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空箱

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兄と弟、それから知らない人

腹の奥底に叩きつけられる熱にふるりと肌が震える。肉体的な快感、というよりも、精神的に満たされて溢れる幸福感を感じながら、覆い被さる兄の頭を掻き抱いて唇を求める。
「ん、……」
求めるままに与えられる口付けは、兄の猛りを伝えるように荒く、激しい。吐き出してなお力を失わない物が腹の中を捏ね、逃れる隙が無いくらいに体重をかけて押し潰されて奥の奥までいっぱいに満たされる。
「ん……ッふぁ、あ……」
気持ち良い。けれど、何処か物足りない。不満な訳では無いが、十年以上も同じ相手と身体を重ねていればかつてのような没入感が失われるのも仕方が無い事なのだろう。いわゆる、マンネリと言うやつだ。
兄も、きっとそれは感じているのだろう。レオナを見下ろす瞳は飢えを露わに煌いているのに、今一歩、このまま惰性のように続きをすることに迷っている。
簡単に刺激を得るというのであれば縛ったり、叩いたり、SMめいたプレイでもすれば良いかと思うが、なんとなく違う気がする。痛いのは嫌いじゃないが、このまましてもこの何とも言えない不燃焼感は拭えないと思う。
何か、別の物。二人きりで完結しない、新しい何か。
例えば、他人の目がある場所、とか。



そうして二人、深夜の街へと繰り出す。出掛けるというのにシャワーを浴びるどころか行為の匂いを纏わりつかせたまま、中に吐き出されたものを零さないようにと柔らかいが無機質な玩具を栓の代わりに押し込まれ、兄の気紛れで振動と停止を繰り返すそれに弄ばれて移動の車の中でも散々鳴かされ冷める間も無い。車を運転する兄は玩具一つにレオナを任せたきりでろくに構ってくれず、耐え切れずに二度ほど道端に車を止めさせたが、いくら強請っても宥めるようにじっとりと汗に濡れた肌を撫で、啄むようなキスをくれるばかりで決定的な物はくれない。それならば蕩け切った胎を揺さぶる玩具に身を委ねようとすればあっさりとスイッチが切られ、もどかしい所で足踏みをさせられる。自分だって余裕ぶった顔で運転するその股間を硬くさせている癖に、レオナに触らせてすらくれない。早く身の内の熱を吐き出したくてたまらないのに、大きく熱い掌に顎の下から耳朶までを撫ぜられ、子供だましのように触れるだけの口付けを頬にこめかみに与えられながら、「我慢出来るね?」とただ微笑まれるだけでぐっと奥歯を噛み締めて大人しく耐えようとしてしまうのだから、我ながらよく調教されている。
こういう時の兄は意地が悪い。
けれど、言う通りにしていれば目が眩む程の快感を齎してくれる事も、知っている。
伊達に長年、血の繋がった兄弟でありながらも体を重ねて来たわけでは無い。
レオナに出来るのは、ただ助手席で身を丸めてもどかしい刺激に切なく鳴く事だけだった。



