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空箱

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終わる為の回想

周防尊は知らぬ人の想像よりはずっと真面目な生徒だが、それは決して周防が良き生徒であること同義ではない。
売られた喧嘩は言い値で買うし、気に入らない相手ならば問答無用で拳をぶつける。
授業は気が向けば出るものの基本的に寝ているだけだし、気が向かなければ学校に来ない事すらある。
それでも入学してまだ1ヶ月だと言うのに広まり浸透してしまった周防尊像に比べたら実態は随分と大人しい事だろう。
喧嘩で人を殺した事があるだとか。
どこぞのチームを一人で壊滅させただとか。
親が裏社会の権力者だとか。
高校生らしい幼稚さの残る噂を信じて周防の傍には近づいて来ない癖に年頃の好奇心で遠巻きに周防の一挙一動をじっと観察する烏合の衆には正直、苛々する。
だが一発周防が殴れば壊れそうな脆い人間相手に無暗矢鱈と手を上げる趣味は無いので、あまりに鬱陶しい時は抑えが利かなくなるなる前に屋上へと逃げる。
周防にとって、喧嘩も怠惰な生活もその時の感情のままに動いているだけであって目立つ事は本意では無い。


本来立ち入り禁止となっている屋上への階段は照明すら付けられる事無く、まだ昼間だと言うのに薄暗い。
素行のよろしくない生徒たちの溜まり場になっている事を皆知っているのか、階段にすら近づく者が少ない為に静かな空気を一歩ずつ踏み締めて階段を上る。
登りきった所で分厚く、少しペンキが剥がれかけた鉄製の扉を押し開ければキィと錆びついた音が鳴った。
薄闇に慣れた目が、コンクリートに跳ね返る太陽光の眩しさに耐えられず眉間に皺を寄せながら外へと踏み出せば広く開けた灰色の地面の上に人影が一つあるのが周防の目に留まった。
「――……ァ?」
黒髪の人影は周防と同じ制服を着ている所からしてこの学園の生徒なのだろう、だがその手には生徒に似つかわしく無い白い筒から紫煙を漂わせている。
扉の音に気付いたのか、ただ確認するように投げやられた視線とかち合ったのは一瞬、すぐに興味無さげに柵の外へと顔を戻すその男の反応に、周防の方が戸惑う。
今までこの屋上に来て出会った生徒と言えば、見ただけで怯えたように逃げ出して行くか、果敢にも縄張りを主張し排除しようと拳を向けて来るかのどちらかで、こんなにも無関心な態度を向けられた事は無かった。
扉の前に一歩踏み出したまま動きを止めた周防の事など、もはや意識の端にも無いようにのんびりと吸い込んだ紫煙を吐き出す姿に思わず周防の口から舌打ちが漏れた。
拳を交わす所か声さえ聞いていない一瞬の出来事なのに、何故だか負けた気がした。
だからと言って喧嘩を吹っ掛けるような気分でも無い、むしろその煩わしい衝動から逃れる為に屋上に来たのだから。
乱雑に後ろ髪を爪で掻き混ぜると尻ポケットから潰れた煙草を取り出して唇へと差し込み、先客とは反対側の柵へと向けて爪先を向ける。
乱雑に柵へと背を預けるようにして座り込み、ジッポで火を灯せば仄かなオイルの香りと共に肺一杯に煙を吸い込めば沁み渡るニコチンにささくれ立った心がゆっくりと落ち着くような気がした。
灰色の地面を挟んで反対側には、こちらに背を向けたままのんびりとしたペースで煙草を消費する背中がある。
周防を歓迎する訳でも拒絶する訳でもない無関心な背中は、落ち着いて見れば然程悪いモノでも無かった。
良いモノで有るとも言い難いが、別に有っても無くても構わない、というくらいの。

それが、最初だった。



三日に一度は屋上に来るような周防とは違い、男が屋上に来る事はそう無いのだと思う。
一週間に一度会えば良い方で、会ったと言っても二人が言葉を交わした事は一度も無かった。
先に居ても後に来ても、初めての時と変わらぬ興味の無い視線を一度向けるだけですぐに周防という存在に無関心になるだけだ。
そしていつも同じ場所でのんびり煙草を一本楽しみ、ものの数分で何事も無かったかのように屋上から去って行く。
一年生の教室から出てくるのを遠くから見かけた事があるから同じ学年なのだろうとは思うが、お互い名前すら知らない。
仲が良いわけでも険悪な訳でも無く、ただ同じ空間で煙草を吸うだけの不思議な存在。
草薙や十束とも、こぞって周防に挑んで来る有象無象とも違う存在の事を、周防は案外気に入っていると思う。
思う、というのは自分でもよくわからないからだ。
お互い無言で煙草を吸う空間は悪く無い、むしろ居心地が良いとすら思う。
だがだからといって親交を深めたいだとか、相手の事を知りたいという興味が沸く事は全くといって無い。
ただ、周防が屋上に居る時間のうち、ほんの少しの時間しか居ない筈なのに、男が屋上に在るのが当たり前になりつつあるだけで。



そんなどちらかが扉を開けた時に一瞬視線を交わすだけの関係が変わったのは夏を通り過ぎ、秋になった頃だった。
屋上を縄張りと主張する輩は相手から吹っ掛けられたから応戦しただけという形ながらも粗方片付けた筈だったのだが、半年近く掛けて人を集め屋上の奪還に挑もうと言う人間が現れたのだ。
生半可な人数では簡単に周防に蹴散らされて終わると分かってか、呼び出された周防が向かった屋上にはずらりと十数人が集まっていた。
幾ら喧嘩が滅法強いとはいえ、周防もただの高校生だ。
獲物を持った大人数相手では分が悪い。
けれど引き下がるつもりは無い。
それは決して正義感からでも、己が最強を信じているからでも無くて、ただ、そこに拳を振るえる相手が居るからだ。


奇声を上げながらバットを振り被ってきた男を切欠に始まった乱闘は予想通り、周防の劣勢となった。
何人かは戦意喪失する程度に伸してやったのだが、幾らなんでも人数が多い。
決定打になるような攻撃は食らって居ないにしても、蓄積される痛みや疲労は少しずつ周防の動きを鈍くする。
それに伴い、以前周防に徹底的に返り打ちにあった記憶からか周防を窺うようにして攻撃の隙を狙って居ただけの連中までやる気に満ちて来ている。
流石に今日は駄目かもしれねぇなぁ、と他人事のように思った時だった。
キィ、と軋んだ音を立てて屋上の扉が開く。
喧騒に埋もれるような小さな音に気付いたのは数人だけで、それでも一人が扉へと視線を向ければ皆ばらばらと意識を釣られて行く。
やがて屋上に居る全ての人の視線を集めたその男はいつもの無関心な眼差しに僅かな嫌悪を乗せて周囲を見渡した後、何事も無かったかのように乱闘を避けて定位置となった柵の前へと歩き出す。
余りにも自然なその動きに呆気に取られたのは周防だけでは無かった。
ぽかんと間抜けな面で通り過ぎる男を見送りそうになったリーダー格がはたと我に返ると男の腕を掴もうと手を伸ばす。
「てめぇ、シカトしてんじゃね…――ッッ」
腕を掴んだ、と思った瞬間にはゴ、と鈍い音と共にリーダー格が糸の切れた人形のようにぐしゃりと崩れ落ちる。
何が起きたのか、一瞬誰もわからなかった。
地面に倒れ伏すリーダー格の前に、ちょうど頭の高さ辺りへと突きだされた男の拳が在るのを見て漸く、あの拳で重い一撃を顔面に食らったのだろうと理解してやっと、皆が今、何をしていたのかを思い出す。
其処から先は、よく覚えて居ない。
周防の仲間とは思わなくても、自分たちの味方ではあり得ないと判断された宗像は済し崩しに周防と同じ側、大人数を相手に戦う側へと回された。
それでも先程よりも向かって来る敵が半分になるだけでも随分と楽になる。
喧嘩で養われた我流の周防とは違い、宗像は何か武道の心得があるのか随分と周防の目には綺麗な動きに見えた。
大人数を相手にも引かず、巻き込まれた形ながらも物怖じせず、周防と同等に戦える宗像の存在は、まるで初めて喧嘩に勝った時のような高揚感を周防に齎した。
背中を託して闘うような関係でも無いが、互いに拳を向ける訳でも無い関係はいつもの屋上での距離感と同じようでいて少し違う。
其処に共有する何かが、互いの存在を認めて配慮する少しばかりの気遣いが生まれる。
不思議と、先程までの敗北の予感は消えて居た。
宗像も、周防も、大人数相手に不利で有る事は変わり無い。
現に二人とも相手の人数は減らしている物の、怪我は増える一方だ。
だが負ける気はしなかった。
既に身体が歓喜に満ちていた。
破壊する事以外にこんなにも満ち足りた気持ちになるのは初めての事だった。



