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空箱

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おうまさんごっこ

本日三度目ともなれば、跨る足から力を抜くだけでまるで剣を鞘に納めるかのごとく、ずるり、とスムーズに腹の内に熱が収まる。
「……は、……ぁ……」
追い立てられるようにして求めるような飢餓感はもう無い。既に二度も、溢れる程に満たされた身体は倦怠感と心地良さの合間を揺蕩っていた。
それはレオナも同じようで、のんびりとジャミルの足を撫で、やわやわと肉を揉む姿からは急くような気配はない。お互い、ほんの少し足りなかったものをぴったりと分け与えられたような充足感を噛み締めていた。
レオナの腹の上に手を付き、骨盤を前へと倒すだけで埋まる熱が中で擦れ、元に戻せば中を満たしていた物が掻き出されて粘着質な水音を立てる。緩やかに思考が蕩ける心地良さ。ゆらゆらと波間を漂うように揺れて、染み渡るように穏やかな快感に、浸る。
「ぁ、……っふ、……」
とろり、とろり、快感が一滴ずつ、滴るように肌の内側へと溜まってゆく。見下ろしたレオナも煌くエメラルドを蕩けさせてゆったりと息を吐いていた。腹を満たされた豪奢な獣が、満足そうにジャミルを見て居た。柔らかく波打つ髪を張り付かせた頬を撫でれば、薄い皮膚の下に男らしく硬い骨の感触。弓形にエメラルドが歪み、手首を掴まれると掌に頬が擦り付けられ、甘えるようにべろりと掌が舐められる。煽るというよりは、子猫がじゃれつくような、それ。戯れに中指の背を柔らかな唇に押し付けてやるとかぷりと甘く歯が立てられ、関節を飴玉を転がすように舐めしゃぶられてひそりと身体が震えた。
「っん、……は、ぁ……」
戦慄いた腹の奥が咥え込んだ物を食み、濡れた吐息が漏れた。それを面白がるように片手で足を押さえ付けられ、下から捏ね回されると、くちり、ぬちりと水音が響く。反射的に逃げようとしても肌に指が沈む程に押さえ付けるレオナの掌がそれを許さない。
「あ、……ッあ、……ッん、」
動きは決して激しくはない。だがとろとろに蕩けた脆い場所を馴染んだ形が良いように撫ぜるだけで、すっかり慣らされた身体は勝手に快感を拾い集めてジャミルの中を満たしてしまう。まだ、もう少しこの波間を揺蕩っていたいのに。
「ん、んん……ッふ、……」
目についたのは、レオナのこめかみから垂らされた三つ編み。汗を吸い、重みを増したそれを指先で掬い取って、抗議のように軽く引く。ぴん、と三つ編みが直線に伸びて、痛みにかレオナの顔が歪み、そして動きが止まる。良かった。溢れそうな程に蟠った熱を、ほっと吐き出す息に乗せて逃した。
レオナは何も言わなかった。ただ先程まで高みから見守るような笑みを浮かべていた顔が、少しだけ変わっていた。目を眇め、咎めるような、面白がるような、うっそりとした笑み。自分の顔の良さを存分に輝かせるそれが面白く無くて、ついもう一度、先程よりも少しだけ強く三つ編みを引く。
「っっんぁ、……ッっ」
引っ張った突端に、ぐっと下から突き上げられて思わぬ声がこぼれた。急に与えられた物に脈が五月蠅い程に早くなる。だが、一度だけだった。まるで何事も無かったかのようにジャミルの足から尻までの肌を撫で、ジャミルを見て、笑っていた。その愉悦を滲ませたエメラルドを暫し見詰め、そして察する。
「……っぁ、……」
確かめるように緩く三つ編みを引けば、ゆるりと奥を突かれた。強く引けば、その分強く突き上げられ、ただ三つ編みを揺らすだけならば、そっと中を捏ねられる。
「っふ、は……ッ!」
思わず笑ってしまう。子供染みた、余りにも馬鹿馬鹿しい遊び。だがそういうのも嫌いでは無い。この男と仄かな甘さを共有する行為は、温もりだけでは満たされない何かを暖かくする。
それならば、ともう一本の三つ編みも緩く手に取り、レオナを見下ろす。満足気に笑うレオナは何も言わず、ただ両手でしっかりとジャミルの尻を掴み直した。
「っん、……っふふ、……ッ」
ゆるゆると弛ませた三つ編みを揺すれば、呼応するように掴まれた尻を揺すられてくちくちと水音が立つ。気持ち良いのもあるが、面白い。合間にぴん、と軽く三つ編みを引けばその分ゆるりと下から突き上げられ、手を止めればレオナも、止まる。
まるで乗馬だ。三つ編みを手綱代わりにレオナを操っている。馬を鞭打つように、手首のスナップを聞かせて三つ編みをぺしぺしと打ち付ければ心地良く突き上げて応えられる。
「あっ、あふ、あ……ふふ、っふぁ、」
ぱちゅぱちゅと打ち付けられる度に水音が響き、奥に当たる度に小波のように広がる快感のままに身を躍らせる。並々と注がれた快感が、溢れる寸前で辛うじて表面張力で支えられている、そんなぎりぎりの感覚を楽しみながら三つ編みを振るう。
「っあ、あ、あ、っあ、あ」
絶えず与えられる快感に酔い痴れ、三つ編みを振る手が止まってしまってもレオナは止まらなかった。尻に指先を食い込ませる程に掴み、広げた場所に容赦なく熱が叩きつけられてゆく。
「っゃ、あう、あ……っあ、あ」
込み上げる物に浮き上がる尻ががつがつと掘られ、否応無く高められて行く。三つ編みでは頼りなくて、レオナの胸元に手をついて呼吸を掌で感じながら、与えられる快感に抗うことなく身を委ねる。
「ぁ、あ、――……ッッッ!!」
ぞわりと膨れ上がった物が、遂に溢れて流れ出す。きゅう、と背が撓り、収縮する胎の中でレオナもまた上り詰め、熱い物が注がれている感覚にこれ以上ないくらい、満たされる。塗り付けるようになおも緩やかに中を擦られると引き摺る余韻が長引く。とろとろと溢れた快感が幾筋も表面を伝い落ちていくような、穏やかな絶頂。
「――……は……」
思考が痺れるような快感を噛み締め、やがて弛緩する身体。心地良い疲労感に包まれぺたりとレオナの上に寝そべればゆるりと抱き締められ、頭を撫でられた。先程まで尻を掴む荒々しさとは違いその手つきは優しい。
荒い呼吸に上下する胸が波のようで、ゆらりゆらり、揺れながらレオナの肩に頬を預けて懐く。まだ、なんとなく離れがたかった。
「――……腰が、死ぬ」
それなのに、余韻もへったくれもない感想をレオナが言う物だから、思わずジャミルは吹き出してしまいながらレオナの三つ編みを強く引っ張った。

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