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空箱

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墓に骨を埋める

孕む機能もなければ異物を受け入れる作りでも無い臓腑をわざわざ時間と手間を掛けてまで丁寧に慣らしてこじ開け、擦るだけで出るという単純な仕組みで無暗に死地に生命の種子を撒き散らしては殺すこの行為に何の意味があるのだろうか。生物の本能的な営みから外れた歪な行為。自らの手で擦れば五分で終わるのに、まだ死んでもいない子種を埋める墓を選び、丁寧に墓穴を掘り、汗水垂らして腰を振って無駄に吐き出された生命の可能性に蓋をする。
頭の中まで幸せな塵芥を詰め込んだ連中はそれを愛と呼んでいた。愛していればこそ、例えそこに命が産まれなくとも命を注ぎたくなるのだと、それが愛を示す行為なのだと言っていた。
だがレオナには、ただ刹那の快楽を貪るための言い訳にしか思えない。
「……せんぱい」
甘い吐息に呼ばれて瞬く。レオナに跨がり、腹の奥底までじくじくと熱に疼く場所を飲み込んだジャミルがうっすらと笑っていた。呼び出せば気安くレオナに跨がり、勝手に快感を与えてくれる近頃お気に入りの墓。
腹に数えきれない程の死を埋められたジャミルは、愛が無くても快楽を求めて良いのだとレオナに教えてくれた。
「気持ち良いですか?」
濡れた腕が首に絡み付き、ぴたりと胸と胸が重なる。平常時よりも高い体温が肌の境界線までも溶かし、墓の中にレオナごと飲み込んでしまうようだった。
「……ああ」
繋がった場所から引き摺り込まれるような本能的な恐怖はあった。だが暖かな内蔵に包まれ咀嚼される場所は確かに気持ちが良いので、嘘を言ったつもりは無い。
「なら、良かった」
墓穴のようにぱっくりと暗闇の口を開けた瞳が細められ、優しくレオナを穴の底へと手招いていた。一度そこへ飲み込まれてしまえば二度と帰れなくなると本能的に理解しているのに、抗うどころか引き寄せられるようにしてレオナの腕はジャミルの背を掻き抱き唇を重ねる。
墓を内側から暴きたいという欲求が生まれた自分の心に戸惑いつつも、この墓にレオナの名を刻んでやりたいと、何故か強く思った。

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