覚えてろ、とお決まりの台詞を残して屋上の奪還を諦めた連中が去っていくのにそう時間は掛からなかった。
相手も意識を失って居るものから負傷で歩く事すら覚束ないような者までと散々たる有様ではあったが、周防と男とて無傷という訳では無い。
取り戻した静寂に二人残されて小さく息を吐き、男を見る。
いつものように無感情な瞳がタイミングを計ったかのように周防を見て居た。
いつもならばすぐに外される視線がひたりと周防に焦点を合わせていた。
思えばこんなにも間近に男の顔を見るのは初めての事のように思う。
今まではずっと、男の背中ばかり見て居た。
口端が切れ、鼻から血を垂れ流しているような顔なのに何故か、周防は綺麗な顔をしていると思った。
ふ、と思わず笑う吐息を漏らしたのはどちらが先だったか。
今まで喧騒と暴力に満ちていた屋上がふわりと柔らかな空気へと変わる。
まだコンクリートの上に残る血痕も、ずきずきと痛まない所が無いくらいに負った怪我も確かに存在しているのに今のこの場所はいつもの屋上だった。
周防と、男と、言葉を交わす訳でも無くただ煙草を一本嗜む時間を共有する屋上だった。
「――…随分と男前が上がったな」
「…テメェこそ。んなツラ出来るとは思わなかったぜ」
初めて交わした言葉は不思議なほど自然に零れ落ちた。
男の姿も喧嘩の跡が生々しく残っているが、周防も右目が半分開かないし首筋の辺りに襟が濡れて張り付く感触があるからきっと酷い姿をしているに違いない。
「お前、名前は?」
口にしてから周防は驚く。
自分から名を聞くなんて事、今までした記憶など一度も無い。
けれど純粋に知りたいとも思った。
覚える為に、忘れない為に、存在を刻む為に。
「宗像だ。宗像礼司。お前は周防尊だろ」
「知ってたのか」
「お前ほどの有名人、知らない方がおかしい」
そう言って笑った宗像の顔を見てやはり綺麗だと思う。
難しい言葉には興味が無いから綺麗としか言いようが無いが、風景が綺麗だと思うのとは違う、じんと心臓の辺りが擽られるような綺麗さだった。
こんな人間も居るのだと、周防は初めて知った。



-------



年末を間近に控えた12月、何処もかしこもクリスマスに向けて何処か浮足立ったような鎮目町を横目に今日も草薙の居るBAR・HOMURAへと向かう。
もはや自宅の玄関のように慣れ親しんだCLOSEの札が掛かった扉を無造作に開ければ、先に来ていた十束の「キングおかえりー」という間の抜けた声と、「最近帰って来るの早いなぁ」なんて母親のような草薙の声が聞こえて、ただいまの代わりに、あぁ、と応えるまでが此処最近の流れになっている。
確かに最近、此処に来るのは決まって夕方だ。
それは丁度、学校でHRが終わった後、寄り道せずに此処まで辿り着くくらいの時間。
気に入りのソファの端へと腰を下ろしながら今更のように気付いた。
「キング、最近何か良い事あった?」
犬のように勢いよく尊の隣へと座った十束が何か面白いモノでも見つけたように眼を輝かせて覗きこんで来るのに思わず眉を上げる。
純粋に質問の意味がわからなかった。
「ァあ?」
「いやほら、最近真面目に学校行ってるでしょ?」
「ああ…」
「何か良い事あったのかなって」
そう問う十束の顔は明らかにあったと決めつけている顔で思わず周防は眉を寄せる。
良い事と言われても何も思いつかない。
むしろ、学校に毎日のように通って居た事にすら今気付いたくらいだ。
一つ、此処最近の変化を思いついたとすれば、同じ時間に此処に来れるようになったという事はつまり、此処に来るまでに喧嘩をする回数が格段に減ったという事だ。
学校内でも最初は触れたら爆発する火山かのように扱われていたのに、この頃はすっかり慣れたのかそれとも触れなければ爆発しない事に気付いたのか、近付こうとする者は居ないが変に距離を置く者も居ない。
屋上での大乱闘以降、周防にそういう目的で絡んで来る人間も居なくなった。
それは学校の外でもだ。
以前は他校の生徒から近所のヤクザの下っ端のようなチンピラまで、角を曲がれば喧嘩が起きるような有様だったが今では下校中の周防と目を合わせる者すら滅多に無い。
だが普通の人ならば平和で何よりと思うそれを良い事と捉えられるかは、周防にはよくわからなかった。
喧嘩は空気のように傍にあって当たり前のモノであったし、現に今、振るわれて居なかった事を思い出した拳が暴力の感触を求めてずくりと疼いた。
「そういやぁ、尊がちゃんと学校行き始めるようになったん、珍しく大怪我して帰ってきた辺りからやなかったか?」
すっかり黙って考え込む所か不穏な空気を纏わりつかせた周防を呼び戻すように草薙の柔和な声がカウンターの内側から届く。
思わず握り締めた拳を解いて息を吐くと周防は乱雑に髪を掻き混ぜた。
「つっても、何も変わんねぇよ。精々、絡んで来る雑魚が減っただけで」
周防の記憶には実際、該当する事柄が無い。
屋上での乱闘は、以前蹴散らした雑魚が徒党を組んで襲撃してきたからだと説明してあるから、それが原因だとは二人とも思って居ない筈だ。
そこで共闘した人間が居る事は伝えていないが。
その時初めて名前を知ったような極めて赤の他人に近い存在だ、特別伝えるような事柄でも無いと周防は思う。
宗像との関係もあれから何か変わった訳では無い。
今までは侵入者の確認だっただけの視線が、周防と言う人間を認識するモノに変わっただけだ。
居ても居なくても良い見知らぬ人間から顔と名前は知っている人間になったというだけで、挨拶をする訳でも無ければ言葉を交わす訳でも無いのは変わらない。
精々一度だけ、たまたま周防が火を忘れた時、安物の100円ライターを恵まれたのが唯一の交流だろうか。
交流と言っても「宗像、火」と端的に呼んだら、向こうから無言でライターが放り投げられただけだが。
「なんや尊、好きな子ぉでも出来たん?にやけてんで」
「え、え、誰、キング好きな子って誰?学校の子!?だから毎日学校行ってんの!!??」
知らぬ間に口許が緩んでいたらしい、指摘されて初めて気付いて思わず周防は渋面を作った。
違ぇよ、と吐き捨てながら詰め寄る勢いで身を乗り出す十束の顔面を遠慮なく鷲掴んで押し退けて、ついでにそれを支えにするようにして立ちあがる。
ぐぇ、と掌の下で潰れた声が上がった。
「照れんでもええやん、おんなし学校やったら俺も協力したるし」
「違ェっつってんだろ」
「ほな誰の事考えてたん?」
「考えてたんじゃねぇよ、たまたま思いだしただけで」
「ほな誰の事思い出したん?」
否定してもどうやら二人の中ではすっかり好きな相手が出来たと思い込みが出来たようでにやにやと浮付いたような笑みが張り付いていて思わず舌打ちが零れる。
いつも騒がしく纏わりついて来る十束はともかく、普段ならば周防の言わんとするところを言葉にせずとも察し、それとなくフォローに回ってくれる草薙まで一緒になって絡んで来ると周防の手には負えない。
そもそも、舌戦には弱いというか、手っ取り早く言うならば口下手だと言う自覚もある。
手を出して片がつく相手ならともかく、草薙と十束を相手にしては周防は尻尾を巻いて逃げ出すしかないのだ。
「……寝る」
せめてもの抵抗に、出来る限りのドスを利かせた低音とそこらの雑魚ならば一瞬で逃げ出すような睨みを置いて行くがこの二人に限って効くわけもない。
あ、逃げた、と背後で声を揃えてはけらけらと笑う声を背に、周防は足音荒く二階へと登った。


------


宣言通りにベッドに横になったまま気付けば本当に寝入ってしまったらしい。
ベッドとソファ、他には殆ど物が置かれて居ない部屋に日の出前の薄ぼんやりとした光が差し込んでいた。
気付けば何時間寝ていたのだろうか、なんとなく身体は怠いし空腹で胃が竦む。
とりあえずは何か腹に入れるものを、とつい先程登ったばかりな気がする階段を下りた。

