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空箱

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レオナでいい

熱い泥濘を突き上げれば甘い声で鳴き、れおなせんぱい、とすがる声で差し伸ばされたジャミルの細く骨張った指先。そっとその手に頬を擦り寄せてやればとろりと濡れた黒曜石が満足げに細められた。
「レオナで良い」
「?」
「レオナって呼べ」
「……れおな」
「うん」
「れおな……ぁ」
ねだるままに呼ぶ声に突き動かされて奥を捏ね、首にしがみつくジャミルを欲のままに揺さぶる。知らず腹の底に満ちたなんともむず痒くも幸せな感情に任せて絡まり合い、一つになる行為のなんと豊かな事だろうか。
精も魂も尽き果てる程に貪り、絡まり合ったままシーツに突っ伏すと、れおな、と少し掠れた声に呼ばれた。
「ん?」
「……ふふ、れおな」
「……なんだよ」
大切そうにレオナの名を舌で転がしては幸せそうに笑うジャミルについ、レオナの頬も緩む。あまりにも嬉しそうにレオナを呼ぶものだから、年甲斐も無くただ名を呼び合っては笑い合うなんて事を眠くなるまで続けてしまった。
というのが昨日の話。正確にはまだあれから十時間も経っていない。
それなのに午後の授業が始まる前、たまたま廊下ですれ違ったジャミルが発した第一声は「あ、レオナ先輩」だ。
「……呼び方が違うんじゃねえか?」
「は?……え、そんな、学校で呼ぶわけないでしょう」
「せんぱい、を抜くだけだろうが」
「此処では俺の方が後輩なんですから仕方無いじゃないですか」
「……此処では?」
わかりやすく、しまった、という顔をしたジャミルの手首を掴み、教室へと向かう人の波に逆らって人気の無い方へと引きずっていく。ジャミルはなにやら喚いていたようだが力はレオナの方が上だ。無理矢理にでも引きずり止まるつもりが無い事を察した後は大人しくレオナについてきた。
そうしてたどり着いた校舎端の空き教室。レオナの昼寝場所の一つでもあるそこにジャミルを連れ込み腕の中に抱え込む。大人しく腕に収まってはいるものの、ジャミルはレオナを見なかった。
「……此処なら対等になれるか?」
「学校の中なので駄目です」
「じゃあ何処なら良いんだよ」
「それは……」
はく、と唇が音を紡げずに息を飲む。俯くジャミルの顔はわからないが、耳朶がほんのりと赤い。それさえ見られれば十分だった。唇が性質の悪い笑みに歪んでいる自覚がある。
「じゃあまた今夜、お前が俺を名前だけで呼べる場所に来いよ」

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