忍者ブログ

空箱

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

5

レオナ先輩が、鳴いている。
あの、怠惰で傲慢な男が、我が物顔でジャミルを食らっていた男が、獣らしく荒々しいセックスをする男が。実の兄の言葉一つで抵抗する事無く為すがままに犯され、ただジャミルに縋りついて鳴く事しか出来なくなっている。
後ろから貫かれる度に上がる蕩けた低音は甘い。子猫が親に甘えるような、媚びた声。
「……っふふ、先輩、可愛い」
首に懐くレオナの、張り付く髪を掻き上げて額に唇を押し付け、滲んだ汗を舐め取る。前々から抱かれ慣れている身体だろうとは思っていたが、此処まで雌の顔をするとは思ってもみなかった。
「レオナ、ほら、ちゃんとお前の顔を見てもらいなさい」
「っぅあっ、っぁ、」
無造作に背後から髪を掴まれて顔を上げざるを得なかったレオナと眼が合う。とろりと蕩けた瞳がジャミルを認識するとすぅ、と細められ、そして諦めたように伏せられた。長い睫毛が濡れて震えている。飼いならされ抗う事を止めた雌の顔。王子という誰もが羨む身分でありながら、ふとした時に滲む昏い色気はなるほど、この男のせいかと思う。
レオナの兄であり、一国の王であり、一児の父親でもある男。レオナが華奢に見える程に大きな体躯は正に百獣の王と呼ぶべきもので、間にレオナがいるのにジャミルまで抱かれているような気分にさせる圧力がある。
「私のレオナは、可愛いだろう?」
「あっ、あ、ぁ、あにき、も、っぁあ、」
「ええ。こんなに可愛らしくなるとは今まで知りませんでした」
満足げに笑うファレナが身を屈め、レオナの頬に口付けを落としてから身を起こすとレオナの身体も共に離れていく。
「ひ――ッぁ――ッッッ……」
角度が変わり良い所にでも当たったのか、片手一つで簡単に身を起こされたレオナの身体が弓なりに撓り声にならない悲鳴を上げて震えていた。がくがくと跳ねる身体を押さえ付けて首筋にかぶりつくファレナの、余りにも組み敷く喜びに満ちた無邪気な笑顔にうすら寒いものを覚える。随分と、面倒な男に囚われている物だとレオナを憐れむ気持ちすら沸く。所詮は、他人事だが。


そもそも事の発端はこの王様がサバナクロー寮の視察とやらにやってきたところからだ。詳しい事はわからないが護衛をたくさん引き連れた王様が寮内を練り歩き、最後に礼として宴会を開いたそうだ。その案内役に連れ回されストレスの溜まったレオナがジャミルを呼び出したのは夜になってからで、その頃には王様御一行は帰ったと聞いていたのだが。
ジャミルがレオナの部屋を訪れるという事は、つまりそういうことをするわけで、八つ当たりのように普段よりも荒く揺さぶられながらもうすぐ、という所でファレナがやってきたのだ。
闖入者に固まる二人を他所に「鏡の調子が悪いようだから、直るまで此処にいさせてもらうよ」とベッドに腰を下ろしたファレナが「気にしないで、続けてくれ」と笑顔で言い放ったのにも驚いたが、レオナが溜息一つで従った事はもっと驚いた。
余りの事にすっかりその気は失せていたが、悲しい事に、気分で無くてもそれなりに振舞い行為を行う事にはジャミルも長けていた。憮然としながらも続きをしようとするレオナの、先程までとは全く正反対の優しい手付きに少し面白くなって来たというのもある。まるで女性を扱うかのように丁寧にジャミルを撫で、しつこいくらいに舌を這わせて熱を高めていく猫被りな前戯に、こう見えてもやはりレオナは王子様だったのだなと妙な感想を抱いたりもした。
そうしてなんとか一戦を終え「今度は私の番だな」とレオナに圧し掛かるファレナに、レオナは何も言わなかった。ただファレナの為すがまま、言われるがまま、ジャミルに縋りつくように身を預けて鳴いていた。ファレナからはレオナを目に入れても痛くないとばかりの愛が注がれているのが嫌でもわかる。レオナがそれを有難く受け取るとまでは行かずとも、拒絶していない事も。