店への室内扉を開けた途端、今まさに階段へと向かおうとしていた草薙とかち合う。
店内はすっかり明かりが落とされ、外からの淡い光が差し込むばかりという事はとうに閉店の時刻を過ぎ、片付けすらも終えた後なのだろう。
「なんや尊、今頃起きよったんかい。何も食わんと寝てもうて腹減ってんちゃう?」
けれど仕事後の疲れを滲ませながらも草薙の言葉は正に周防が求めて居た物で、遠慮よりも先に素直に頷いてしまう。
「待っとき、今簡単に作ったるわ」
何でもないことのように軽く草薙が言うから、周防も逆らわずに店へと戻る後に続いてカウンターのスツールへと腰を下ろす。
必要最小限に絞られた照明の中、まだ引き摺る眠気のままに欠伸を一つ、吐き出す。
パスタでええか、と問われたのに頷くと後はただひたすら待つだけだ。
大ぶりの鍋にたっぷりと入れた水に火を掛け、冷蔵庫からぽんぽんと迷い無く取り出された野菜やウィンナーを切り刻み、頃合いを見て沸騰した鍋の中へとパスタが滑らかに渦を描くように消えて行く。
流れるような手付きで行われる「調理」というものは周防にとって魔法と似たような不思議さで自然と何をするでも眺めていた。
「で、さっきは誰を思い出してたん?」
不意に問われてとっさに何の事だかわからなかった。
顔だけ振り返ってにやりと笑う草薙の顔を見てやっと、夕方の話題の話だと気付く。
「好きな子っちゅうんは…まあ違うとしても。屋上で友達でも出来たん?」
すぐにまた調理へと視線を戻す草薙の背を見ながら周防は思わず眉を潜めた。
図星を指されたようでいて少し違う、友達という単語はきっと周防と宗像の間に相応しく無い。
赤の他人、顔見知り、屋上で喫煙する仲間、周防の少ない語録では相応しい言葉が思いつかず、肯定も否定も返せずに唸る。
「ほい、おまちどーさん。よく噛んで食べぇや」
悩んでいる間にも気付けばほかほかと湯気を立てるナポリタンが眼の前に差し出されていた。
限界に近い空腹を覚える胃を抱えたままこれ以上、脳を動かしてなぞいられない。
渡されるままにフォークを受け取ると周防はパスタを口に運ぶ作業へと移った。
「で、どんな子ぉなん?」
飢えに荒ぶる胃が少し落ち着きを取り戻す程度にナポリタンを口に入れて暫し。
カウンターの内側から周防の食事を眺めていた草薙の声でまだその話題が終わって居なかった事を知らされ再び周防の眉間にしわが寄る。
そもそも、無言で返してやったというのに既に居ると決めつけている草薙に僅かばかりの悔しさがある。
言葉にせずとも伝わるのは時に便利だが、時に腹立たしい。
未だ関係性を言葉に表せない周防は少しだけ考えた後、一番簡単な方法を思い出した。
「宗像…って知ってるか。多分、一年の」
草薙は学年こそ違うが、周防と同じ学校に在籍している。
外に出れば酒も煙草も喧嘩も嗜む癖に、校内では成績優秀で運動神経抜群、更には顔も性格も良いという優等生を演じている、らしい。
高校くらいはまともに卒業しておきたいから学校の中では大人しくしておく、というのが本人の弁だがその割に三年生だけならまだしも、下級生や果ては教師まで何処で交流の切欠を掴むのか分からない相手にまで手広く交友関係を広げて優等生ごっこを楽しんでいるようだ。
お互い、学校の中でまでべったりしていたいなんて感傷は持ち合わせていないので校内で周防と草薙が話す機会など殆ど無いに等しいが、一年生の中でも有名な「草薙先輩」の噂は教室に居れば嫌でも耳に入る。
逆に、その「草薙先輩」が各所から集めた噂を周防に教えてくれる利点もある。
主に誰が周防を逆恨みしているだの、どの時期は教師の見回りがあるからサボり場所には向いていないだのといった噂が殆どだが。
「宗像って、あの宗像礼司?彼がどないしたん」
何処か含みある言い方が気になりはしたが、予想通りに宗像の存在も知っていた事に安堵して一つ頷く。
「そいつがたまに、屋上に来て煙草吸ってく。そこに居合わせるってだけだ」
周防にとっては当たり前の日常となっていたモノが草薙には随分と驚くものだったらしい。
いつも柔和な笑みを浮かべて居る事が殆どの眼がまんまるに見開かれている所なぞあまり見た事が無い。
へぇ、と気の抜けた声しか返せない様子に逆に周防の興味がそそられる。
「そんな驚く事か?」
「いや、なあ。俺の知っとる宗像と随分と印象が違うから」
「印象?」
「実際に喋った事は無いねんけどな、宗像言うたら、どっかのボンボンで、頭は学年一位とか取るレベルにええらしいんやけど身体が弱いとかで体育も殆ど見学してるっちゅー、お上品なおぼっちゃまなイメージがあったから」
聞きながら掻っ込んだパスタを思わず噴き出す所だった。
身体が弱いなぞ、あれだけの立ち回りをした男の何処から生まれる言葉だ。
「あいつ、この前の屋上で巻き込まれてたが…俺とタメ張れるくらいに強かったぞ」
「は?え、強かった…って、喧嘩なんてするん!?王子が!?っちゅーか聞いてへんでそんな事!」
結局、屋上での乱闘の一部始終を事細かに説明させられる事となり周防は過去に端折って
説明した自分を恨んだ。
いつ説明しようと手間は変わらないが今説明する面倒さに勝る手間は無い。
ついでにそれまで会話すらした事無かった事、その日だけは少し言葉を交わしたモノの、その後も会話なぞした事無い事まで喋らされ、草薙が落ち着く頃にはすっかり冷えてしまった残りのパスタを食べながら耳に引っ掛かった単語を思い出す。
「王子、って何だ」
「王子は王子やろ。ボンボンで、顔が良くて、いっつもにこにこしとるって女の子がきゃーきゃー言うとる」
草薙の知る宗像と周防の知る宗像には随分と印象の違いがあり過ぎてそろそろ同じ人物の話をしているのかわからなくなってくる。
周防が知っている宗像といえばいつも全てに無関心な無表情と、舞うように敵を蹴倒す姿と、あの日一度だけ見た鼻血塗れの笑顔だけだ。
「わからんもんやなぁ…宗像にそんな裏の顔があったなんて…いや、むしろそっちが素か?」
しみじみと溢される草薙の言葉に周防は声無く同意する。
あの無機質な視線の男がひとたび屋上から降りれば女子に王子等と呼ばれ持て囃されている等、想像だにしなかった。
否、屋上に在る宗像以外の姿を想像した事すら無かった。
周防にとって、実際に周防の眼で見た宗像が宗像の全てであって、それ以外の宗像など端から存在していない。
在っても無くても構わない、そのほんの少し上に居る男。
それが周防に取っての宗像だ。
草薙の知る噂話も一晩寝れば忘れてしまうような気がする。


気付けば外は徐々に日が昇り明るさを増していた。
冬の遅い夜明けは、間もなく人が動き出す朝がすぐ其処に迫っている証拠だ。
一服したらもうひと眠りして、そのうち起きたら学校に行くか。
煙草に火をつけながら周防は口元を僅かに緩めた。

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和服パロ

宿場町の夜は騒がしい。
昼のそれとは違い、酒と色を含んだその喧騒が提灯の明かりの下で波打っている。
だが一歩、建物の中に入ればそこは戦場だ。
やれ紅が無いだの、帯が巧くいかないだの、姐さん方が姦しくしながら外面を作り上げている癖に、客の前に出ればおしとやかに微笑んでいるのだから女は怖いと今吉は思う。
吉原のような規模は無いが人通りの多い宿場町にあるこの女郎屋の稼ぎは上々だ。
自然とこの時間にもなれば姐さん方の送迎や雑務に追われる事になるのだが。
今も姐さんを一人、茶屋まで送り届けてからさて次の仕事はと聞けば今し方行ったばかりの茶屋へ届け物だと指示される。
無駄に往復させられるのは面倒だと思うが仕方が無い、こう言った「遊び」には見栄やらしきたりやら複雑な事情が絡み付いているのだ。
溜息一つで届け物だと言う小さな包みを受け取り今吉は再び茶屋へと向かった。


辿り着いた茶屋の番頭は顔馴染みで、先程別れたばかりの今吉が時間を置かずにやって来たのに驚いたようだ。
届け物やって言うから、と今吉も苦笑いで応えながら包みを渡し、さて帰るかと踵を返した所で引き止められる。
「ああ、これは直接部屋まで届けてくれ」
「はぁ?部屋て…さっきの姐さんの忘れ物やったん?それなら俺やのうて…」
「違うんだ。…とにかく、届けに行ってくれ。そう言伝されてる」
茶屋への届け物だと思っていたのが間違っていた事にも驚いたが、まさか自分が部屋まで持って行かなくてはならないとは。
いまいち事情が飲み込め無いが、今吉は此処で否と言える立場では無い。
首を捻りながら茶屋の奥へと足を踏み入れた。