静まり返った夜の街にぽつりと輝くネオンサイン。レオナ行きつけの、兄も数度は共に来た事のあるナイトクラブ。
もはや駐車場から店に行くだけの距離でも碌に足腰の立たないレオナは半ば兄に引き摺られるようにして歩く。緩やかに中で震える玩具が足を動かす度に小波のような快感を呼び起こしてたまらない。腰を支える兄の手だけがレオナを歩かせていた。それが無ければ今すぐこの場に座り込んで腰を振って気持ち良くなろうとするだろう。深夜の街に人の姿など無い。今すぐ此処で兄をアスファルトの地面に組み敷き、獣のように交わったって構いやしないのでは無いかとすら思う。
引き摺られ、なんとか辿り着いた扉を抜ければ見慣れた門番代わりの店員。レオナと、兄とを見比べた後に下世話な笑みを浮かべていた。何やらそのまま兄と話し込んでいたようだったが、店内の薄暗く、爆音と光に支配された空気に包まれてしまうともう今まで我慢していた物が全て吹き飛んで、早く、欲しかった。こんな、ただ次第に麻痺してしまうような無機質な振動をくれる玩具なんかではなく、兄の熱を感じたかった。入口で足を止める兄をどうにかしたくて、その股間へと手を伸ばす。暗い店内ではわからないだろうと堂々としているが、そこがスラックスのファスナーを押し上げているのは知っている。触れて、しっかりと硬さを帯びているのを確認してからファスナーを下ろそうと、して。
「――ッっひぁ、あ!」
ヴ、と今までずっと静かに細かな振動を伝えていただけの玩具が暴れ出す。レオナの内側の良い場所をもみくちゃに掻き混ぜて、叩きつけられて、ずっと溢れる一歩手前の熱でぐつぐつと煮えていた身体があっさりと上り詰めて膝から力が抜ける。
「――~~っっっっっ!!!!」
上げた筈の声は音にもならなかった。ぎゅうと収縮する身体の全てが玩具の振動で揺す振られているみたいに気持ち良い。崩れ落ちた身体が床に落ちる衝撃は来ず、代わりにふわりと重力に逆らって宙に浮く身体。兄に抱え上げられたのだと気付いたのは目の前に兄の首があったからで、上り詰めてなお動きを止めない玩具に翻弄され降りてこれない身体で兄にしがみつく。
「っふ……――ぅぐ、……ぅ……ッッ」
我慢させられた分とでも言うように、長く、果ての無い快感は、やがて不意に玩具のスイッチが切れた事でようやく終わりを見せ、急激に足りなくなった酸素を取り戻すように大きく肩を上下させながら喘ぐ。
「……頑張ったな」
ゆるりと笑う、兄の声。どこかに腰を下ろした気配を察して顔を上げれば、いつものソファに居た。カウンターからほど近く、こちらからはフロアが程よく見える物の、外からは置かれた観葉植物の影になり見えづらい、ボックス席。散々焦らしておきながら最後まで玩具に投げっぱなしの兄に苛立ちを覚えて首筋へと歯を立てる。
「こら、あまり痕をつけるな。……それともお仕置きが欲しい気分なのか?」
がぶがぶと容赦なく噛み付いてやっていたが、その言葉に渋々動きを止める。そういうのも嫌いでは無いが、今はとりあえず疲労感の方が強い。一度、休みたかった。
兄の膝の上に抱えられていたところから下りると、少し動くだけでもレオナのスラックスの中がぐちゃぬちゃと濡れた音を立てて不快であり、それと同時に羞恥心を擽る。横に並ぶように座り直すとすかさず腰を片腕で抱かれ、顔を寄せられるままに唇を重ねる。触れる兄の吐息が、荒い。そっと指先を兄の胸へと当てればどくどくと早い鼓動を感じる。そこからゆっくりと布越しに筋肉の溝を辿り、滑らせた指先が辿り着く場所。固く布を押し上げる熱を掌で撫でれば口付けの合間に熱い吐息が吹き込まれる。
「兄貴も辛いんじゃないか。……舐めてやろうか」
正直な所、口での奉仕はあまり得意では無い。女相手にならともかく、男のそれを舐めるのは少しばかり抵抗がある。それでも、散々兄に焦らされ弄ばれたせいか何処か被虐的な気分だった。兄が命じるのならば、その不快感を抱き締めて気持ち良くなれる気がする。
