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空箱

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0721の日

今日は、一日大事な会議をするから。
そんな言い訳一つで普段纏わりついている側近も、身の回りの世話を焼く為に控えている召使も、なにもかも全部部屋の外に追い出して。代わりに小腹を満たせる程度の軽食やフルーツ、一日の喉を潤せるだけの水からアルコールまでたくさん用意させたから、部屋から一歩も出ずとも過ごせるようになっている。重要な事を話し合うからと、こちらから呼ぶまでは何人たりとも扉を開けるな、と国王陛下直々に命令を下し、そうして漸く、一カ月ぶりの国王と宰相の二人だけの休日が始まる。
王の執務室の奥にある王専用の仮眠室は、有事の際に広い城内を移動せずとも生活が出来るようにと一通りの物が揃っている。その滅多に使われないベッドに昼前から縺れ合い、絡み合い、まずはこの一カ月に溜まった物をぶつけあう。噛みつき引っ掻くような荒々しさで痛いくらいに飢えていた腹を満たしたら、少しだけ休憩を挟んだ後に物足りない分を補うようにもう一度。
部屋の外では、国王と宰相がクソ真面目な顔をして真剣に国について熱い議論を交わしていると思われているのだろうに騙す事になるのは悪いとは思うが、こうでもしなければ国を担う二人が真昼間から睦み合う機会なぞ無いに等しい。
真実を誰にも知られて居ないとはさすがに思っていないが、様式美、というのは何処でも必要だった。
枕に頬を預け、腰を抱えられたまま背から圧し掛かる兄の重みを噛み締める。ぴったりと重なる肌が汗で滑り、兄の鍛えられた筋肉の隆起が背中の上で波打っていた。二戦目を終えて、ひとまずの飢えは収まった。髪をかき分け、晒された項を丁寧に舌と唇が愛でるのを受け止めながら、はふ、と息を吐きだす。身の内に埋められたままの塊は力を無くしても存在を主張し、柔らかなそれでゆるゆると内側を撫でられると余韻の残る身体に染み渡るような心地良さを齎した。漏れる吐息を枕に押し付け、蕩けた場所を捏ねられて身の内に宿る熱を煽られる感触に酔う。くふんと知らず甘えるような吐息が漏れて、腹の中ではたっぷり吐き出されたものが泡立ち、卑猥な音を立てていた。
「……は、零れちまう」
とろりと、縁を伝い落ちる感触があった。そろりと伸ばした指先で、足の合間から繋がった場所を辿る。めいっぱいに押し広げられた縁を慰めるようにそっと撫でるだけで、兄が腰を引く度にに掻き出されたものがとろとろと指を伝い、手の甲までを濡らした。気紛れに埋まる兄の物の根元を擽り、溢れた体液を二本の指の腹で拭い集めてから身を捩じり、兄から良く見えるように大きく舌を出して掌を濡らす液体をべったりと舐め取る姿を見せつけてやると、レオナの腹の中でぴくりと大きな物が跳ねていた。笑みを象りながらも食い入るように見つめる兄の視線が心地よい。掌から、手の甲、手首まで垂れ落ちた白濁を、はしたなく伸ばした舌先で追いかけて舐め取り、こくりと飲み下す。まだ濃い、兄の味。二本の指に絡み付いたものは指の合間まで舌を絡ませてから、ずっぽりと根本まで唇の奥に埋めてしゃぶり、一滴たりとも逃さぬように啜る。ゆっくりと唇で絞りあげて、最後に爪先が離れて行く時に、ちゅ、と名残惜しげな水音が響いた。
「……レオナ」
溜め息のように呼ばれ、熱い掌に手首を取られて兄の顔が近付き、唇が触れる、という時だった。
こちらからの音は漏らさないが、外からの音は良く通る魔法をかけられた外からのノックの音と、急ぎ陛下に報告したい事が、と緊張した声が届く。
空気一枚だけを挟んで止まっていた唇が押し付けられ、そうして同時に吐き出された溜め息が混ざりあう。レオナを包み込んでいた温もりが離れてしまい、ひやりと触れた空気の冷たさに身が竦んだ。