女郎を送り届ける時にしか此処に訪れる事の無い今吉が、茶屋の内部へと足を踏み入れるのは初めての事だ。
階段を上がり、真っ直ぐに伸びる廊下の両端に連なる襖一枚で隔てられただけの部屋からは酒宴が盛り上がっている様や、早くも褥に縺れ込んでいる様がうっすらと聞こえて今吉の眉が寄せられる。
初心なつもりは無いが、薄い襖の向こうで見知らぬ他人が情事に耽っていると思うと余り居心地の良い物では無い。
教えられた部屋の前まで来ると、今吉は膝をついて居住まいを正してから声をかけた。
「お届け物にあがりました」
少し待ってみるも返事は無い。
耳を澄ましてみた所で、すぐ隣の部屋から上がった艶めいた嬌声が先程送り届けた姐さんの物とわかってしまっただけで役に立たない。
いたたまれなさが募り、意を決して襖へと手をかけて開け、中を覗き込む。
「何でアンタが居るん…」
思わず畳に突っ伏しそうになる程力の抜けた身体をなんとか気力で支える。
「遅ェ」
中で一人、着物を着崩し、片膝立てて手酌酒を舐めて居るのはこの界隈を仕切る組の者で名を青峰と言う。
月に一度みかじめ料を払う時や、組の長が女郎の一人に夢中だとかで何かと話す機会があるので知らない訳ではない。
だが友人と呼ぶにはまだ遠く、精々顔なじみと言った所だろうか。
「なんで、って聞きたい事は一杯あんねんけど…とりあえずお届けモンや。」
歳が近い事もあって遠慮する仲でも無い。
青峰の目の前に腰を下ろして包みを差し出せば面白がるような瞳が今吉を見た。
「あんた、その中身見たか?」
「見る訳無いやろ、頼まれモンやのに」
ふうん、と聞いた癖に気の抜けた返事をしながら青峰が杯を差し出して来るのに今吉は慌てた。
「や、帰るから。まだ仕事あるやろし、そんなん飲んでる場合ちゃうねん」
知っとるやろ、と立ち上がろうとするが、それは青峰に手首を掴まれる事で阻まれた。
「あんた、何も聞いて無ェの?」
「何も、ってなんや、ワシはこれを此処に届けろとしか聞いてへんで」
「なんだ、教えてもらって無ェのか。面白ェ」
にい、と青峰の表情が笑みに歪む、と同時に強く手首を引かれて気が付いた時にはくるりと視界が回って畳を背に天井を見上げていた。
「え、何…ほんまに何なん…?」
「あんた案外鈍いな。此処でやることっつったら一つしか無ェだろ?」
頭上から覗き込む青峰が鼻歌でも歌いそうな程に上機嫌で言う、言葉の意味。
此処でやること、を思い浮かべようとした所で隣の部屋から一層激しい姐さんの嬌声が漏れ聞こえてカッと頭に血が上った。
「何アホな事抜かしとんねん、それなら女買えや、うちを何屋やと思ってんねんっ」
「好みなのが居ねェ。あんたのがいい」
「知るかそんなん…っちゅーか仕事があるって…」
「ああ、安心しろよ、あんたの仕事は俺と寝る事だから。話はつけてある」
「は……?」
青峰の下から抜け出したくて暴れても手慣れた様子で丸め込まれて逃げ出せない。
それどころか、気付けば両手は捕らえられて畳の上に抑えつけられ腰の上に座られては益々身動きが取れない。
「だから。俺が、あんたを買った。今夜一晩は俺のモンだ」
「んなアホな…第一、ワシはもう陰間はやらんって……」
「あ゛ぁ!?」
急に荒げられた青峰の声に思わず肩が跳ねた。
ひたりと今吉に据えられた眼がまるでこちらを殺そうとでもしているかのような強い光を帯びて、純粋な恐怖を感じる。
怠惰で適当なだけの人間だと思って居たが、間違いなく目の前の男は命を張った生き方をしていて、人を殴った事すら無い今吉とは違う生き物なのだと今更に理解する。
「なんだ、あんた、慣れてんのか。…じゃあ気ぃ使う事無ェよなあ?」
「ちゃう……いや、待ってや、一度戻って確認…」
「ごちゃごちゃうっせぇな、あんたは俺に売られたんだよ、大人しく足開いとけ」
あれ程まで上機嫌だった青峰を何がそこまで不機嫌にさせたのか分からない。
分からないのがまた怖い。
店に裏切られたような切なさや、どうにかして逃げたい気持ちはある。
あるのだが、諦めた方が楽で早い事を今吉は知っている。
「あんま…手荒な事はせんといて。めっちゃ久しぶりやねん」
深い溜息と共に身体の力を抜くと一度強い視線で見つめられた後、舌打ちと共に両手が解放された。
腰の上からも退いた青峰が、ずっと忘れられていた届け物をこちらへと無造作に放り投げるのを慌てて受け取る。
「開けてみろ。」
そう言ってそのままひっくり返った盃を拾い上げ、無事だった徳利から中身を注いでいる青峰に何かを問う事は躊躇われたので言われるがまま、丁寧に巻かれた布を解いて行く。
そう時間もかけずに現れたのは大きな蛤の貝。
朱に金の装飾が入った色鮮やかな絵が描かれたその貝は、小物入れとして女子供に渡せばたいそう喜ばれるだろう。
だが、今吉はこの中に入っている物を知っている。
見た目はただの軟膏だが、実際には漆が混ざっていると言う噂で塗られると酷い痛痒感を齎し、いつもは釣れない女郎が狂ったように客を求めると言ってこの遊びに興じる人々の中ではひっそりと人気のある品だ。
今吉もその耐え難い痒みと痛みを知っている。
思わず嫌悪感に顔を顰めてしまったの今吉をただ酒を煽りながら見ているだけだった青峰が鼻で笑う。
「なんだ、それも知ってんのか。だったら話は早ェ、それ使って慣らせよ。」
「…コレ使ったら自分かて大変な目に会うの、知らんのか?」
「俺は余り効か無ェみたいでな、心配する必要無ェよ」
幾ら今吉の中に塗るのだとしても、軟膏が塗られた其処へと挿入すれば青峰自身も軟膏の餌食になるのだが、帰って来た答えは取りつく島も無い。
人によって軟膏の効き目に違いがあるのは知っている。
今吉は恐らく一番ちょうど良い効き方をする方で、塗られた場所を掻いて欲しくてたまらないくらいに痒くはなるのだが、二日程も経てば痒みは収まり治ってしまう。
けれど人によっては、痒みを通り越して耐え難い痛みがいつまでも続き、一週間程のたうち回る事になるのを今吉は知っている。
店の女郎の一人がそうだった。
昼も夜も関係無く襲い来る痛痒感になりふり構わず半狂乱になって泣き喚いていた姿が脳裏に焼き付いて離れない。
その時初めて軟膏を使われた訳では無い、百戦錬磨の女郎だった。
何故突然、そんなに良く効いてしまったのかも分からず、治そうにも方法が無く、ただ見ているだけしか出来なかったのだが、いつもは気風の良い、しゃんとした姐さんがそんな風になっているのを恐ろしく思った物だ。
「ぼさっとしてんじゃねぇよ、とっとと準備しろよ」
貝の入れ物を持ったまま動けなかった今吉に焦れたのか青峰が不意に膝をついてぬっと近づき肩を押す。
たったそれだけで気圧されたように倒れる身体をなんとか肘をついて支えながら乱雑に乱されてゆく裾を見つめる。
其処にしか用が無いとばかりに帯も解かないまま褌をぐいと横にずらされて布地が擦られる痛みが走る。
「なあ、ホンマにするん?…ワシやなくても…陰間茶屋かてあるやん…」
「ぐだぐだうっせーよ」
手の中の軟膏をひったくられるようにして取られ、中身をたっぷりと掬い取った指が固く窄まった孔へと触れて無遠慮に中へと押し込められる。
軟膏の滑りを借りた指は痛みこそ齎さないがそのひやりとした冷たさと固く骨ばった指の熱さに身が竦んだ。
一度中へと軟膏を塗りつけた指はすぐに出て行き新しく薬をごっそりと掬い取ってまた孔へと差し込まれる。
「っちょ、待っ…そんな使うもんや無い…!」
慌てて肩を掴んでもびくともしない青峰はぐるりと中を掻き混ぜてから指を引き抜く。
入りきれずに溢れた薬がどろりと体温で溶けて畳みへと落ちる感触がなんとも言えず、触れた先からじわじわと軟膏の効力が発揮されて肌が熱を帯びて行くのに眉を寄せる。
「だったらさっさと自分でどうにかしろよ。勿体ねぇ」
肩を掴んだ手を外され、下肢へと導かれる。
とろとろと、心を置いて勝手に熱を纏い始めた下肢が軟膏を溶かして滑りを帯びて行く場所に触れさせられる。
徐々に疼くような痒みを齎す其処に一度触れてしまったらもう駄目だった。
撫でるだけでも小波のように快感が走りぬけて内腿が震える。
は、と浅くため息ともつかない息を吐き出して今吉は青峰の視線を受け止めながら孔へと指を差し込んだ。


ぐちぐちとすっかり液体のように蕩けた軟膏が絶えず卑猥な水音を立てて隣の部屋から聞こえる嬌声に混ざる。
開いて立てられた足は間に青峰が居座る為に閉じられず、差し込んだ指は何時の間にか二本、三本と増えて熱っぽく腫れた粘膜を撫でる事を止められない。
「っは、…ぁ……っふ、……くぅ…」
漏れる吐息が熱を帯びて色付く。
じくじくと痛みとも痒みとも付かない疼きが指先で擦り上げるだけでこんなにも気持ちいい。
ずらされただけの褌が、すっかりと立ち上がって固く反り返る性器の先から溢れた先走りでじっとりと重く濡れている。
三本の指を簡単に飲み込むようになってしまった其処は、自分の指では思うように擦れないもどかしさを生んで知らず腰が揺れる。
もっと強く、擦り上げて欲しい。
けれど、そんな事をされてしまえば妙な声を上げて隣の姐さんに気付かれてしまうのが怖い。
伏せた瞼をそっと持ち上げれば、先程の不機嫌さとも違う真っ直ぐな瞳が今吉を貫いていてぶるりと身が震えた。
ずっと黙って今吉を見ていただけの青峰の考えている事が分からない。
「随分、ヨさそうじゃねぇか。コレ。」
無造作に長い指を一本、既に今吉の指で一杯になっている所へと差し込まれて思わず甲高い声が上がってしまい、慌てて片手で唇を塞ぐ。
今吉の指ごと強引に掻き混ぜる指が痒さに震える粘膜を雑に擦り上げてとてもじゃないが声を抑えられる気がしない。
「声、隠すな。聞かせろ」
今吉の指共々引き抜かれるのと同時、口元へと宛がっていた手も纏めて捕らえられて頭上へと縫いとめられる。
片手での拘束を振り解けない程に力の抜けた身体はただひたすらに熱い。
撫でる物の居なくなった其処が次第に強く痒みを帯びて、咥え込む物を求めてひくつくのが自分でも分かった。
「嫌、や…声、聞かれた無い…ッ」
「別に俺しか居ねぇんだからいいだろ。隣だって、あんだけアンアン言ってんだ」
「…ッッあかん、…隣は、…ッ」
首を振ると汗を吸って重くなった髪が肌を、畳を叩く。
身を捩っても覆い被さるような青峰の身体が挟まって逃げ場所も無い。
隣の姐さんに今の今吉の状況を知られたと言って、何か明確にお咎めを受けたり非難を浴びる訳ではない。
けれど、女郎としてのプライド高い彼女達を差し置いて、男の自分が客を寝取るような真似をしているなぞと積極的に知られたい物でも無い。
相手が、女郎達の人気が高い青峰ならばなおさら。
「ああ、そういやぁ隣はアンタんトコの女か」
にい、と。
凶悪なまでに釣り上がった口角に背筋が粟立ったのは一瞬。
口を開けて震える其処に灼熱が触れた、と思った途端に一気に貫かれた。
「――ッッッぁああああっっ」
びりびりと爪先まで駆け抜ける快感に眼の前が白く染まる。
勢いよく吐き出される白濁が褌を濡らしてべったりと性器に絡み付く。
余韻に浸る間も無くがつがつとそのまま奥を何度も穿たれて全身を貫くような快感が終わらない。
「っや、ッあ、あああっ、止め、ッあ、ああっ」
「すっげ、中、熱っちぃ…」
隣には、とか。
本当はもうこんな事したくなかった、とか。
思考の全てが吹き飛んでただひたすらに気持ちいい。
心を置いてけぼりにして身体が勝手に快感を求めて青峰の腰に足を絡めてもっと深くもっと奥にと欲してしまう。
痒さを感じるよりも先に遠慮のない、長くて固くて熱い青峰の熱が粘膜を擦り上げてその度に全身に電流が走ったかのような快感が今吉を貫く。
「んな締めつけられたら、…持たねぇよ…ッ」
ぐ、っと眉間に皺を寄せた青峰の顎からぽたぽたと落ちる汗が今吉の上へと落ちる。
小さな舌打ちの後に今吉の拘束を解くと青峰は両手で腰を掴んで本格的に自分の快感を追い始めた。
揺さぶられるままに揺れる身体が縋る場所を求めて青峰の首にしがみ付く。
「ああっ、あ、…っあ…っぃあ…ッ――」
「――く、…ッ」
唇が開いた形のまま、壊れたように同じ音しか発せなくなった今吉の奥を一層強く突き上げて青峰が達する。
その刺激に耐えきれず今吉もまた、白濁に肌を濡らした。



