を絡みつかせたままのジャミルに挿入するほど余裕がない癖に、ジャミルを抱くことに慣れた身体は的確に弱い場所ばかりを狙い逃げることを許さない。気遣いを忘れた、痛みしかもたらさないような下手で乱雑な動きの筈なのにレオナの熱気にあてられた身体は言う事を聞かず、少しでも体力を残す為に溢れそうになる熱から意識を背けたいのに、気付けば首の根を熱い掌に捕まれてシーツに押し付けられ、背後から犯されているだけで気持ち良い。
レオナの飢えた獣の呼吸と、シーツに押し付けられくぐもるジャミルの呻き、それからぐちゃぐちゃにジャミルの腹の中を掻き混ぜる水音が静かな夜の空気に散らかっていた。濡れた肉を打つ音だけがやけにはっきりと鼓膜を打つ。
「ぅあ、………っ」
吐息のような細やかなレオナの喘ぎと、幾度目になるかもわからない吐精に腹が膨れる。もうこれ以上入らないと思う程に注がれたものが泡立って溢れ下着も寮服もぐちゃぐちゃになっているというのに、更に奥深くへと種を植え付けるように最奥まで押し込まれた萎えない熱が内臓を揺さぶり否応無くジャミルを煽る。何も考えずただ身を委ねていれば良いと思っていたはずなのに、レオナの熱に飲み込まれ無いように必死でシーツを握り締め奥歯を噛んで耐えるのが精一杯だった。
は、と浅く息を吐いたレオナが今までずっと埋めたままだったものをずるりと抜く。ぽかりと空いた場所が冷えた気がした。ようやく落ち着いたのかとほっと息を吐き、溢れそうになる熱を堪えようとずっと強ばっていた身体を弛緩させた時を見計らったかのようにぐるりと身体が引っくり返される。随分と久しぶりに見る、レオナの顔。未だに肩で呼吸をしているような有り様ではあったが、先程よりも随分と理性を取り戻したようだった。
「……ひでぇツラ」
がさついた低音が笑う。言われてみれば、汗なのか涙なのか涎なのかもわからないもので顔はぐちゃぐちゃで、肌にべったりと張り付いた髪が邪魔臭い。酸欠気味でぼうっとした意識にひんやりとした夜の部屋の空気が心地好かった。
「……人の事言えた顔ですか?」
言い返せば短く笑ったレオナが乱雑に前髪をかきあげていた。ぐっしょりと汗に濡れた髪が払われて滅多に人目に晒されない額が露になる。普段纏わりつかせている怠惰をかなぐり捨てて溢れ出す野性味のある美しさに腹の奥がきゅうと疼いた。
「俺は、止めたからな」
真っ直ぐに宣言したレオナが無造作に、だが気遣いを思い出した手でジャミルの下肢に絡み付いたままだった衣服を強引に引きずり下ろしてベッドの外に放り捨てるとべしゃりと水分を含んだ重い音が響く。
「俺が、望んだんですよ」
ジャミルの両足が抱えられ、どろどろと飲み込みきれずに白濁を溢れさせる場所に宛がわれた熱はまだ衰える気配もない。近付くレオナの身体を両腕で引き寄せて唇を求めると、低い笑い声と共に噛みつくような勢いで唇が塞がれた。
「あっあ、あ、ゃだ、せんぱ、っあ」
意識が正常に戻りつつあるのなら、その後は何の心配も要らないと思っていた。だが理性を取り戻しつつも薬によって昂った熱を持て余したレオナは一番性質が悪かった。
「てめぇ、が、望んだんだろ……っ」
「や、――ぁっっ」
泣いても喚いても、懇願しても罵詈雑言を投げつけても開き直ったレオナは止まらない。溢れる快感で制御不能になってしまった身体がジャミルの言うことを聞かずにガクガクと跳ねているのに、強引に押さえ付けられなおも腹の内側を擦られる。
「イ、ってる、――ッっイってるからぁっっ」
「そう、かよ」
無意識に逃げようとした身体は強く腰を掴んで引き摺り戻されて奥の柔い場所を貫かれる。せめて暴力的なまでに与え続けられる快感を散らそうと身を捩れば咎めるように弱い場所ばかりをごりごりと抉られて成す術無く昇りつめる事しか出来ない。そうしてジャミルが制御出来ない快感に溺れているのをわかっているくせに、ただ腰を振るだけで満足していた時とは違いレオナはジャミルを嬲る事を楽しんでいた。
「あ、あぅ、待っ……ッふ、ぁ、やら、あっああ」
「大人しく鳴いてろよ、舌噛むぞ」
少しでも休ませて欲しくてレオナを押し返そうと突っ撥ねた両腕はあっさりと手首を捉えられ、そのまま引き寄せられて逆に肌に濡れた陰毛が押し付けられる程に深くまで飲み込まされる。ぐちゅりと重い水音を立てる程にぐるりと中を掻き混ぜられるだけでまた否応なしに高みへと放り出され、快感に強張り仰け反れば待っていたと言わんばかりに胸の先を噛まれて目の前が真っ白になる。
「ひ、――ッっ」
「う、……ぐッッ」
ぎゅうぎゅうと締め付けた熱がまた腹を満たしていた。だが、それを止める事も、逃げる事も、ジャミルには出来ない。もうどこまでが自分の身体なのかもわからないくらいに溶けきっているのに、それよりも熱い塊が休むことを許さずにジャミルを追い立てていた。
「あ、ああっあ、あ、ぁ」
閉じる事さえ忘れられた唇はろくに言葉も紡げず、レオナが一突きする度に意味の無い音が押し出されるばかり。硬く熱い指先が肌をなぞるだけで、胸を分厚い舌で捏ねられるだけで、そのまま歯が食い込むほどに噛まれたってジャミルの身体は気持ち良いとしか認識出来ず、快感の沼底で空気を求めてみっともなく喘ぐことしか出来ない。
「っぁ、あ、あふ、あぁ、あ」
熱に滲む視界の中、未だ獰猛な色をしたエメラルドが楽し気に笑っていた。その瞳はまだまだ食べたり無いと餓えていた。
まだ当分、眠れそうには無かった。

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