「ほら、君も見ているだけではつまらないだろう?レオナを慰めてやってくれ」
「っひ、ぃぐ……ッぁ、っあ、あ」
声を掛けられ、傍観者に徹する気でぼんやりしていたジャミルは瞬いた。まさか混ざれと言われるとは思わなかった。この行為はただ「ファレナとレオナの愛の営み」を「他人に見られる」というスパイスを加えただけの物であり、ジャミルは部外者だ。レオナの自由を許してやる寛大さを見せつけながら、それでもレオナはファレナの下でならばこんなにも淫らに鳴くのだとジャミルを牽制する為だけの行為。無意味な事をすると思わなくも無いが、それでファレナが満足するなら身の安全の為にも従うべきだろう。ジャミルはレオナに対して多少の情はあれどファレナの思うような愛情は一欠けらも持ち合わせていない。所詮はいつお互いの「家庭の事情」で疎遠になるともわからない関係だ。レオナとの逢瀬を咎められなかっただけで上々、後は王様の言う通りに機嫌を損ねないように振舞うだけでいい。ジャミルには、レオナ以上に「相手の望むがままに身体を差し出して喜ばせること」に慣れている自信があった。
クッションに背中を預けたファレナの上に跨るレオナがゆるゆると下から突き上げられるたびに鳴いていた。立てられたファレナの膝に開脚を強いられたまま閉じる事も出来ず、むしろファレナの膝に手をついて自ら腰を振っているようにも見える。中でイってばかりでどろどろになりながらも萎える事無く立ち上がり震えているレオナの物に這って近づき、唇を寄せようとするが、触れる直前に待ての声が掛かる。
「レオナに跨りなさい。遠慮は要らない、さあ」
思わずレオナを見るが、一瞬辛そうに眉を潜めたもののすぐにふいと視線を反らされてしまった。ああ、可哀想に。憐れな第二王子様に拒否権は無いのだろう。それともこういう事態には既に慣れているのだろうか。
ジャミルが入れ易いようにと、レオナの胸を抱えてファレナが後ろへと身体を倒す。動きが止まり、漸くといった態で荒い呼吸に胸を泳がせるレオナは何処か、遠くを見ていた。可哀想に。再びそう思えどジャミルに出来る事は何もないし、する気も無い。巻き込まれてはいるが所詮は対岸の火事だ。レオナの事を本当に想うのならば、せめてジャミルが丁寧にファレナの誘いを断りこの場を去ってやるのが一番良いのだろう。彼の昏い顔を見ないでやるのが優しさなのだろう。ただ心を無にして時が過ぎるのを待つ気持ちはジャミルにも痛い程にわかる。わかるからこそ、もっと苦しませてやりたいという悪戯心が持ち上がる。この場を支配する王がそれを求めるのならば、応えてやるのが下々の民の務めだろう。他人の不幸は蜜の味がする。
「それでは、失礼します」
込み上げる愉悦で口角が緩む。ファレナを見れば満足気に細められた双眸とかち合い、ああ共犯者と認められたのだとジャミルは心から笑った。



あれから、ジャミルが跨って一回、もう一度レオナとジャミルだけで一回、そこにまたファレナが混ざり込んで三人で一回、そのままジャミルは疲れたからと抜けさせてもらい、ファレナとレオナで一回。
ライオンの体力は恐ろしい物だと思う。それだけの数をこなしても、鏡が直ったという報告を受けるや否やしっかりとした足取りで帰っていったファレナは化け物の域なのではないだろうか。残されたジャミルは多少休んで体力を取り戻しているが休みなく鳴かされていたレオナはベッドに突っ伏したまま動けなくなっていた。一度ベッドを離れて勝手知ったるキッチンから水のペットボトルを一本拝借して戻る。干からびた喉に水を流し込めば思いの外、飢えていたらしい。一気に半分ほどを飲み干してしまった。
「お疲れ様です。……先輩のオトコ、お兄さんだったんですね」
ベッドに俯せに寝るレオナからの返答はない。そこら中色んな体液に塗れ、特に尻の狭間からは呼吸する度にたっぷりと中で出されたものがどろりと溢れている。
「今度、俺にも抱かせてくださいよ。好きでしょ、抱かれんの」
伸ばした指先で尻の肉の狭間を押し込めばいとも簡単に指が二本中へと飲み込まれていく。もはや閉じ切れなくなっているようだった。まああの大きさをずっと咥え込んでいたのだから仕方ないだろうと笑っていると遠慮のない足がジャミルの脇腹にめり込む。
「い、った……今更恥ずかしがらなくたっていいでしょう」
大人しく手を引き、その代わりにレオナの隣に寝そべると、もぞりのそりとレオナの腕がジャミルを絡めとり確りと抱え込まれてしまった。仕方なくペットボトルを置いてレオナの背を抱き締めてやる。
「――……ってぇ……だ……」
「はい?」
「ぜってぇ、いやだ」
可哀想な程に掠れた低音がたどたどしく紡ぐ言葉に思わず吹き出す。あの、怠惰で傲慢な男が、我が物顔でジャミルを食らっていた男が、獣らしく荒々しいセックスをする男が。何処か拗ねたような響きで持って、命令する事すら出来ずに駄々をこねるしか出来なくなっている。兄の前でしか見せない顔から、NRCの生徒でありサバナクロー寮長であり、誰もが羨む「王子様」の顔に戻る事が出来なくなっている。くつくつと収まらない笑いに震えるジャミルの肩に無言で噛みついて抗議するのすら、普段の知略に長けた賢王の姿はどこへやら、肩をがぶがぶ噛み背をがりがり引っ掻き幼子が意思を言葉に出来ずに地団駄踏んでるだけにしか思えない。
「アンタ、意外と可愛いんだな」
慰めるように抱き締め頭を撫でてやりながらジャミルは笑う。レオナに少しだけ、情が沸いた気がした。

拍手[0回]

PR

comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]