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設定

【今吉さん】
元陰間。現女郎屋で下働き。
姐さん達に可愛がられながらのんびり雑用こなして日々生きてます。
サトリ成分は余り無い。物すごく空気が読めるだけ。
空気読むから案外流されやすい。
【青峰】
ごろつき。今でいうやーさん。
宿場町のある界隈を仕切っていて、ショバ代要求してくるけれど、一応何かあればちゃんと出てきてくれる。
普段はきっと博打打って酒飲んで、ショバ代請求しながら厄介事には首突っ込んで、ってしながら生きてる。
生粋の駄目男。



この後、女郎の姐さん方に知られてちょっと肩身狭い思いしたりとか
知られてるならいいだろって女郎屋の中であんあんにゃんにゃんさせられたりとか
昔の男、諏佐登場による昼メロドラマとか
今吉の過去を知る原監督に連れ戻されかける今吉さんとか
陰間時代の同僚?の花宮とのにゃんにゃん百合百合とか
何処に行ったら出会えるんです?

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木日おふぇら

じーちゃんとばーちゃんはまだ暫く帰って来る予定が無くて、木吉の家で日向と二人。
となれば若い二人がする事なんて限られている。
最初の頃はどちらが上になるかとか、挿入を果たすまでのすったもんだはあったけれど近頃では然程苦労せずに快感を得る事が出来るくらいには手慣れて来た。
かつては女役をする羽目になった所為か酷く緊張して恥じらっていた日向も、今や祖父母の帰りが暫く先だと知るや否や勝手に木吉の足の合間に陣取って木吉の息子さんを口いっぱいに頬張ってうっとりと舌を這わせる始末。
積極的な日向が嫌だと言う訳では無いが、恥じらいが全く無いのも少し寂しい。
「日向って、ふぇら好きだよな」
「んん?」
「すごく、美味そうに咥えるというか」
「ほふは?」
「うん、凄く、巧いし」
咥えたまま喋る、その空気の振動がなんとも言えず敏感になった場所にくすぐったい。
びくりと思わず身体が跳ねてしまった木吉に満足げに口角を釣り上げた日向は、ちゅ、と言う密やかな水音と共に漸く木吉から唇を離す。
「だって、コレ以外にお前が喜ぶモンって他にねーだろ?」
これ、と。
日向の唾液で濡れ光る先端にリップノイズを落とされるのは心臓がどきりと跳ねてしまってなんとも落ち着かない。
「どういう事だ?」
「お前、俺が気持ちよかった事をお前にもしてやろうとしてもすげー微妙な顔すんじゃねーか」
「え、…」
最初の頃、女役はなんとか土下座までして受け入れてもらったのだが。
女役を引き受けた日向はそれでも木吉に触りたがった。
それも、ただ縋りついたり温もりを求めたりするのとは違う、明らかに性的に煽ろうとする手付きで。
嫌だ、と思う訳では無い。
けれど動き回る指先が鬱陶しいと思うくらいには苦手で。
顔に出したつもりは無いのだが日向にはあっさりとお見通しだったらしい。
「バレてねーとでも思ったか。お前が嫌がらない事だけをやろうとすると…しゃぶってやる事しか残って無かったんだよ」
「そうかなぁ」
「そうかなぁもなにもねーだろ。突っ込まれるのは嫌、触られるのも余り好きじゃないっぽい、上に乗っかられるのも嫌、ってどんだけ我儘なんだよ」
「ははは」
木吉は最中に日向からアクションを起こされる事を好まない。
図星を指されてしまっては笑うしか無い。
「俺だって男なんだよ、てめーを善がらせてぇって思う気持ちはあるんだからな」
「うん」
「けど、お前は隠してるつもりかもしれねーけど、お前が嫌がってるのもなんとなくわかるんだよ」
「…うん」
「そしたら、後はお前が好きっぽいフェラの技術磨くしかねーじゃねぇか」
確かに日向に舐めてもらうのは好きだ。
あの、日向が。
木吉の前に傅き懸命にペニスを舐めしゃぶる姿なんて興奮しないわけが無い。
すっかり羞恥心が無くなり、むしろ嬉々として咥える姿は少し残念と言えば残念なのだが、それでも学校では健全な男子高校生を演じる日向が木吉の前でだけ男のペニスをしゃぶって喜んでいるなんてぞくぞくと違う何かが背筋を駆け抜けて行く。
「――……日向ぁ…!!!」
「うっぜぇ!!!ぶち犯されたくなかったら黙ってしゃぶられてろ!!!!」

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火日が従弟 4

IHの敗退、膝の故障、木吉鉄平と言う男の復帰。
それから二回も行われた合宿。
思えば夏休み前から今まで、なんだかんだと色んな事があった、と思う。
中でも木吉の復帰は大きい。
すっとボケた言動に、復帰した当日だと言うのに火神にスタメンを賭けた1on1を持ち掛けるような唐突さには驚いたが、それよりも驚いたのはそんな木吉の全てを二年生は全員受け入れている所だ。
普段ならばそんな勝手な事を言い出せるような雰囲気でも無いカントクが、日向が、溜息一つで木吉の言動の行く先を見守り、許容した。
それは火神の中に違和感にも満たないような小さな不快感を胸の奥に生みだした。



