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空箱

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無題

賛牙の才能があると言われながらも開花する事無い自分が嫌だった。
戦闘部族である吉良にとって、賛牙の存在は大きい。
今までに居なかった賛牙の可能性を持つ日向にのしかかる期待は過剰と言っても差し支えない程に熱烈だった。
繰り返される訓練と、何も得ずに終える日々。
確実な成長が感じられる剣の稽古とは違う、無から有を無理矢理捻りだすような賛牙としての訓練は期待に応えられない苦しさだとか、無駄な努力をしているような徒労感だとか、果ては何時まで経っても開花しない自分の存在意義の無さだとかマイナスな感情ばかりが胸に溜まる。
小さい頃は未来の賛牙ともてはやした村猫達も、未だ賛牙としての力を目覚めさせる事の出来ない日向に白い目を向けている気すらする。


そんな全てが嫌になって、日向は吉良から逃げ出した。
当然、規律を破れば追手が掛かるだろうし、弱いわけでは無いが特別に強いわけでも無い日向が何処まで逃げ切れるかなどたかが知れている。
それでも、もう耐えきれなかった。賛牙になりたくないわけじゃない、けれどなれないまま吉良の中に留まっていられなかった。
どうせ開花しないならいっそ殺せとすら思った。
自棄にも近い、脱走だった。


夜の闇に乗じて谷を抜け、森を駆け抜けて向かった先は祇沙最大の街、藍閃。
幸いにも道中で追手に出会う事は無かった。
見逃されているのか、単純に運が良かっただけなのかは分からないが街が見える辺りになって漸く日向は足を止め、一息吐く。
何せ吉良以外の集落なぞ行った事も無いのだ。
見た事も無い、滑らかな表面の石の建物やカラフルな色彩、行き交う人々の多さ。
遠巻きに見ても分かる規模の大きさに足が竦んだのは一瞬、ぱし、と両手で頬を叩くと気合いを入れてから日向は街へと足を踏み入れた。


だが勢いよく街へと入ったは良い物の、早速日向は困惑していた。
何故かわからないが通りゆく人々が皆自分を見て眉を潜めているのだ。
吉良の中よりもあからさまなそれに入れたばかりの気合いが早くも抜けて行きそうだ。
色々な部族が集まる街だと聞いていたのだが余所者、吉良の猫は嫌われているのだろうか。
それとも自分の格好に何かおかしい所があるのだろうか。
すっかり沁みついたマイナス思考がぐるぐると頭の中で巡り始めるも、森に引き返すのも逃げるようでプライドが許さない。
せめて、道から外れて屋根の上でも登ろうかと考え始めた時にその猫は現れた。
「…ーぃ…おーい、待ってくれって」
背後から肩を叩かれて思わず尻尾を逆立てて臨戦態勢に入ろうとした日向にその猫はからりと笑って驚かせたならすまん、と謝罪を述べた。
勢いを殺がれたように不審げに顔を顰めながらも日向が構えを解いたのを見計らって猫は日向の耳を指差した。
「それ、本物?」
「は?」
「いやあ、黒い耳と尻尾の猫が居るから追い出してくれなんて言われて来てみたんだけど…なんかそんなに危なさそうじゃないし」
「……どういう事だ?」
日向は話がさっぱり読めずに益々眉間の皺を増やした。
確かに日向の耳も尻尾も黒いが、それが何だと言うのか。
何処か馬鹿にされたような物言いも腹が立つが相手の猫は日向よりも頭一つ分、上背がある上に身体も確りと鍛えられている。
腰に提げられた大剣からしても力のある闘牙だろう。
本気でやり合ったとしても勝てそうには無い、と忌々しく思いながら先を促す。
「説明したいのは山々なんだがー…なんだか人が集まって来ちゃったしなあ、すぐ其処に宿があるから其処で話さないか?」
確かに、周りには二人を取り囲むように、けれど少しの距離を開けて人が集まりつつある。
小さく舌打ちを一つ落として日向は一つ頷いた。