「すぐに戻る」
そう言ってもう一度唇を啄まれた後、ずるりとレオナを満たしていたものが抜け落ちてしまうと急に寂しさが募る。仕方ない事とは言え、応えないわけにもいかない。支えを失った身体をシーツに泳がせて身を丸める。兄の残り香を抱き締めていたかった。手早く身だしなみを整える兄をぼんやりと眺めていたら慰めるようにそっと大きな掌に頬を愛しげに撫でられ、そうして国王陛下に戻った背中が足早に去って行ってしまった。
一度扉の向こうに消えた兄が帰って来るのは思いの外、早かった。期待に身を起こしかけたレオナに、だが兄は苦く笑う。
「少し、時間をくれ」
「俺は必要か?」
「いや、私だけで大丈夫だ。休んでいると良い」
レオナの機嫌を取るように頬を撫でられ、そうして唇が重なる。ゆったりと絡み合う舌の温度は温い。離れていた僅かな間に冷えてしまったものを暖めるようにとろりとレオナを溶かして、それなのにもっと先を強請るように差し出した舌はそっと啄まれただけで離れてしまう。
「すまないな」
謝るくらいならそんなもの放り出して自分の傍を離れるなと我儘を言ってやりたい気持ちは、ある。だがそれを言えるだけの若さはもう無かった。ん、と小さく頷いてやれば、ほっとしたように兄は笑い、そうして執務室へと帰って行く。
一人残されたベッドの上。休む、と言っても、体は疲労よりも物足りなさに疼いている。手の届く場所に置かれた瓶を適当に手に取り、直接口をつけて中の液体を喉に流し込むがそれくらいで誤魔化されてくれはしない。代わりに、ほろりとアルコールが臓腑に染みた。
することもなければ、したいこともない。そうしたらレオナに出来ることと言えば眠りの世界へ逃げ込むことくらいしか思い付かない。
羽織り忘れたらしい兄のガウンを手繰り寄せ、顔を埋めて思い切り息を吸い込むと濃い兄の香りに包まれる。ぎゅう、とそれを腕に抱き締めて、溜め息一つでレオナは目を閉じた。
目を覚ましたのはそう遠い時間では無かったが、すっかり体は冷えていた。兄の姿は、無い。時計を見れば一時間ほど寝ていたようだった。予想よりも長い時間一人にさせられた事に、知らず眉間に皺が寄る。
少し、時間をくれと言っていた。
少し、と言うには十分な時間が経った筈だ。
言われた通りに少し待ってやったのだからもう、良いだろう。ただ一人で待つのにはもう飽きた。
気だるい身体を起こし、すっかり汗も乾いた肌に抱き締めていたガウンを羽織る。レオナとて立派な成人男子である筈なのに、ぶかぶかと色んな場所が余ってしまうのに鼻を鳴らす。
ベッドから下り、裾を引きずりながら執務室へと続く扉を開けると、兄は一人デスクに向かって真剣にペンを走らせていた。レオナに気付きもせず、国王陛下の顔で政務に励んでいる姿は殊勝だが、未だに終わる気配が無いのを見れば不満しか感じられない。
そろりと近付き、真正面からデスクへと寄りかかればようやく気付いた兄が顔をあげ、レオナを見ては困ったように笑った。
「……すまない、思ったよりも手間取ってしまった。やっと目処がついたから、」
言い訳が聞きたいわけじゃない。完全にデスクの上に尻を乗せ、ぐるりと向きを変えれば尻やら足の下敷きになった書類がぐしゃりと悲鳴をあげていたが知った事ではない。向かい合い、兄を見下ろす高さから、広い肩へと裸足の足を乗せる。一瞬、呆気に取られたようの兄の瞳が、レオナと、目の前で恥じらい無く開かれ晒された足の間を見比べた後に好色に緩む。肩を踏む足に触れようと足首が捕まれ、唇が寄せられるのを軽く蹴り飛ばしてやった。
「終わるまで、触るんじゃねえよ」
「意地悪を言わないでおくれ。これでも努力したんだ」