「つまり、木吉先輩が嫌いって事ですか?」
お馴染みのマジバで取り留めも無い話の中でぽろぽろと零れた火神の言葉の真意が分からずに黒子は首を傾げる。
今までただ思い付くままに言葉を並べていただけなのだろう、火神は一度黙って考えた後、黒子と同じ方向に首を傾けた。
「嫌いって訳じゃねーけど…」
ねーけど、なんだ。
唇を尖らせて言い淀む火神を眺めながらバニラシェイクを啜ってのんびりと続きを待つ。
火神はまだ何を訴えたいのか、何を求めているのか自分でもわかって居ない状況だ。
こんな時は変に急かさず、火神なりの言葉になるまで待った方が良い。
「すげぇ先輩、って思うけど…嫌いとかじゃなくて…好きになれない?」
言いながらまだ首を捻って唸る様子からしてうまい言い回しが思い着かないのだろう。
それにしても好きになれないとは。
「木吉先輩が帰ってきた日、勝手に1on1やったりしたらいつもだったらカントクとか主将に怒られたりとか、後で罰としてメニュー増えるとかあんのにあの時だけは何も無かったなって」
「言われてみれば確かにそうですね」
「その後の練習試合だって、木吉先輩が言ったから一年だけで試合することになっただろ?」
つまり、火神にとっては後からやって来た癖にカントクや主将と同じくらいの発言権があることが気に食わないとでも言うのだろうか。
日本の縦社会すら疎ましいと思っているような火神がそんなことで好きになれないなんて余り思えないのだが。
未だ先の見えない話の流れに、黒子は曖昧に頷いた。
「けど、それは主将もカントクも納得の行く理由があったからじゃないですか?木吉先輩だからと言う訳ではなく」
「つっても、なんか甘く無ぇ?主将もカントクも、木吉先輩の言う事はなんでも聞いてる気がする」
「甘い…と言うよりは単純に二人が反対しない事しか言って無いんだと思いますが…」
端から見ていても二年生の、もとい日向と監督の信頼が厚い木吉だ。
その信頼があるからこその発言と許容だと思うのだが火神にそこまで察しろと言うのは難しい話なのだろうか。
しかし察しが良いとは言えずとも何かと勘が良く、どちらかといえばはっきりと物を言う火神が木吉を嫌うのではなく、好きになれないなどと歯に物の挟まったような事を言う違和感。
これは木吉と火神の間で何かあったのだろうかと少し不穏な予測がちらつき始める。
「…とりあえず、木吉先輩にだけ甘くね?って話は置いとくにしてもよ…、あの人、やたらとべたべたくっつくっつーか…」
先程より言い淀み視線をさ迷わせる火神と、その言葉の内容。
うっかりと導き出してしまった一つの予測を口にするかどうか迷い、躊躇い、火神を見上げると先を促すような視線とかち合ったのでおずおずと口を開く。
「…木吉先輩に迫られでもしましたか…?」
「はっ!?いや、どこをどうしたらそんな話になるんだよ!?」
良かった。
心の底から良かった。
何処か底が見えなくて、まだ少しだけ警戒心を抱いてしまうような先輩に、更に肉食系ホモなんて属性がついてしまったらちょっと明日から目を合わせ難い。
「違うならいいんです。…確かに木吉先輩はスキンシップが多い方だとは思いますが…どちらかと言えば火神君よりも主将が被害に遭っているような」
「どちらかも何も一番べたべたされてるだろ。しかも俺がやると怒るのに木吉先輩だと好きにさせてるし」
「はあ……」
「合宿の時だって気付いたら二人で話込んでるし。部屋も一緒だし。俺が合宿中に練習中以外に主将と喋ったのなんて風呂の時くらいなのに」
だんだんと愚痴のようになってきた言葉を聞きながら黒子は首を傾げる。
合宿中は一年生と二年生で部屋を分けたから当然木吉と日向以外にも二年生が居たのだがそこはどうでも良いのか、とか。
そもそもいくら学年わけ隔て無く仲が良いと言っても、練習から離れれば同学年同士で固まるのは仕方が無いだろう、とか。
諭してやりたい所は多々あるのだが、そのどれもが本題からずれているような気がする。
むしろ火神が一番引っ掛かっているというのは、
「主将と仲が良いのが嫌なんですか…?」
「え、……――そうなのか?」
言われた本人が初めて知ったと言わんばかりの顔でまじまじと黒子を見て、それから眉を寄せて考えた後、うん、と一つ頷いた。
「…なんか、そんな気がしてきた…」
「……どれだけ主将が好きなんですか…」
思わずテーブルに突っ伏しそうになった額を手で押さえてなんとか留める。
ホモは木吉先輩の方では無く火神だったのか、と訳も無く遠くを見たくなった。
「いや、だって、学校では散々木吉は苦手だとか嫌だとか言ってる癖に俺にはあいつの手がすげぇとか、あいつが居るだけで安心感が違うだとか、本人に言えよって事ばっか俺に言って来るんだぜ?」
「……はぁ、…」
「それに家では順くんからハグしたり俺の事を座椅子代わりにしてる癖に学校で触ろうとすると怒るんだぞ、木吉先輩も同じ事してんのに!」
貴重な主将のデレだとか、知られざるスキンシップ好きな一面だとか、だんだんとヒートアップしてきた火神の暴露は少なからず黒子に衝撃を与えたがもう今更一々突っ込んでなぞ居られない。
今すべきは問題の解決だ。
そしてこの子供のような愚痴から早く逃れたい。
「とりあえず一つだけ確認したいのですが…火神くんと主将は恋人同士とかじゃないんですよね?」
「違ぇーよ。ただの従兄弟だって」
「それじゃあ、木吉先輩と主将が恋人同士という可能性は…?」
「――……え……?」
「もしも、木吉先輩と主将がお付き合いしているのなら、火神くんがどれだけ嫉妬していようと口を挟める事では無いんじゃないかと思いまして」
火神は分かりやすく固まったまま。
このまま火神が思考を停止させている間に畳みかけてしまおうと黒子は身を乗り出した。
「ですから、確認してみたらいかがでしょう。主将に直接聞いてみるのは」
「木吉先輩と付き合ってるか、…って…?」
「それで付き合っているというのなら火神くんは諦める他ありませんし、そうじゃないというのなら改めて火神くんがどうすれば木吉先輩と仲良くなれるか考えてみてはどうでしょう?」
要は、全て日向に押し付けたいだけなのだが。
木吉と日向が付き合っているとは到底思えないのだが、「付き合っているのか」などと聞かれれば必ずなぜそんな事を聞くに至ったのかを問い質してくれるだろう、日向ならば。
そうすれば後は全て、日向との話し合いでもお説教でも何でもいいから火神の日向離れを促してくれればいい。
善は急げです、等と少しばかり間違った言葉を使いながら火神を促して立ち上がる。
まだ余り頭が回っていない様子の火神は考えるようなそぶりを見せながらもなんだかんだ、黒子の言うがままに帰宅する気になったようだ。
会計を済ませ、火神と別れてから黒子は一人溜息を吐きだす。
人間観察が趣味の人間として、こういった人同士の感情の縺れというのは非常に興味がある所だが、そこに自分を巻き込まないで欲しい。
黒子が欲しいのは結果や経過だけであって、お悩み相談までしてやれる程の経験なぞない。
今日は巧く日向にパスしてしまったが、これが巧く行けば日向にきっと「変な事を言い出すな」と怒られ、巧くいかなければまた火神からの相談を受ける羽目になるのだろう。
さて、どうなることやらと、幾らか重い気持ちを引き摺って黒子は家へと向かう道のりを歩きだした。

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ゼノサ×黒バス

【666と669】
火神大我は、人には言えない記憶を持っている。
それは恥ずかしかった思い出や後悔している失敗等では無い、火神大我では無い一人の少年の生涯の記憶だ。
その記憶に気付いたのは中学三年の頃からで、最初は夢の中で記憶を見ているだけだった。
途切れ途切れに夢見る記憶は現実からかけ離れた物ばかりで、最初は我ながら妄想力逞しいと思ったものだ。
数kmを超える宇宙戦艦だとか、歳を取らない身体だとか、ガンダムのような巨大な人型ロボットだとか、普通、現実の記憶だとは思わないだろう。
それが自分の記憶なのだと思ったきっかけがある訳ではない。
ただ不意に、これはかつての自分の記憶なのだと理解したのだ。
穏やかな思い出も、胸を割くような後悔も、夢の中の登場人物に同調して感じている訳ではない、自分だけの想いなのだと自覚したのだ。
それからは夢の中に限らず、ふとした瞬間に思い出したり、思い出した覚えが無いのに覚えていたりと「もう一人の記憶」はすっかり火神の中に定着している。
自分のこれまでの生涯と同じで、全てを覚えている訳では無いが心に残る思いでだけは幼少時から死ぬ間際まで全て覚えていると断言出来る。


だが覚えている、と言ってもそれが日常にどう生かされる訳でも無い。
記憶の中の少年は宇宙船で色んな星やコロニーを飛びまわり、人型ロボットに乗って闘って居たりしていたが、今この世界でそんな日常が存在するのはアニメやゲームの世界だけだ。
そもそも、明らかに記憶の中の世界の方が未来の世界で、火神が居る世界の方が過去だ。
そんな記憶を誰かに話してもドン引きされるのが関の山だろう。
何故こんな記憶を持つ事になったのか、その意味を探る事に興味が無い訳でもないが今までオカルトに全く興味が無かった一介の高校生には手に余る事象だ。
普段は余り記憶について考える事も無く、ふと思い出したとしてもあの時代ならば今と違って…、とちょっとした比較をして懐かしむ程度の物だったのだが。


ある日、部活が終わった後。
普段ならば空腹に耐えきれず急いで着替えて帰る所なのだが、その日は何故かとても眠かった。
食い気に勝る眠気は余り経験した事も無く、それならば10分くらい仮眠して行ってもいいか、とベンチに横になる。
まだ体育館で自主錬している人間が居る筈で、うっかり寝過ごしてもきっと彼らなら起こしてくれるだろう、そんな気楽なつもりで。


眠った、という感覚は無かった。
だがふと瞼を持ち上げると蛍光灯が眩しく輝き、眼を閉じる前までは明るかった窓の外がすっかりと暗くなっていた。
思いのほか寝ていた事実に驚きながらもふと傍らへと目を向ければ黒髪の青年の背中が一つ。
きっと主将なのだろう、机に向かって書きものをしている姿はまだこちらに気付く様子は無い。
ぼんやりとその背中を眺めながら、そういえば記憶の中でよくこんな光景を見たな、と思い出した。


少年の姿のまま成長を止めてしまった自分とは違い、すくすくと育ちやがった弟は一端の実業家としていつもモニターと睨めっこしていた。
外で好き勝手に暴れまわっていれば良い自分とは違い、大人のお付き合いやら腹の探り合いやら数字との戦いやら、何かと時間に追われる生活をしている弟に申し訳ない気持ちが無い訳ではないが、こればっかりは見た目の問題という物で仕方が無い。
立派な成人男性として成長した弟ならともかく、十代の半ばにも満たない年齢のまま成長を止めてしまった自分が交渉の場に赴いた所で鼻で笑われるのがオチだ。
外見がそうだからといって、流石にもう弟とべたべた一緒に居ないと寂しいなんて歳でも無いが、まさかひと眠りしてもまだ終わらないくらいに夢中になっているとは思わなかった。
逆に、寝ているから幸いと切り上げる筈だった仕事を続けているのかもしれないが。
『ガイナン、いい加減に仕事から離れないとお兄ちゃん泣くぞ』
心の中で思う、よりは強く。
自分達兄弟だけが繋がる心の声を振り向かない背中へと投げつける。
きっと言った所でこの弟は平然とこっちを見ないまま返事を返して来るのだろうけれど――
「――えっ?」
ば、と振り向いたのは記憶の中の弟なんかでは無く。
逆光になって影になっていても尚驚きに見開かれた目が眼鏡の奥で火神を凝視する。
その余りの視線の強さに火神の眠気も吹っ飛んで、なんとなく身を起して居住まいを正す。
「えっ、…って……」
もしかして口に出して言ってただろうか。
寝惚けて居たにしてもあの台詞は、ちょっと、聞かれたら恥ずかしい。
一人であわあわし始めた火神を余所に、少し眉を寄せて考え込んだ日向は火神から視線を外さないままで。
『お前、アルベド…じゃあ、無いよな。ルベド、か?』
耳では無く、脳内に直接語りかけられる声に今度は火神が驚きに目を見開いた。
ルベドは間違いなく記憶の中の自分の名前で、アルベドはもう一人の弟の名だ。
『……え、いや、だって、え?主将が、え?何で…?』
『おい、心の声ダダ漏れだぞ。パニクりたいのはこっちだ、何で小さかった兄がでかい年下になってるんだ』
『そんな事知らねぇよ、…です、いや、え、ガイナンなのか…です?』
耐えきれなくなったのか、ぶは、と日向が噴き出す。
「お前、動揺し過ぎだろ…っつーか、バ火神がルベドって…!!!」
ツボに入ってしまったのか腹を抱えて声も出ない程に笑えて震える日向に火神はどうしていいのか分からない。
馬鹿にされているのはわかる、わかるのだが何とも反論出来ない辺りが悔しい。
記憶の中の自分…ルベドは見た目は少年ながらも博識で、蘊蓄を垂れ流したり難しい語録をふんだんに使ったポエミーな台詞回しの多い少年だった。
英語も日本語も危うくボキャブラリーの貧困な火神とは正反対とも言える。
「それを言うなら主将こそ、ガイナンって…!!」
幼少期から青年になるまで、通じてガイナンは「穏やかで優しい優等生」タイプだった。
間違ってもクラッチタイムに入って暴言吐いたり髪を金髪に染めてテッペン目指したりしないような。
「…はは、まあ、ガイナンだった記憶がある、ってだけで俺は俺でしか無いからなあ」
まだ笑いの余韻を引きずりながらもそう言う日向の眼差しは優しい。
まるで、ルベドの他愛も無い無茶に、仕方ない兄だな、と笑って見守るガイナンのような。
急に膨れ上がった感情が火神自身の物なのか、それとも記憶の中のルベドの物なのか分からない。
わからないけれど、感情が突き動かすままに日向を抱きしめた。
記憶の中とは違いすっぽりと腕の中に収まる日向の身体は違和感があるのに懐かしい。
「ばかやろう……」
眼頭がかっと熱くなって声が震えた。
もう失った物だと思っていた。
取り返せない物だと思っていた。
死ぬ間際まで後悔した別れだった。
それが今、腕の中にある。
ばかやろう、もう一度だけ呟いて抱きしめる火神の背を、日向はただ優しく撫でてくれた。