宿は元々その猫が宿泊していた場所のようで、店主らしき男と軽い挨拶を交わした後、ベッドとテーブルと椅子が一つずつあるだけの簡素な部屋へと通された。
椅子に日向が、ベッドに猫が腰を落ち着けるなりそういえば、と猫は切りだした。
「俺は木吉だ。この辺で賞金稼ぎをやってる。」
「…日向。…特に何もやっていない」
お前は?と問うような視線に負けて名乗ったは良い物の、日向には紹介すべき職も無い。
気まり悪く視線を逸らすと、はは、と軽い笑い声が響いた。
「何もやっていない、って…藍閃には職探しに来たのか?見た所、お前さんも闘牙だろう?」
日向の腰に提げられた二対の小刀を顎で指しながら問われて言葉に詰まる。
今までの紆余曲折を説明するのは面倒だし、だからといって明確な目的があって此処に来たわけじゃあ無い。
闘牙と木吉は言ってくれたが、それで食べて行ける程強いとも思って居ない。
「あー…それよりも、さっきの。どういう事だよ。」
結局、話題を変えることで逃げた日向を木吉は余り気にしないようだ。
「そうだった、忘れる所だったな。黒い耳と尻尾ってのはこの辺では不吉の象徴って言われてるんだ。悪魔に呪われた印だ何だって。」
「不吉の象徴、って…黒い耳と尻尾なんざ、吉良には腐る程居るぞ」
「ああ、日向は吉良の出か。あそこの部族って、出不精で有名じゃないか。それがどうして藍閃に?」
結局、話が戻ってしまった。
苛立つよりも先に唖然としてしまって日向は言葉が出てこない。
確かに余り縄張りから外に出ない吉良の民だが出不精は無いだろう、出不精は。
街の猫の視線に漸く納得したが、そうしたらこの好奇心丸出しで目を輝かせている猫は何なんだ、不吉の象徴じゃないのか、日向の黒は。
「ああすまん、こんな綺麗な色した猫を見るの初めてでな、つい興奮した」
日向が固まって居るのを知ってフォローしたつもりだろうがなんだその斬新な攻撃手段は。
日向は特別顔が良いわけでも無いし、色だって吉良にはありふれた黒だ。
そんな褒め方されると誰が予想した。
落ち着き無く尻尾が揺れるのを止められない。顔だってじわじわと熱を持ってきているのを見られなくて思わず机に突っ伏した。
かわいいなあ日向はー、なんて暢気な声が恨めしい。
もうどうしていいのかすら分からないくらいに戸惑っているというのに頭を撫でるな耳に触るな。
言ってやりたい事はあっても言葉にならない。
「なあ、もし良かったら暫く俺と一緒に狩りをしないか?今何もしてないんだろう?」
唐突な誘いに少しだけ顔を上げれば、いつの間にか木吉はテーブルの上に腰を下ろして日向を見下ろしていた。わしゃわしゃと遠慮なく頭を掻き混ぜる手はそのままに、どうだ?と首を傾げて来る。
たまに耳を掠める掌がくすぐったくて耳をぴくぴくさせながら日向は眉を潜める。
「耳と尻尾はマントか何かで隠せば目立たなくなるだろうし…藍閃も初めてなんだろう?わからない事があれば案内してやれるし。悪い誘いじゃないと思うんだが」
悪い誘いじゃないから怪しいんだとは、言わないでおいた。
とりあえず、街に入ってから今までの流れが早過ぎて脳みそが着いて行けない。
何の裏も無いような笑顔を暫く見上げてから、ため息と共に少し考えさせてくれ、と言えば、木吉は嬉しそうに、おう、と応えた。


------

設定とか補足とか妄想とか

パロ元の単語の簡単な説明
猫:パロ元の世界では人の代わりに、人間に猫耳猫尻尾が生えた「猫」という生き物が人間のように暮らしてる
闘牙:戦闘時、前衛的な役割の人。物理的な攻撃とか防御とか。
賛牙:戦闘時、闘牙にチート級の補助魔法を掛けられる人。
   生まれた時には素質の有無がわかり、素質があっても開花しないと使えない。

吉良:余り余所との交流が無く、引きこもり気味な村。黒耳黒尻尾な猫がたくさん居る。
藍閃:多分、この世界で言う東京みたいな所。黒耳黒尻尾な猫はほぼ居ない。
祇沙:多分、この世界で言う日本みたいな括り。

詳しくはwikiとかで調べてみて下さいむしろプレイしてみてください。
随分前にプレイして以来なので、細かい設定とかは間違えているかもしれません。
時間軸は余り考えていません。
虚ろが来る前かもしれないし、ゲームのハッピーエンド後かもしれない。

木吉:闘牙
刹羅生まれの猫。大剣一本で闘う。
茶色の耳とふさふさ尻尾

日向:そのうち賛牙
吉良生まれの猫。双剣で闘う。
賛牙の素質は有る物の、開花せずに燻ってた所を木吉と出会い、才能を開花させる予定。
黒耳黒尻尾。



【悪魔とか】
色のままに行くと
赤司:ラゼル
緑間:フラウド
青峰:カルツ
黄瀬:ヴェルグ
ですが流石に違和感有りまくりなので
紫原:ラゼル
緑間:カルツ
青峰:ヴェルグ
黄瀬:フラウド辺りが妥当??
と此処まで妄想して
ヴェルグ青峰×冥戯今吉って有りじゃないと気付いた。
今吉:冥戯猫
其処まで真面目に邪神信仰してたわけじゃないのに
召喚に応じた青峰を見て一目惚れ。
最終的に青峰の眷族になればいいじゃないhshsprpr
ただ、色通りに
変態コスチュームに身を包んで白ネコちゃんn僕を殺しに来てよvな緑間とか
ずっと鬱な顔で物静かな青峰とか
傍若無人なヴェルグとかも見てみたいですけどね…!
ラゼルな赤司は…正直有りだと思う

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