懲りもせず足の裏を救い取られ、爪先に、甲にと口付けられる。まるで傅くようなその光景はレオナの心を満たした。請うように肌の上を滑る唇に、爪先で踏みつけれるように押し込めば躊躇い無く口に含まれ、分厚い舌が指の間まで念入りに舐めしゃぶるものだから肌がぞくぞくと粟立つ。親指から小指まで、一本ずつ唾液をまぶし、卑猥な水音を立てながら啜られると本気で強請りたくなってしまう。ぐい、と兄の顔面に足の裏を押し付けて、遠くへと退けるように蹴る。この国の王の顔を足蹴にしても許されるのはきっとレオナだけだろう。無残に足の裏で高い鼻が潰されているというのにふふ、と笑う吐息が足の裏に当たって擽ったかった。
「……終わったら、な」
「……努力するよ」
降参とばかりに兄が両手を上げるのを見届けてから、顔を踏んでいた足を再び肩の上へと乗せる。濡れた感触を拭うようにそっと足で肩から胸元をなぞれば熱を宿した瞳がゆるりと笑い、そうして再び手元へと視線を落としてペンを走らせ始めた。そうしてしまえば結局、暇を持て余すのはレオナだ。自分で兄を払い退けたくせに、レオナを見て居ないのが気に食わない。だがこれ以上邪魔をしていては結局、焦らされるのはレオナでしかない。
思いついた、というよりは、無意識に自分の指を舐めていた。デスクの縁に片手を付いて身体を支えながら、使い慣れた右手の人差し指と中指で唇の薄い皮膚をなぞり、そうっと奥まで差し入れたっぷりの唾液を絡めて濡らす。微かな水音に、手元へと視線を向けたままの兄の耳がぴくりと震えていた。上顎の、奥の方を爪の背で擦れば、気持ち良さは余り無いがどろりと口の中に粘度の高い唾液が溢れる。兄の大きなもので苦しい程に口を満たし、喉の奥まで突き入れられる時の事を思い出すとそれだけで喉が締り、んん、と鼻から期待したような息が零れた。口の端から溢れるままに零れた唾液が手首を濡らし滴る程に存分に濡らした後、はあ、と熱に濡れた息と共に指を唇から抜くと、兄が、見て居た。羽織った物の滑り落ちて腕に引っかかっているだけのガウンを絡ませ、はしたなく大股を開き、政務に励む兄の前で発情するレオナを、飢えた目が見て居た。自然と口角が吊り上がってしまう。
濡れててらてらと光る手を、思わせぶりにゆっくりと足の間へと運べば兄の視線がついてくる。すっかりとペンを動かす手は止まっていた。つい一時間前まで兄を口いっぱいに咥え込み、まだ閉じ切らずにひくつくそこを中指でそっと撫でればこくりと唾を飲む音が響く。
「ん、……」
自分では、触り慣れない場所。縦に割れた場所にそっと指を押し当てれば呼吸をする度に吸い付いて来る感触が面白かった。呼吸に合わせて自分の指を食むそこを爪先でほんの薄く引っ掻くだけでじっとりとした熱を帯びる。期待に浅くなりそうな呼吸をゆっくりと吐き出し、少し力を籠めるだけでするりと指が飲み込まれ、自分の内側の感触を知る。暖かくて、滑っていて、柔らかい。物足りなくてもう一本指を差し入れてももっと太くてたくましい物の味を知るそこはいとも簡単に根本まで深く飲み込んで、指の間を開く余裕すらあった。
「あ、」
とろりと、内側を伝い落ちる感触。それは開かれた穴の縁から溢れて尻の下に敷いた書類を汚した。
「レオナ、……」
押し殺した兄の声は、もう止めろと咎めているのか、もっと続きをと渇望しているのかわからなかった。ただ、レオナだけを求める瞳が疼きを癒してくれた。
「っは、……んん、……」
指で穴を広げたまま、下腹に力を込めていきむとどろりどろりと粘度の高い物が伝い落ちては書類の上に積もる。ヒクつく自分の内側の感触なぞ初めて知った。いきんで、その後は息を吐いて力を抜いて、ゆっくりと交互に繰り返せば面白いくらいに後から後から白濁が溢れて止まらない。二度の行為でどれだけ中を満たしたのかと思わず吐息が笑いに揺れた。
「……レオナ、余り煽るな」
深い溜息のような声が唸る。いつも兄には翻弄されるばかりで、奥歯を噛み締めて堪えるような姿は余り見れるような物じゃない。