【666と668と669】
「はああ!?火神くんがルベドぉ!?」
キン、と耳をつんざくカントクの素っ頓狂な声など余り聞く物では無い。
思わず身を竦めながら随分下の方にあるカントクを恐る恐る窺い見る。
「なんかわかるようなわからないような…でも確かに馬鹿な所はそっくりね」
うんうんと一人で納得するのは良いが、やっぱり馬鹿は付きまとうのか。
なんだか遣る瀬無くなってきてがくりと肩を落とすと日向がぽんと肩を叩いた。
「まあ、なんだ。頑張れ。」
応援の言葉はありがたいが、完全に関わらない気でいる日向はきっとかつてのルベドとシトリンの仲の悪さを思い出しているのだろう、綺麗な笑顔で遠い目をしている。
確かに、シトリンを殺したのは火神…もとい、ルベドだが。
あの時とは状況も世界も違う、それに記憶を持っているとはいえ火神は火神でしか無い。
そう理解していても、自分が殺した相手の記憶を持つ人を前にするとどうも居心地が悪い。
そもそも元から犬猿の仲と言うか、馬が合わないというか、とにかく相性が悪いのだ、この妹とは。
「安心して頂戴、別に記憶の中の出来事を恨んだりはしてないから。私は私だもの」
カントクも考えは同じらしい、それは良かったと思う。
だが「火神くんがルベドかあ~、うふふふふ~」と怪しげな笑みを浮かべるカントクは安心したくてもしきれない。
不穏な未来に火神は思わず日向と同じ遠い空を見つめた。



【666と669と混沌】
記憶の話で花を咲かせる、には少しばかりこの記憶は辛い物が多い。
けれど、その辛い記憶の渦中の二人が今、此処に存在する。
それが嬉しくて以前よりも三人が共に過ごす事が多くなったと思う。
今日も黒子は早々に帰ってしまい普段ならば一人で向かう事が多かったマジバへと日向と共に歩いていたのだが。
「ぐのー…しす…???」
「…やっぱりお前もそう思うか?」
平和な日本の一般道にふよふよと半透明の身体で浮かぶ異常な生き物は記憶の中で対峙していた敵そのもので。
思わず足を止めて凝視していた二人に気付いたソレは一瞬の間をおいた後、勢いよく襲いかかってきたので思わず二人で揃って背中を向けて走り出した。
「何でグノーシス!?っつーか本当にグノーシスなのかあれ!?闘えっつーのか!?」
「いやでもあの状態は触れ無ェっすよ!?ヒルベルトエフェクトも無いのにどうやって!?」
「そもそも武器も無ェ一般人だっつーの今は!!第一お前はしょっちゅう闘ってたかもしれねぇけど俺は記憶の中でも実戦なんて大人になってから殆どしてねぇよ!!」
「だからって俺にどうにか出来る訳無ェだろです!!ケイオスが居るならともかく!!」
運動部員の全速力で走って漸くぎりぎり追いつかれないレベルの速さで迫る敵から逃げ続ける事しか出来ない二人は、何か手を探さなければきっといずれは捕まってしまうだろう。
何か策は、と叫ぶようにして議論した所で何一つ浮かぶ筈も無い。
そもそもテクノロジーが違うのだ。
巨大な宇宙戦艦も、有機物から無機物まで何十光年と離れた場所でも簡単に移動出来るU.M.Nも、人と殆ど変らない肉体を持ちながら「モノ」として扱われるレアリエンも居ない。
「火神、レッドドラゴン!!レッドドラゴンモード!!!!」
「今なった所でグノーシスに触れなきゃ意味無ェっつーかそもそも使えるのかどうかもわからねぇっすよ!!」
「ああああ百式でもKOS-MOSでもA.M.W.Sでも何でもいいから誰か転送しろおおおおお」
「主将、眼からビームでばしゅんってなんとか出来ねぇんすか!!」
「いやだから触れ無けりゃ意味無ェだろ!!!」
パニック、とはこういう事を言うのだろうか。
いい加減堂々巡りの会話は気付いているのだが、いかんせん、培った経験が全く使えない状況下での逼迫した状況というのは、百戦錬磨だった「記憶」の当時ならともかく、一介の男子高校生には恐怖でしか無い。
一応は他に被害が出ないように人気の無い道だけを選び、今の所誰も遭遇していないのが幸いだがそろそろ体力が持たない。
肺が破れそうに痛くなっている。
重たくなった足がいつ縺れるとも分からない。
「ルベド役に立たねぇええええええ何でお前ケイオスじゃねぇんだよおおおおおお!!」
「あんたこそガイナンなんかじゃなくて何でケイオスじゃねぇえんだよおおおおおおお!!!」
そろそろ何を叫んでいるのかお互い良く分からなくなってきた頃。
ばすん、と、不意に背後で音がした。
何事かと思って二人揃って振り返ってみると、何故かイグナイトをかます時の腕の形をした黒子が一人立っていて、今まで背後に迫っていたグノーシスは、多分グノーシスだった物がさらさらと細かい白い粒子となって風に流されている。
ぽかんと。
ただ本当にぽかんと口を開けた日向と火神に見つめられて黒子はいつもと同じく「どうも」と言って無表情に小さく頭を下げた。
「ええと、なんかお呼びだったようなので……」
「「っはあああああああああああああああ!!!????」」
まさかこの影の薄い仲間が宇宙を崩壊に導く切欠の存在だったと誰が思っただろうか。
思わずがくりと揃って膝をついて地面に突っ伏した日向と火神を見て、「相変わらず仲の良い兄弟ですね」なんてのたまった黒子に突っ込みを入れる気力はもう、無い。