「珍しいね。それなら、お願いしようかな」
そう言って目尻に一つキスを受け止め、ずるずるとソファの上に横ばいになって兄の股間へと顔を埋める。布越しに鼻を押し付けるだけでも香る熱の籠った雄の匂い。兄が自らベルトを緩めるのに合わせて布を寛げ、押し退け、外へ引きずり出した熱がぶるりと跳ねてレオナの頬を叩いた。
「っは、良くもこんなガチガチで涼しい顔してやがる」
「職業病だろうな」
「仕事中も勃起してんのかよ」
「お前を思い出すと、つい、ね」
「だらしねぇな」
軽口に笑い、それから先端に吸い付く。体液が滲むそこはしょっぱかった。以前誰かに舐められて気持ちが良かった時の手管を思い出しながら太く反り返った幹に舌の腹でべったりと唾液を塗りつけて行く。浮かぶ血管の溝まで舌先でなぞり、余すところ無く舐め濡らしてやれば熱い溜め息が聞こえ、そっと頭を撫でられる。それから、レオナの背中からスラックスの下へと潜り込む掌。
「ん、……んん……」
狭い布地を掻き分け尻を鷲掴んだ大きな掌が肉を揉む。指先が弛緩した肉に埋まる程に強く、掴まれると込み上げる期待で喉が鳴る。そういう風に、躾けられていた。長い指先が尻から生えた玩具の先をつつくだけで中が捏ねられて粘着質な水音が聞こえてきそうだった。片手で兄のものを支えて舐めしゃぶりながら、片手で自分のベルトを緩め、前を寛げてやれば余裕の出来た掌がさらに奥深くまで潜り込んで玩具の先をつまむ。それと同時に再び玩具が震え始めた。
「んぁ、……ん、んむぅ……」
負けじと兄の物を口に迎え入れるが、口が大きい方だと自負するレオナでも咥えきれない程に、兄の物は大きい。慣れている人のように喉の置くまで咥えてやりたい所だが、不慣れなレオナでは先端だけでも口の中がいっぱいになってじわじわと唾液が滲む。
「っふ、んん、……っふ」
それなのに兄の手は掴んだ玩具をゆっくりと引きずり出して行く。背中側はつるりとしているが、腹側には大きな括れのついた玩具が細やかな振動と共に内側から良い場所を容赦無く抉り、ひくりと、息が詰まる。
「舐めてくれるんだろう?その程度では私はイけないぞ」
揶揄するような声に反論したくとも、口が塞がっていては何も言えない。むせないように、慎重に喉を開いてゆっくりと喉の奥深くまで兄の物を飲み込んで行くと、ぞりぞりと上顎を擦られて気持ち良いような気もするが、息苦しさに涙が滲む。
一度、息を吸おうと逃れようと頭を上げようとするも、突然上から頭を押さえつけられ、半分まで抜けかけていた玩具が一気に奥まで押し込まれた。
「っふ、~~……ぅぐうっっっ」
とにかく歯を立てないようにするだけで精一杯だった。ごり、と強く内側を抉られ身体ががくがくと跳ねるのを止められない。苦しくて、逃れたいのに頭を押さえつける力は一度緩んだかと思えばまたぐっと再び喉の深い場所にまで兄の物を押し込まれる。
「っぐ、……っぉご、っお、んぶ……っ」
それどころか髪を掴まれ、良いように上下に揺さぶられる。苦しさに涙がボロボロと溢れ、鼻まで詰まるものだからどうやったら呼吸が出来るのかすらわからない。そのくせ、尻に埋められた玩具は的確にレオナの弱いところにその振動を押し付けていて、快感に引きつる身体では強く玩具を締め付ける事しか出来なかった。
苦しくて、気持ち良くて、辛くて、満たされて、意識が白く塗り潰される寸前にようやく口の中からずるりと兄の物が抜け落ち、そうして顔にどろりと熱いものが掛けられる。
「ーー……ぁ、……っっ」
顔に兄の精液が掛けられたのだと、気付いた時にはレオナも達していた。射精を伴わず、ただ脳がどろりと溶けて快感に塗り潰されるような、長い長いそれ。ひきつった喉は悲鳴すら上げられず、がくがくと身体が跳ねるままに快感に満たされて、溢れる。