「兄貴が、早く終わらせればいいだけだろ」
「あともう少しだから」
「早くしろよ」
ぐるると唸りながら兄が再びペンを走らせ始める。紙を引っ掻くような荒れた音が兄の中に蓄えられた熱量を知らしめるようで思わず唇を舐める。
「……大人しく待っててやるから、左手、貸せよ」
右利きの兄ならば問題無いだろうと強請れば、今にも噛みつきそうな眼をした兄と視線がかち合い、少し逡巡した後に左手が差し出される。
「これ以上、煽るなよ」
釘刺す声からして相当に追い詰められているらしい。がり、と、強すぎる筆圧が今にも紙を破いてしまいそうなのがレオナの頬を緩ませる。
「アンタが早く終わらせないのが、悪い」
「なるほど。これは罰か」
「そうだな」
御納得いただけたようで、とにこりと笑ってやってから、受け取った左手の、掌を上にしてデスクへと押し付ける。手の甲をぴたりとつけたまま、人差し指と、中指を折り曲げ天井を指すような形にしてから一度、その二本をまとめて掴み、太さを確認する。まあ、こんなもんだろう。膝でにじり寄ればデスクに乗っていた書類やら何やらが無造作に落ちるが、そんなものを気にしてやる義理も無い。今書いている書類さえ無事ならば文句はつけられないだろう。
そうして兄の手を跨ぐように膝をついて、尻の真下にある二本の指をしっかりと握って支え、その上へとゆっくりと腰を下ろして行く。れおな、と縋るような声が聞こえたが知らぬふりをした。
「ん、……は、やっぱ、兄貴の指の方が、気持ちぃ……」
太く、骨ばった兄の指を、柔らかいそこはずぶずぶといとも簡単に飲み込み、いとも簡単に根本までを収めて掌の上にぴったりと尻をつけて座る。腰を前後に揺すれば太い関節がごりごりと中を擦って気持ち良い。
兄は、既にレオナを見てはいなかった。指をレオナの中に埋めたまま、何も見ない振りで一心にペンを滑らせていた。ちらと覗いた文章の内容からして、もうそろそろ書き終わるだろう。きっと、あともう少し。もう少し待てば、欲しい物が貰える。
「っふ、……ッぁ、あ、……あ、」
そのくせ、レオナの中の指が、そっと粘膜をなぞるように蠢く。一刻も早く仕事を片付ける為に集中していますと言わんばかりの顔をしながら、レオナの弱い場所を折り曲げた指が撫ぜて反射的に跳ねた身体がまた一つ、何かをデスクから物を落とし、絨毯の上を転がる音がしていた。
「ぁ、あふ、……っぁ」
指先に、間接に、押し当てるように揺れる腰が止まらない。レオナよりもレオナの内側を知り尽くした指がただ前後に動かしていただけで良い場所に当たるように折り曲げられていて、レオナが押し付けるタイミングに合わせて擽られたり、強く捏ねられたりと予測のつかない動きで翻弄する。止まれば容赦なく良い場所ばかりを引っ掻かれ、腰をくねらせればうねる胎が勝手に指を食い締めてレオナを高みへと連れて行こうとする。前後に尻を擦り付けていた動きが、次第に上下に揺れる動きへと変わっていた。兄の、太い関節が入口の薄い皮膚の内側を引っかけるのが好きだった。ぐぽぬぷと卑猥な音を立てながらごつごつとした関節が縁の内側を容赦なく抉り、尻尾の先まで痺れるような快感が走り抜ける。
「っは、……終わったぞ、レオナ」
とん、とサインの後に一度紙にペン先を押し付けた兄が、漸く顔を上げてレオナを見る。その顔は笑っていたが、瞳に宿る熱は人を食い殺そうとでもしているかのようにぎらついていた。今にも喉仏を噛み千切られそうな程の、強い視線にぎゅうぎゅうと中が締って兄の指を食み、ぞくぞくと期待に肌が粟立つ。
「このまま指だけででイかされるのと、腹の奥に種付けされてイくの、どっちがいい?」
滅多に聞かぬ、兄の下品な言葉にぞくぞくが止まらない。そんなもの、勿論答えは決まっていた。

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