------



グノーシスの出現、黒子がケイオスの記憶を所持し、尚且つ同じ能力を保持している事実。
このまま「じゃあまた明日」なんてさらっと別れるなんて事も出来ず、結局三人でマジバへと流れ着いた。
そもそも、火神と日向は元々マジバに行くつもりだったのだ。
思わぬ出来事で随分と遠くへと走ってしまったが。
「それにしても主将がニグレドだったのはともかく…火神君がルベドなのは意外ですね」
ずず、とシェイクを啜りながらしみじみと日向と火神を見比べる黒子に、火神は思わず首を傾げた。
「意外?カントクにも主将にも、似てるって言われたぜ?」
「カントクが言ってた似てる所は「馬鹿な所」だけどな」
「馬鹿な所…っぷ…あ、いえ、すみません…」
主将の茶々入れに噴き出した黒子は笑っているのを隠そうとしているのか、見せつけているのかわからなくてなんだかムカつく。
いっぺん殴ってやりたいがテーブルの向いに座っている相手を殴るのはなかなか面倒なので仕方なく睨むだけに留める。
「火神が馬鹿なのは仕方ないとして…しかし黒子がケイオスとはな。」
「僕からしたらこんな間近にニグレドとルベドが居る方が驚きです。」
「ああ、そういえばシトリン…No.668も居るぜ、というかカントクなんだが」
「そうだったんですか、それは何と言うか…凄く、納得してしまいました。」
ほのぼのとした会話が繰り広げられるのをどうにも釈然としない気持ちでハンバーガーを咀嚼する。
まだ暖かさを残すハンバーガーはアメリカの物に比べたらサイズが小さくて三度も齧りつけば無くなってしまうような物だが味は悪くない。
「けれど、それならアルベドは?やはり誠凛に居るんですか?」
黒子の言葉に思わず一瞬固まり、主将と窺うように視線を合わせてから緩く首を振った。
「いや、まだ…見つけて無い」
「そうですか……」
アルベドは火神にとって魂を分けた片割れだが、同時にニグレド以上に複雑な感情を抱えたままの相手だ。
火神がルベドだった時ならば、過ぎた事、過去として処理し、時間と共に割り切る事が出来たが今のこの世界に、ニグレドと同じように生まれて来ているというのなら。
正直、火神はどんな顔をして会えば良いのかわからない。
そもそも、ニグレドとてたまたま、考えるよりも先に知ってしまったからこうしていられるものの、自分から探してみようなんて気は起きなかっただろう。
「けれど、ルベド、ニグレド、シトリンが揃っているのでしょう?アルベドもすぐ近くに居るような気がしてならないのですが」
「それはちょっと思ったが……俺はアルベドに嫌われているからな」
はは。と。
爽やかな笑顔で主将が傍観者の立場に逃げるのを横目で睨む。
実際、アルベドはルベドの中に入るまで散々「お前らが大っ嫌いだ」と公言して憚らなかったが。
行動はそんなでも無かったと思う。
というより素直になれなかっただけなのだと思う。
そんな事、主将だって分かってる筈なのに。
「やっぱり此処は、お前が呼び掛けてやるのがいいんじゃねぇの?」
「そうですよ、君たちはお互いに鼓動を感じる程に近しい存在だったのでしょう?」
二人とも他人事だからって親切そうな顔で言うが、火神にはなんとも頷き難い。
会いたい、とは思うのだが、会うのが怖いとも同時に思う。
それはあの時、アルベドの手を離してしまった所為で汚染された事や、一人だけ生という檻に閉じ込められた恐怖を分かってやれなかった後悔、他にも諸々の負い目がある所為だ。
日向や監督のように、記憶の中と今の自分は違うから気にしていないと言ってくれるのなら良い。
だがもしも、記憶の中の出来ごとを恨んでいると言われたら。
償わなくてはいけないのだとは思うが、まだ火神にその覚悟は出来て居ない。
「それとも俺が話しかけてみるか?アルベドと念話なんて、大人になってからは一回しかしたこと無いが」
「え、した事あるのかよ?…っつーか主将がやってくれるならそれでいいじゃねぇか、俺じゃなくても」
「ただし、俺、その一回の念話で多分、アルベドの身体の何処かふっ飛ばしてるんだよなー、意見の相違があったもんで」
はは、と相変わらず爽やか過ぎて胡散臭い笑顔の主将の飛んでも無い発言に思わず咽る。
ニグレドが吹っ飛ばす、と言ったら眼からばしゅんとビームみたいなのが出て身体が吹っ飛ぶ技?の事なのだろうが。
今の時代でも出来るのか出来ないのかは定かではないがもしも出来たとして、アルベドが前と同じようにつんけんしていて、しかもアルベドの再生能力が無かったら…ただの殺人事件にしかならない。
「……俺が話しかけてみる…です…」
まだこの歳で主将に、引いてはかつての大切な弟に殺人を犯させる訳にはいかない。
未だ腹は決まっていないが主将に任せてもいられない、火神はぐっと拳を握りしめて瞼を伏せた。
『アルベド…――アルベド、居るか……?』
眼の前に居る相手だけでは無い、全世界へと発信するつもりで強くアルベドを呼び掛ける。
きっとこの場に居る主将も、今頃自宅に居るのだろうカントクもこの声が聞こえている筈だ。
もしも標準体で今の世界に生まれ変わった奴がいるのならそいつにも聞こえるかもしれない。
少しでも広い範囲に、少しでもはっきりと伝わるように。
『やあ、俺がアルベドだけど…君は誰だい?この懐かしい感じはルベドかニグレドかな?』
反応は思ったよりもあっさりと帰ってきた。
思わずびくりと肩を跳ねさせた火神を主将と黒子が心配そうな顔で見ているので、とりあえず大丈夫と小さく一つ頷いて見せた。
『俺だ、ルベドだ。……お前、』
『WOW!!ルベドか!!久々だね、元気にしてたかい?またこうして話が出来て嬉しいよ』
話を遮るようにして興奮気味のアルベドの声が重なり、火神は一瞬、ん?と首を傾げる。
なんだか何処かで聞いたことがある気がする声。
WOW、なんて普通、日本人は使わない。
アルベドの何処か陰鬱さを感じるハイテンションとは違う、アメリカ人のようなノリ。
「……アメリカ人?」
「どうした火神、アルベドがアメリカ人だったのか?」
「いや、日本語も喋ってるんだけど……」
「日本語が喋れるアメリカ人って事ですか…?」
そういえば元々黒子は念話が聞こえないし、火神からの最初の発信は全てのURTVに聞こえるように発信したがそれ以降はアルベドにしか聞こえないようにしていたから二人は火神の反応でしか様子が窺えないのだろう。
そわそわと落ち着き無く身を乗り出している二人を宥めながらまず何から、どう聞くべきなのかと頭を巡らせ…
『っっお前、もしかしてタツヤか!!!?』
『あれ、そうだけど……もしかしてその声にその呼び方って、タイガか…?』
何処か聞き覚えのある声だと思ってはいたのだが、間違って居なかった。
本当に、URTVの変異体は皆すぐ傍に居たらしい。
喜んでいいのか氷室がアルベドという何処か恐怖を感じる組み合わせに怯えればよいのか、火神にはもうわからない。
『なんだ、タイガがルベドだったのか。…という事は、昔と逆で俺が兄貴だね』
ふふ、と。
その笑みの声がむしろ火神には恐ろしい。
というよりなぜ長男だったハズの自分が今では末っ子になってしまっているのか。
しかも弟や妹は皆、火神の頭が上がらない相手ばかりだ。
火神はわけもなく思った。
どうしよう、と。


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今更プレイする方はいらっしゃらないと思いますが
ゼノサーガの重大なネタばれを含みます。
ご注意ください。


【U.R.T.V No.666】こと【ルベド】こと【ガイナン・クーカイJr.】=火神
URTV内の変異体の中で一番番号が若い長男。
とある強過ぎる力を持っている為、それの暴走を防ぐ為に無意識に身体の成長を止めている(=成長を止める能力がある)
見た目は13歳程度。中身は26歳。
URTVのリーダーとして、長男として、頑張ろうとしたけれど結果としてURTVはルベド以外皆お亡くなりになりました。
669もといガイナンと戸籍上は義理の親子。
二人で「クーカイファウンデーション」という組織を持ち、コロニーや巨大な宇宙戦艦、ガンダムみたいな人型兵器を持っている


【U.R.T.V No.669】こと【ニグレド】こと【ガイナン】=日向
変異体の中で、というよりURTVラストナンバー。末っ子。
肉声で人を操れる能力を持ってる。あと、ルベド等、力が暴走したURTVを始末する処刑人という役目を持っている。
クーカイファウンデーションで実業家をやっていた物の、お父さんに身体乗っ取られて散々悪事働かれて、最終的にルベドとアルベドを救う為にと自殺のようなお亡くなり方をした。
URTVとしての能力なのか、それともニグレドの特殊能力の一つなのか、眼からビームを出してアルベドの腕をふっ飛ばした事がある。


【U.R.T.V No.668】こと【シトリン】=リコ
ニグレドと同程度の能力を持ち、処刑人の役割を持っているのも一緒。
ただし、ニグレドとルベドはお父さんの手から離れて生きようとしていたのに対し、シトリンはお父様一筋お父様の為にな生き方をした。
結果、お父さんの悪事を止めようとしたルベドと対峙し、死亡。


【U.R.T.V No.667】こと【アルベド】=氷室
成長するけれど死なない身体を持つ個体。頭を拳銃で吹っ飛ばそうと内臓抉ろうと腕がもげようと瞬時に治っちゃう。
一人だけ死ねない為に酷く不安定な精神だった上にU-DOという変な物に汚染されてアヒャる。
色々紆余曲折あった後(ゲーム二作目のシナリオはただのルベドとアルベドの兄弟喧嘩でした…)、お父さんに身体を乗っ取られたニグレドを助けようとやってきたものの、結局ニグレドに助けられる形でルベドの中に入る。


【ケイオス】=黒子
宇宙の崩壊の大元だか切欠だか、とりあえず彼が存在するから宇宙は崩壊するらしい。
その元凶の「力」の殆どは封印されているらしいのだが、何故か彼はグノーシスに触れるだけで消滅させられる。
ヒルベルトエフェクト無くても消滅させられる。
なのに彼がパーティメンバーに居てもグノーシスと通常の戦闘を行わなければいけないのか。
ゲーム中、最も「設定」と「現実」の差にいらっとさせられるお方である。


【U.R.T.V】とは
U-DOというよくわからないけれどすげー怖い存在?の反存在。対抗する為の兵器のような物。
669体も生みだされているけれど、そのうち665体は皆黄色い頭で個人という意識が薄く、常にぼやーっとしてる人形のような物。
666番目以降(ルベド以降、変異体と呼ばれる)の四人だけ、髪の色も違い、個性がはっきりとある。
特殊な能力もそれぞれ有り、力も大分強いらしい。
666ルベドと667アルベドは生後2週間?くらいまで背中がくっついていた癒着性双生児であり、本来は一つの身体に収まるべきと作中では考えられている節がある。


【グノーシス】とは
なんか敵。
ヒルベルトエフェクトという特殊な力場が無いとこちらからは触れない攻撃出来ない、なのにグノーシスから触られると人間は塩になって死んでしまうという恐怖の存在。
ヒルベルトエフェクト自体、本来は発生させられる人(?)が限られているので、結構怖い存在。


【KOS-MOS】
別名モッコス様。邪神。戦闘用アンドロイド。
ゲーム中では可愛いよ!!(ゲーム二作目を除く)


【A.M.W.S】
ガンダムみたいな人型兵器。
勿論人が乗って操縦するよ!!



補足:
本来、ゼノサーガの世界は今から1000年後くらい?の世界だったハズですがそれは並行世界って事で。
ツァラストラが本来の通りに稼働してやり直された世界で転生したURTVって事で。

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