そうして、上り詰めた身体が元の高さまで降りてくれば、残るのは倦怠感と、荒い呼吸、それからもはやどうすれば消えるのかわからない、身体の奥でじくじくと疼くように燃える、熱。吐き出せばすっきりする熱とは違い、何度達しても、腹の中を溢れる程に満たしてもらっても尽きぬ事の無い欲。こうなってしまったらもうレオナにはどうやって鎮めれば良いのかわからない。きっと、抱き潰されて意識を失うように眠る事でしか、この飢えからは逃れられない。レオナ一人では、どうすることも出来ない。
助けを求めるように、兄を見上げる。涙なのか鼻水なのかそれとも兄の精液なのか、ぐちゃぐちゃになったレオナの顔を優しく拭った兄は、それはそれは嬉しそうに笑っていた。
今夜は、きっと長い夜になる。





「あっ、あ、ああっあ、ぁ、あ」
とん、とん、とリズムよく下から突き上げられて制御出来ない声が漏れる。ソファに座った兄の上、まるで幼子を排泄するかのように背中から膝を抱えられて揺さぶられ、すっかり脳が溶けている。
「ぁあ、っあぅ、あ、ああ、っっは、」
口の中は干からびて喉すら痛い気がするのに、口の端から溢れた唾液がだらだらと鎖骨までを濡らしていた。張り付く衣服が動きを阻害して、身動ぎ一つ出来ない。膝までしか下ろされなかったスラックスは今レオナの目の前で両足を繋ぐ枷となって揺さぶられるままに揺れていた。
「っあひ、……ッっぐ、ぅ……ッッ」
ぐ、と強く身体を沈められ、奥の、行きどまりを先で捏ねられるとそれだけで目の前がちかちかと白んだ。縋る場所を求めて後ろ手に探る兄の頭、絡みつく髪をぎゅうと握り締めて身体の中心から広がる快感に、耐える。
「っふ、……ッぅう……」
「レオナ、見てごらん」
身を丸めて耐える事しか出来ないレオナの耳元に欲を滲ませた兄の声が吹きかけられてゾクゾクする。言われた通りに瞼を持ち上げ、濡れて歪んだ視界の中で何を見るべきなのかと、辺りを見渡す。
「ほら、皆見てる。レオナが気持ち良くなってる所を見て、興奮してる」
滲んだ世界でも、確かに観葉植物の影から、それよりもっと遠くのソファから、中にはわざわざレオナ達の居る席の前に足を止めてまでこちらを見て居る視線に、気付く。
「っひ、ぁ――ッッ」
その途端に駆け抜けた物にレオナの身体が引き攣り、仰け反る。見られている、血の繋がった兄とあられもなくまぐわう姿を、知らない人が見て居る。
「っぐ、……っふふ、凄い締め付けだな。気持ち良い?」
後頭部を兄の肩に預けたまま、快感に浸りきった身体が言う事を聞かない。和らぎそうになれば少しだけ身体が持ち上がり、そうして奥深くまで体重を掛けてずぶずぶと沈んで行く熱に悲鳴じみた声を上げる事しか出来なかった。
「でも、そろそろ物足りないんじゃないか?もうすっかり私の形に広がってる」
背凭れに体重を預けた兄に引き摺られるまま身体が少しだけ後ろに傾く。まるで、繋がっている場所を見せつけるかのような姿勢。そうして、兄の指先がめいっぱいまで広げられた場所をなぞる。もう兄を咥え込むだけで精一杯の筈なのに、これ以上もう広がらないのに、ず、と兄の爪先が、薄く引き伸ばされた縁の内側へと、潜り込んだ。
「ッヒ、ぁ、裂ける……ッっ」
「大丈夫だよ、ほら、こんなにもスムーズに入ってく」
「ぁ、あぅ、あ、……っあ、ゃだあ、……」
「ふふ、もう一本くらい、おちんちん食べられるんじゃないかい?」
兄の言う通り、圧迫感は増えても大した痛みも無く、指の一本どころか更にもう一本指が増やされ奥へと潜り込んでも体を支配するのは快感ばかりだった。それどころか太く、骨ばった兄の指の関節が入口を出入りする度に頭が真っ白になってゆく。
「此処には、お前の知り合いがたくさん居るんだろう?私以外に抱かれるお前を見てみたいな」
ぐ、っと内側から二本の指先が、浅い場所にある良い所を強く抉る。奥を捏ね回されながらそんな事をされてはもう、たまらなかった。
「――~~っぁ、……っっっ」
すっかり勢いを無くし、色の薄くなった物が、ただ腹の下で揺れる飾りのようになっていたレオナの物から吐き出され、ローテーブルの濁った水たまりを広げていた。それなのに耳には兄の声がこびりついたように離れず、期待で余計に飢えが酷くなったように感じた。
兄とのセックスを誰ともわからぬ人々に見られるのは、気持ち良い。普段公に出来ない、けれど密やかに長年続けていた関係を見せびらかしても許されるのが、何よりも快感だった。
そればかりか、今度は、兄が、レオナを見るというのか。兄以外に抱かれるレオナを、兄はどんな顔で見るのだろうか。
きっとこんな状態のまま他の男の物を差し出されたら、レオナは喜んで咥え込むだろう。むしろ既に期待で心が浮ついている。早く知らない男の物で身の内を荒されたい。すっかり慣れた兄との行為とは違うセックスに翻弄されるレオナを、兄に見てもらいたい。
ぎゅう、と抱き締められ、背後から兄が頬をぴたりとくっつける。
「……いち、に、さん、し……いっぱい見てくれてるね。レオナはおちんちん、何本欲しい?」
暗がりに潜む人影を、涙に濡れた視界では兄程には見つけられない。けれど、こちらを伺うような気配の色が濃くなったのはわかった。ぞわぞわと興奮に肌が粟立ち、腹の底が早くも疼く。
「……さ、さんぼん……」
「それだけでいいの?此処、もっと欲しそうだけれど。すごく絡みついてくる」
考えて、応えたわけでは無かった。適当に、思い浮かんだ数字を言っただけだ。再び身体を抱えられ、ぐずぐずと蕩けた場所を捏ねられて痺れるような快感が広がる。この場所に、兄の見て居る前で、違う男のもので掻き混ぜられると思うとそれだけで達してしまいそうだった。
身体を持ち上げられると、ずるり、とまるで身体の一部かのように馴染んでいた熱が抜け落ちて、空っぽになった粘膜に冷えた空気が触れる。レオナをソファに下すと見て居る男達を呼ぶためにか立ち上がろうとする兄の手を、掴む。
「……兄貴に、触っていたい……」
一瞬きょとんと眼を見開いた兄が、それから嬉しそうに笑う。それだけで、レオナは幸せだった。何処かへと向かって手招きをした後に、兄が再びソファに腰を下ろし、そしてその上に跨らせられる。膝立ちになったレオナは兄の首に縋り、兄を見下ろす姿勢で、兄と視線がかち合う。自然と、引き寄せられるように唇を重ねていた。
そうして背後から知らない誰かの掌がレオナの腰を掴み、熱く濡れた物が尻に押し付けられる。



