忍者ブログ

空箱

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

取説

1.あなたの顔がとても苦手です。不用意に近付けないでください。※でもキスは近付かないと出来ないので接近を許可します。
2.俺のメンタルが荒れてる時に限って珍しくサボらず校内に居るのはやめてください。びっくりします。大人しく昼寝しててください。構うな。
3.恐らく気付いていないのだと思いますが、たまにあなたの尻尾が足に絡みついています。これは不快とかではないのですが、無意識なのだとしたらどうかと思うので一応お知らせしておきます。
4.よそでテンションが下がる出来事があってもあなたの誘いは断れないのでお見苦しい姿を見せるかもしれません。すみません。
此処に来ればそのうち直るのでほっといてください。構ってくれても良いです。たぶん、構ってくれた方が早く直ります。でもほっといてください。
5.あなたの声もとても苦手です。特に、している時に耳元で喋られると無理です。耐えられません。
言葉選びも大変駄目です。何故そこまでピンポイントに苦手な言葉ばかり言えるのか不思議なくらいです。絶対に止めてください。
6.名前を呼ばれると不整脈が起こるので控えてください。命に関わります。たまになら良いです。
7.時々頭を撫でてくれるのは悪くないです。
後ろから抱えられて肩に顎を乗せられるのも嫌いじゃないです。
これからも続けてください。でも肩の上に顎を乗せたまま喋るのは厳禁です。
8.必要以上に優しくしようとするのは止めてください。俺は男なのでそんな簡単に壊れませんし、雑に扱われる方が慣れてます。
王族ならそういうのも教育されているのかもしれませんが、下々の民には不要の気遣いなので止めてください。逆に居心地悪いです。
9.目が覚めたらちゃんと自己申告しろ。寝た振りするな。絶対に言え。狸寝入りするな。
10.して欲しくない事や直して欲しい所はたくさんありますが、あなたの事が嫌いなわけでは無いです。
でも飽きた時は言葉にしないでください。メッセージが送られて来なくなったらちゃんと察するので、そうしてください。
「…………なんスか、これ」
引きちぎったノートの一ページに殴り書かれていた乱雑な、だが元は上手なのだと察せられる細く綺麗な文字を最後まで読み終えて思わずげんなりしながらラギーはレオナを見た。
「どう思う」
「どう、って……」
洗濯物を回収に来たラギーに、部屋に入るなりこの紙を「読め」と押し付けてきたレオナはぱっすんぱっすんと不機嫌そうに尻尾でベッドを叩きながらじっとりとあぐらを掻いて座っていた。いかにも虫の居所が悪いですという威圧感のある凶悪顔。正直関わり合いになりたくない。
ノートを借りた時などに見たモノよりはずいぶんと崩れてはいるが、この字を書いた人は恐らくジャミルだろう。お付き合いしているんだかそれとも爛れた関係なのか詳しい事はよく知らないし、何故この文章が書かれる事になったのかは全くわからないが、近頃この部屋に度々訪れているらしいジャミルからレオナに向けて書かれていたのだとすれば。
「お前の見解が聞きたい」
「見解?」
「率直に言って、俺はアイツに無理を強いてると思うか?」
あ、駄目だこの人。
完全にポンコツだ。
わかってしまえばこの凶悪顔は機嫌が悪いのではなく、ただしょんぼり落ち込んでいるだけなのだと理解して思わず吹き出してしまいそうになるのを咳払いでなんとか誤魔化す。
「えっと、本当に俺の素直な感想を述べさせてもらいたいんスけど、怒らないでくださいよ」
「ああ」
睨むようなエメラルドが真っ直ぐにラギーを見る。そんな真剣な顔をしないで欲しい、こちとらこんなにもあからさまな文章を書いて寄越してくるジャミルと、普段の知性は何処へやら額面通りに言葉を受け取ってしょげてるレオナの恋愛ビギナー達の甘酸っぱさにあちこち痒くなっているのだ。憧れていた筈の先輩と、有能だと思っていた筈の同級生のそんな姿は見たく無かった。
「俺に惚気ないで欲しいっス」
「は?」
「それじゃ、レオナさんおやすみなさい!」
とレオナがきょとんとしている間に叫びながら走ってレオナの部屋から逃げ出す。洗濯物が一枚も回収出来てないがもうそれは今度だ。ジャミルが何のつもりであの文章を書いたのかは知らないがどう考えてもラギーがどうこうレオナに教えるよりもとっとと二人で話し合えという案件だろう。というよりとにかく関わりたくない。巻き込まれたくない。ほっとくと余計に拗れそうな予感もあるが今はまだ現実逃避したい。

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]