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空箱

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おしえてれおなせんぱい

「先輩、一人でする時どうやってるのか、見せてもらえませんか?」
また妙な事を言いだしたこの真面目のように見えて腹黒と思いきや変な所で常識知らずの箱入り従者。レオナの部屋でベッドにジャミルを押し倒し、いざ、という時にこの台詞だ。お前は散々成金親父に股開いてきたんじゃないのか。ベッドマナーは教わっていないのか。むしろそのマナーを知らない初心さが売りだったのか。その数多の変態親父どもを虜にしてきた傾国だと言わんばかりの顔で?嘘だろ。
思う所は多々あれど、表には眉を寄せるだけに留めた。これでも王族、素直なだけでは生きていけない。
「……何故」
「見たことが無いので」
なんとか絞り出した問いはさらりと当たり前の言葉が帰って来た。他人が一人で処理しているところを見たことがある人は滅多にいないだろう。レオナだって他人の現場を見たことは無いし、自分でしているところを見られたことも無いはずだ。多分。
ジャミルが求めているものはわからないが、何が悲しくてわざわざ相手が居るのに右手の世話にならなけらばならないのか。それが楽しみに繋がるならともかく。
と、そこまで脳内で嘆いてから思い付く。
「お前が先に見せてくれるなら考える」
「あ、いえ、あの、俺、やったことないので良くわからなくて」
なるほど。経験が無いからわからないと。だからどうするのか見てみたいと。ようやく話は理解した。だがこの歳で自分で慰めたことが無いという事実はレオナにそれなりの衝撃を与えていた。恥じらいが見えるならともかく、そんな新しい玩具を前にした子供のような期待の顔でねだるものじゃない。今、お前は、これからお前を抱こうとやる気に満ちた男に押し倒されてる所なんだぞと伝えたい所だがうまくジャミルに理解してもらえる自信はなかった。
「何度か自分でやってみようとしたんですけど……気持ち良くなれそうでも途中で飽きちゃって」
「……飽きるくらいなら、必要ねぇってことだろ」
「でも先輩もしたことあるんでしょう?」
「……あるが」
謎の敗北感に思わず口がへの字に歪むのを自覚しながら肯定する。別にジャミルは一人でする暇も無いくらいにモテていたと自慢したいわけでは無いだろう。むしろ乾く暇も無かったのは男性器よりも本来は出口としてしか使わない場所の筈だ。それよりも皆が当たり前のようにしていたことを自分だけが未経験だったという劣等感から教えを請うているだけであって、きっと他意は無い。わかっていてもなんだか負けた気がしてしまうのが悔しい。
「……やり方が知りたいなら、教えてやるよ」
要は、男性器で快感を得て最後までいければ良いのだろう。普段の流れに一手間増えるだけだ。ようやく本来の目的への道筋が見えたようで、唇を重ねながらジャミルの股間へと手を伸ばす、が。
「先輩がやったら気持ち良いのは当たり前でしょう!自分の手でイけるようになりたいんです!」
触れたそばから思いがけない力で身体を押し退けられた。この行き場を失った唇をどうしてくれる。嬉しいことも言われた気がするが、そう思うなら余計なことは考えずに大人しく気持ち良くなっていて欲しい。ご期待通りとろっとろになるまで気持ち良くさせてやるから。
「お手本、見せてもらえたら出来ると思うんですよ」
俺、優秀なので。と言葉にしなくても顔に書いてある。やる気に溢れたジャミルの期待の眼差しが痛い。
珍しいジャミルからのおねだりを叶えてやりたいという感情はある。だがレオナにも一応、羞恥心がある。プレイの一環としてなら吝かでは無いが、こんな夏の自由研究のようなテンションのジャミルの前で平然とソロ活動が出来るかと言われたら答えかねる。
「レオナ先輩、だめですか?」
ここぞとばかりに可愛い後輩の顔で首を傾けるジャミルのあざとさに思わず唸る。そのおねだりが出来て何で自慰も知らないんだ。責任者出てこい。
「…………とりあえず、後でな」
そう言えば嬉しそうに笑うジャミルを直視出来ないまま有耶無耶に唇を重ねる。今日はこのまま自慰の手解きを受けようとする気が無くなるまで存分に気持ち良くなって頂くしかない。そしてそのまま忘れてくれやしないかと願いながら、レオナはやっとジャミルの肌に触れることを許された。

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