そこから先は、あまり覚えていない。
けれどいつだってレオナの視界には兄が笑っていて、手を握っていてくれた。知らない手が一人増え、二人増え、様々な姿勢で休む間も無くただ揺さぶられている間、ずっと兄の顔ばかりを見て居たから、誰を相手にしたのかだってわからない。慣れないイラマチオもさせられたし、手も口も尻も熱を押し込まれて何処までが自分で何処までが他人なのかすらわからなくなったりもした。二本もいっぺんに入れられて泣き叫んだ気もするし、快感の余り意識を失ったりも、した。それを見て居る兄は、ずっと笑っていた。



嵐のような時間が過ぎ去り、気付けば兄の腕の中に抱き締められて穏やかに舌を絡ませている所だった。指先一本動かすのすら億劫だし、頭がぼんやりしている。とろりと、兄の舌に擽られるだけでこのまま気持ち良く寝てしまいそうだった。
「……誰が一番良かった?」
ちゅ、と水音と共に離れた兄に好奇心丸出しの笑顔で問われ、その意味を考え、それから顔も思い出せない男達の事かと気付く。兄よりも太い性器を持っていた男、絶妙なタイミングで痛みを与え、今日一日ですっかり痛みを気持ち良い物だとレオナに覚えさせてしまう程に手慣れていた男、性器の形は悪く無いが、少々荒っぽく、一対一では二度とごめんだと思う男。
そこまで思い返して、笑う。誰も何も、そんなもの答えは決まっている。
「……ファレナが一番良い」
一瞬驚いたように瞬いた兄が、ふわりと、嬉しそうに笑っていた。

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